新しい学園は戦場っ!?part1
いつまでそうしていただろうか。
志津香が出て行ってから、数十分が経とうとしていた。
――さっきの、あれ、その、初めてだから……
「あぁぁあぁああぁっ!」
爆弾情報、投下してきやがって……俺も初めてだったんだが。
これじゃ、まるで恋人同士じゃないかっ!?
急激に顔が熱くなるのを感じた。
だ、だめだ。考えるな。考えるな、白門っ!?
――ガラガラっ!
「ひっ!?」
「あら起きたのね」
びっくりした~。こんなこと考えてるのばれたら、恥ずかしくて死ぬっ!
そこに立っていたのは、白衣を着た人だった。
超がつくほどの大人の女性という感じの容姿。おもわず見とれてしまいそうだった。
「あの、この学校の保健室の先生ですか?」
「そうですよ?」
「とりあえず、職員のいる場所に案内してくれませんか?」
「えぇ、もちろんいいですよ」
優しそうな方でよかった。
保健室を出た俺と先生は、職員室らしき場所に来た。
「ありがとうございました」
「いえいえ……あ、これ渡さないとでした」
そう言って、ポケットの中から出した透明な袋を渡してきた。
「これを、すぐ飲んでください」
「えっ、はい。分かりました」
「それじゃあ」
「ほんとありがとうございました」
先生は手をひらひらさせながら、来た道を戻っていった。
「さて、はいりま――」
「そこどいてくんない?」
振り向くとそこには、ここの教師らしき服を着た、女の先生が立っていた。
「す、すいません」
「みたことないわね。あなた」
「えっと、黒服のひ――」
「あっ! 思い出した! 転入生だ」
話が早くて助かる。この先生に聞くことにしよう。
「俺、この学校に転入することになってるみたいなんですけど……マジですか?」
「おぉ、マジマジ! ちなみに、私のクラスだからね。立派に鍛えてあげるわよ」
「別に鍛えてもらわなくて結構なんですが」
「鍛えとかないと――」
先生は一旦、言葉をきり
「死ぬかもね」
ひどく冷たい声で言い放った。
「ちょ、それどういうことですかっ?」
先生は穏やかな声にもどして
「大丈夫。分かることだから……ついてきて」
俺は、黙ってついて行った。
「転入生紹介するよ~」
どういうふうに挨拶しようか……
「えっと、高宮白門です。この学園のことはよくわからないですが、よろ――」
白門は挨拶の途中で、ある人物を発見した。
「お前っ!さっきの」
「あれ?白門君は志津香さんと知り合いなんですか?」
「それは――」
白門の声を遮って志津香が言った。
「そうよ。 白門は私の契約者よ」
「……ホントですか?」
先生が俺の顔を覗き込んできた。
「えっと、一応そういう事になってるみたいです」
「しょ、証拠はっ!?」
証拠と言われても……あ! あるじゃん証拠。で、でもな。公然わいせつ罪みたいな感じになるぞ。いきなり上半身裸になるとか……。
「証拠みせてあげれば?」
志津香はクスクスと笑いながら言ってきやがった。
「……ホントに見たいですか?」
一応聞いておく。犯罪者予備軍にはなりたくないからだ。
「「「「「「「「「「みたいっ!!!!」」」」」」」」」
クラスが声で揺れた。なんて声してんだ皆……。
呆れながら、ワイシャツのボタンを外していく。
「胸筋すごい」「腹筋も」「なんか、黒い刺青、みたいなのはいってるけど……」「それのことじゃない?」「おいしそう……グヘヘ」
なんか、メッチャクチャ見られてる……てか、最後の誰だよっ!?
「「「「「「「「「キャーっ!ホントの騎士だーっ!」」」」」」」」」
「も、もういいですか」
「この時期に騎士って早くない?」「全校で契約者は四組だって」「いいなー。黒槇さん」「結構、かっこいいから狙ってたのになー」「てか、男子が少ないのよねー」「この学年全部合わせても3人でしょ?」「「「「「「「「「いいなー黒槇さんっ!」」」」」」」」」
俺の言葉なんか、全く耳に入ってないな。うん。
さっさと、服を着た俺は、先生に耳打ちする。
「この学校ってそんなにっ男子が少ないんですか?」
「はい。適当に選べば、学年で、十人くらいは入るんですが。死ぬとなるとちょっと……」
「えっ!俺、そんなところから選抜されたのっ!?」
「みなさんー。契約は複数でも可能ですよ?」
「「「「「「「「「……やったーっ!!!!!」」」」」」」」」
「……ちっ。余計なことを」
なんか、志津香が悔しそうにしている。なぜだ?
「とにかく。授業の準備をしなさいっ!場所はグラウンドです」
先生からの声がかかると、生徒たちは、素早く行動にうつ――――――さなかった。
「ねぇねぇ?誰から話しかける?」「……あたし行っちゃおっかな」「抜けがけずるーい」
こういうところは、女子高校生らしい……のか?
「白門くん。先生の名前は春崎優樹菜だからね?」
「はい。優樹菜先生ですね」
「うんっ。あ、これに着替えて出てきて」
「これとは?」
優樹菜が、指をパチンと鳴らすと、何もなかったところから、制服が出現した。
「……魔法?」
「そーうっ!よくわかったね。とにかく着といてね」
そういって、駆け出していった。
「もうわけわからん……」
後ろでは、女子たちの話し声が鳴りやんでいなかった……。