part2
前回の続きになります。はい
次の授業はグラウンドということだったので、グラウンドに出ようとおもい、制服に着替えて教室を出た。出たはいいんだが、なにせ俺はこの学校が初めてだ。だから、当然迷った。しかもこの学校は見たところ、ものすごく広い。グラウンドなど簡単に見つかると思っていたが失敗した。
「誰かいないかなー」
「いるよ?」
「うわっ!?」
俺ってビビリ症?
振り返ってみたのは、この学園では数少ない男だった。
「白門くん。そんなに驚くことはないと思うよ?」
「……男だ………」
「男だよ?」
「俺にこの学園……てか、まずグラウンドに案内してくれませんか」
全力でお辞儀する。なんせ、この学園で数少ない男だから。
ここで男に嫌われるということは、孤立するということだ。間違っても、ハーレムになんかなりたくはない。
だから理由をつけてお近づきになろうという作戦だ!
「いいよ。 ついてきなよ」
「ありがとうございます!」
舞い上がりそうなくらい嬉しかったぞ。間違ってもホモだとは思うなよ?
離されないようについていく。
やがて昇降口あたりに来た。
「ありがとうございました」
「いいよ」
なんか、すっごく優しい人だな。いたのが不良みたいな人じゃなくてよかった。
「じゃあね」
「ほんと、ありがとうございました」
駆け足で戻っていく。
「そうか、この人にも授業があったのに……」
なんか、恵まれてるな。うん。
「とにかく急ごう」
白門も駆けていった。
グラウンドについたがみんなはまだ集まっていなかった。
「……」
さっきから、視線をものすごく大量に感じるんだが。
……振り向く……
「……」
それで隠れてるつもりなのか? と聞きたくなるほど隠れるのが下手だった。
「ちょっと、バレちゃうじゃない」「もうちょっと、そっち行ってよ」「こっちも無理だよ」
なんだかコソコソ話しているが、全く聞こえない。
とそこへ優樹菜先生がやってきて
「授業はじめるから、そこにいる人たち出てきなさい」
「「「「「「「「「は、はいっ!」」」」」」」」」
なんか、ものすごい速さで駆け寄ってきた。
あっけなく出てきた。
先生が来てから遅れてくる生徒たちが集まって、授業が始まった。
「はーい。今日も戦闘訓練です。ランキング上位に入れるように頑張りましょう」
みんなの空気がガラッと変わってピリピリしている。
あれ、おかしいぞ。戦闘って言ったか? 優樹菜先生。
「ペア組んでねー」
だが先生は、相変わらずの調子だ。俺の聞き間違いだったか……
「はやく、戦闘をはじめてくださーい」
……やはり、聞き間違えじゃなかったようだ。
「俺はどうすればいいんですか?」
一応聞いておく。
「先生が鍛えてあげるって言ったでしょ?」
言った途端、先生は女であるか、疑うほどのパンチを繰り出してきた。
「うおっ!?」
「へー。よけれるんだ」
おいおい。さっきの黒服より早いぞ。
黒服の時は油断したが、白門は、この学園に来てから、一回も気を緩めたことはなかった。
「一応、目の方はいいんでね」
背中に冷や汗が流れる。
「目だけじゃ無理だよ。それに反応できる体がないと」
「……」
「君はどうやってそんなに強くなったのかな?」
先生の顔は先程と正反対で、見るものを遠ざけるような顔をしていた。
「剣道を少々」
「それだけー?」
「武術も少々」
「よろしい」
よろしいってなにか知っていたような口ぶりだな。
とにかく、『死ぬかもしれない』という意味がわかってきたぜ。
「というか、そちらこそ何でそんなに、強いんですか?」
周りを見ると、優樹菜ほどではないが凄まじい戦闘をしていた。
「鍛えたから?」
「なんで疑問系なんですか……」
じゃなくて、今はこの戦闘に集中しなくては。この人から出る殺気にも似た何かに殺されてしまいそうだ。
「じゃ、続き行くよ?」
助走なしで、そこまで速度は出ないと思っていたが、甘かった。あそこまで速すぎるパンチを打つやつに、そんな常識は通じなかった。
あっという間に間合いを詰められ、腹に一発、背中に二発、パンチを入れられた。
「かはッ!」
「私、結構好きなんですよね。かっこいい子をいじめるの?」
ふふっ、っと小悪魔的な笑みを漏らした。
やっと地面から起き上がった白門に、もう一度、間合いを詰めてくる。
「終わちゃいますよ?」
まだ笑っている。
「――させないっ!」
声が聞こえ、優樹菜の前を黒い薔薇が二本横切った。
「誰よ。こんないいところで……」
そこに立っていたのは――
「私の騎士に何してるのよ」
志津香だった。
「あなた、何してるの? あなたは、特別ルームで自主トレーニングっていったわよね?」
「私は私のしたいようにしてるわ」
「ちっ……問題児がっ」
「問題児? 誰のことですか? 先生」
「お前、成績はいいのに、ほんと性格悪いわね」
「先生には言われたくないですね」
「なんか先生さっきから、口調変わってきてない?」
「そんなことないですよー?」
どうしよう。どっちが本物の先生なのか? 後者であることを願いたい……
「と、とりあえずありがとな。志津香。助かったよ。」
「い、いいのよ。別に。あなたは相棒なのだから」
「それでもだよ」
言って笑いかける。
そういえば、志津香のこと、こうやってまともに見るの初めてな気がする。
髪と瞳は、吸い込まれそうなほどの黒色。身長は、白門の方が少し高い。だが雰囲気だけ見ると、彼女はすごく大人びている。そこに見惚れてしまいそうになる。
「――い。おいっ! 聞いてんのか白門」
そういえばまだ戦闘中だった。
「白門。これ」
そう言って手渡してきたのは、保健室の先生がくれた薬だった。
「あ、飲むの忘れてたわ」
「早く飲みなさい。……それにしても飲まずによくここまで、持ちこたえたわね」
「もしかして、その薬って、飲むと力が出てくるような薬?」
少しからかうように言ってみる。返ってきたのは
「そうよ。だから早く飲みなさい」
「……」
「ほら、どうしたのよ」
「ほんとに?」
そんな薬聞いたことないぞ。
「……めんどうね。水魔法『ウォーター・ドラゴン』っ!」
彼女が呪文?を唱えると、どこからか出てきた水が、龍のような形になってうねうねしている。
「……それをどうするの?」
おそるおそる聞いてみる。
だが志津香は質問に答えない。
「その薬を口の中にいれて、口を開いてなさい」
「なん――」
「いいからっ!」
なんか、逆らえるような状況じゃないようだ。
言われたとおりにして待っていると、水の龍が口の中に入ってきた。
「うううううぅぅぅうぅぅうぅうぅっ! かはっ!」
「気分はどう?」
「最低だよッ! 何してくれんだっ!」
「でもなんか、体に力がみなぎってこない?」
そういえばそうだ。さっきより体が軽く、速く動けそうだ。
「どうだろうな。動いてみなければわからない」
「じゃあ、あの人、やってきてよ」
志津香が指を指す方向にいたのは、すっかり、存在を忘れていた優樹菜先生だ。
「結構待ったんですけど? 怒りが頂点なんですけど……」
何かもう、手遅れな感じだった。
「あれは、一回気絶させるしかないかもね……」
白門は力なく笑う。
「……あんたの力見せてよ。私がよかったって思えるくらい満足させて」
「……了解。姫」
姫からのお願いじゃ断ることはできないね。
「ということだ。先生、一撃で終わらす」
「図に乗るんじゃないっ!」
かなりスキがあるおお振りのフックだった。
俺はあえて懐に潜り込み、それを躱して、鳩尾に右手を叩き込んだ。
「かはっ!」
空気を吐き出された先生は、うつぶせの状態で倒れた。
「これじゃあ、来る前の逆だな」
「期待通りね」
「そうかい」
「さすがは私の幼馴染っ!」
そう言って背中を叩かれた。――は?
「幼馴染?」
「そうよ?ハクくんっ!」
「うぉおっ!?いきなり抱きついてくるなっ!」
もうホントわけわかんない……はぁ。