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修羅のなだめ方。

授業が終わってしまい、俺たちはサボったということになってしまった。いや、実際サボったのだが。

「和花奈。これから教室もどるけど、お前は大丈夫か?」

「うん、私は大丈夫。白門こそ、死んじゃダメだよ?」

お、う。わかっている。わかっていはいるが。

「あぁ、なんとかするさ」

不安でしょうがない。さっきの志津香の表情はまずい。あんな表情は今まで生きてきたが一度も目にしたことのない表情だった。

「じゃあ、私いくね。それと……ホントのこと言ってくれてありがと」

最後に顔を赤くしてお礼を言って去っていった。

「あれって、惚れられてるだろ……。なんとなくわかるぞ」

とりあえず、自分も教室に戻ろうと足を動かした。

ほどなくして教室へは付いたが、なんだろう……空気が重い。

「あら、白門。おかえり、単位もらえなくて残念ね」

口だけ笑っているクラスメイト。顔が笑っていない志津香。 

「た、ただいま。えっとゴメンな志津香」

「なにがゴメンなの?」

笑ってより一層怖くなる志津香。

「えっと……あはは。じゅ、授業でなくて……?」

「ん?」

首を傾げる仕草も普段なら可愛いのだが、今は恐怖の感情が支配している。

「えっと、和花奈を連れってて?」

「んん?」

これも違うようだ。何が正解なんだ?

「…………他の女の子抱きかかえて逃走してごめんなさい?」

「うん。それで?」

それで!? それでってどういうこと?

「……?」

「なんか侘びとか、バツとか」

「……志津香の言うことをなんでも一つ聞きます。ただし俺に出来る範囲で」

「じゃあ、ここでキスしましょ」

俺は結構悩んでバツの内容を決めたのだが、間髪を容れずにバツを決めてしまった。いや、俺にとっては恥ずかしいだけであって、バツではないんだが。

「ここにいる人たちに見せつけてあげる。白門の契約者が誰なのかを」

彼女の発言は強気だったが、俺には気になったことがあった。

震えているのだ、志津香の手が。

「……志津香、お前。嫉妬してんのか?」

「なっ!? 違うわよ! 白門が誰のものかということをね、示そうとしているだけよ!」

「でもホントは恥ずかしいんだろ。手が震えてるぞ?」

耳元で志津香にしか聞こえないように話す。

「――! これは……痺れちゃっただけよ」

「目瞑ってて、俺からしてあげるから」

「――!? ……うん」

俺は言い、志津香は目を閉じた。

「――ん♡」

唇を志津香と合わせる。

熱く、艶やかなその唇に俺の唇を重ねる。

志津香は少しだけ声を漏らした。

唇を離すと「あっ」と名残惜しそうに声を再び漏らした。

「はくとぉ」

甘く蕩けた声で彼女は俺の名前を呼ぶ。

「これでいいか?」

「うぅん」

とここでようやく外の声が耳に入ってきた。

「……ここ、教室だった」

今頃気づいても遅いのだが。俺は後悔した。

「エッチ」「いやらしい」「志津香さんってあんなに……」「いいなぁ」「白門くんと幼馴染になりたい!」「私もあんなキスしてみたい!」

口々に周りから声が上がる。

な、なんだ? みんなそんなに契約したいのか!? それなら俺は風間先輩を推すぞ!

――ガラガラッ

「はぁ~い。二時間目はじめるわよ~外でなさぁ~い」

次の時間は魔法基礎の実習だった。


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