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ご飯にする? お風呂にする? …………

「痛っー。ちょっとは手加減してくれ……」

相変わらず優しさというものが欠如している優樹菜先生と稽古をしたあと、体育館に残り、一人体術訓練をしていた。

魔法の方の訓練は日々の授業で学んでいるので問題はない。

優樹菜の猛攻を必死にガードし続けた結果、腕が真っ赤に晴れ上がっている。

きっと魔法の力で身体能力をさらに強化しているのであろう。

薬を飲んだ白門でさえガードするのがやっとであった。

「さぁて、そろそろ部屋戻るか……」

体育館の窓から差し込むのは月の光。空はすでに真っ暗である。

白門がこんなにも遅くまで訓練をしていたのは志津香の部屋に戻りたくなかったからだ。

二人だけの空間にいるとそれだけで頭がおかしくなりそうだった。

それでも戻らなきゃいけないと思った白門はゆっくりと志津香部屋兼自室に向かって足を運んだ。




「おかえりなさい白門。ご飯にする? お風呂にする? それとも……」

帰ってきていきなりこれだ。だから乗り気ではなかったのだ。

志津香の態度がさらに甘える感じになったのは、さきほどの羅姫との戦いが終わってからだった。

ったく。それでこう繋げるんだろ?

――ワ・タ・シっ?

きっとこう来るだろうと思い込んでいた白門だったが、志津香の言った言葉は違っていた。

「さ・さ・きっ?」

――黒服かよッッ!!

と、ツッコミそうになるのをなんとか抑えこみ、一旦冷静になる。

訓練してきたから汗とか臭うだろうから、

「……風呂にしとくよ」

と告げた。

この選択肢は間違っていたのかもしれない。

「じゃあ私も準備するわ。ちょっと先に入ってて」

「え? ちょ、待て待て!」

「なにかしら?」

なにかしらっって……普通に考えて問題だろ。

「あのな、俺たちは年頃の男女だぞ?」

「それが何か問題なの?」

「問題しかないだろっ!」

はぁはぁと息を切らしながら叫んだ白門をよそに志津香は実に冷静だった。

「……ふふっ。冗談よ冗談」

「へ? 冗談……お前嘘言うなよ! すげぇ焦ったんだからな!」

「わかったから早く汗流してきなさい。ご飯の支度しとくから」

志津香の遊びに付き合わされてただけかよ。

少しばかりムッとした白門は、朝と同じようにでかい風呂に向かった。

体を洗い、頭にタオルを乗せながら湯船に浸かると、一日の疲れが取れたような気がした。

「ふぅぅ。疲れたぁ」

思わず声が漏れた。

続いてもうひとつの声が風呂場に響いた。

「ホント疲れたわよね。私も張り切りすぎちゃったわ」

「そうか、志津香頑張ってたもんな俺の為……ニィィィィィっ!?」

な、なんで風呂に……? ご飯用意してくれてるんじゃなかったの?

そう考えて白門はひとつの考えに思い至った。

ご飯の用意って佐々木さんがやってくれるじゃないか

と。

「ほら、嘘ついてないでしょ? あ、冗談はウソね」

そっちがウソだったのか。って落ち着いてる場合じゃない!

白門は慌てて頭の上のタオルを腰に巻きつけた。

ちなみにこの風呂はでかい、というかでかすぎるので湯気のおかげでまだ志津香を視界に捉えてはいない。

「な、なななんで入ってきてるんだ!?」

動揺しすぎて口が回らない。

「スキンシップしに……ふふっ」

足音が徐々に近づいてくる。

白門の心臓は今までにないくらいに鼓動を早くしていた。

妖艶な志津香のその声が白門の耳に届いた。

「ちょ、待て! 待ってって!!」

「だ~め」

やがて湯気に志津香の影が映るほど近づいてきた。

と、ここで白門は気がついた。

この風呂結構広いから遠いうちに逃げときゃよかった!

そして、そのときは来た。

「は~くっと!」

湯気から飛び出してくることがわかった白門はとっさに目を閉じた。

「――!!」

永遠に開かないんじゃないかと思うほど強くつぶる。

「……なんだ、目をつぶってたのね。つまんない~! 目開けていいよ?」

「いや! それはまずいって!!」

そりゃ、年頃の男子だし興味はあるけども……ほんとに?

恐る恐る目を開けてみると……

「どうっ? 似合うでしょ」

黒いビキニを着た抜群プロポーションな志津香がポーズをとっていた。

その豊満なバストは手を上で組んで胸を張っているせいか、さらに大きく感じ取れる。

お腹も無駄な脂肪はなく括れていて、お尻までのラインがとても際立ってた。

「…………ごちそうさまでした」

これだけ告げて俺の意識は沈んでいった。



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