喧嘩前の朝
どうも、藤原と申す者です。今回のメインは白門を取り合うということですから、バトルを長く濃く書けたらいいなと思ってます。あっ!でもこの話では戦いが出ません。嵐の前の静けさといったところでしょうか。二話後には喧嘩に入ると思います。
って言っても俺、バトルを濃くかけないんですよね。すぐ勝負がついちゃう。苦手なんですよね、バトル。すいません(>_<)
朝……俺は志津香より早く目を覚ました。
「う~ん……あれ? なんで掛け布団が……まさか、志津香が」
「――おはようございます白門様」
「うわぉおっ!」
振り返るとそこには黒服さんがいた。
「まだ冷えるので布団を掛けさせていただきました」
「お前だったのかっ!?」
内心、黒服さんに感謝しつつ、志津香じゃなかったことにがっかりしていた。
と、昨日は疲れて風呂に入らずに寝てしまったこと思い出し、黒服さんに場所を聞いて入ってくることにした。
男子用の風呂は、ないということだったので、志津香には悪いが、部屋の風呂に入った。部屋の風呂といっても、なかなかに広く、快適だった。
風呂から出てくると、エプロン姿の黒服さんと会った。
「もうすぐ朝食ができますので、志津香様を起こさなければいけません。起こしておいていただけないでしょうか?」
「あぁ、わかったよ」
俺の返事に「お願いします」と返すと扉を開けて出て行った。
「さて、志津香を起こすか」
立ち上がり志津香が寝ているベットの横まで来た。
思わず見惚れてしまうまいそうな寝顔。静かに寝息を立てている小さな口。サラサラと艶やかな長い黒髪。
白門は生唾を飲む。いろいろ考えてしまう。
そんなことを考えると、志津香の口から悩ましい吐息が漏れた。
「……んぅ……」
コレはもう耐えられない。さっさと起こしてしまおう。
「志津香? 起きろ、朝だぞ~」
「あとご……」
「5?」
「5時間くらい寝かせて」
「もはや分で答える気がなかったっ!?」
「300分で」
しっかり計算して答えてきた。って言ったって60×5をすればいいだけだけどな。
「てかお前、もう起きてるだろ?」
「寝てない」
「起きてるんだな」
はぁ、仕方ない。
「キスしたら起きるか」
冗談めかして笑いながら言ってやる。しかし返ってくる答えは、
「…………ん」
口を少しだけ突き出してこちらへ向けてくる。
まいったな。そんなこと朝からするつもりはなかったんだけどな。
姫様のご希望通りにその唇に軽くキスする。
「――っちゅ」
……これは想像以上に可愛い。寝起きの志津香はなんというか無防備すぎだった。
「ん――っ! はぁ~」
そんなことを考えてると、志津香は宣言通りベットから降りて伸びをしていた。
「佐々木、朝食は?」
佐々木? 誰だろ? この部屋には俺と志津香しかいないはずなんだが。
「用意できております」
「うぁわおっ!?」
いつから居たんだ? まさかさっきの見られてた?
「ていうか、黒服さん、佐々木っていうの?」
「はい、名字は佐々木です」
は、初めて知った!? でも、何か合ってる気がする。
佐々木さんの用意したすごく美味しい朝食を食べ、寮を出て学校に向かう。志津香は『女の子には準備があるのよ』とか言って部屋に残った。
昨日の夜もこの道を通ったが、こんなに広かったのか。
感心していると、昨日の道案内してくれた男子生徒がいた。
「お~い!」
お茶のCMにありそうなセリフでその男子生徒を呼ぶ(名前は知らないので『お~い』としか呼べないのだが)
幸いにも男子生徒は振り返ってこちらを見た。
駆け足で近寄り、昨日のお礼を言った。
「いいよ、いいよ。この学園男子少ないから、肩身が狭いよね。だからさ僕も少しお近づきになりたいなって思って声かけただけだから」
なんて優しいんだこの男子生徒。ちょうどいいから名前も聞いちゃおうかな。
「あの、名前とか聞いてもいい?」
「あ、そうだね。まだ名乗ってなかった。――僕、風間大輔、二年C組だよ」
「あ、すいません! 二年生でしたか。馴れ馴れしくしてすいません!」
予想はしてたけど、二年生だったか……。それじゃあなかなか会えないかな、いい人なのに。……間違ってもホモじゃないからな!
「いや、別に構わないよ。僕もそっちのほうが気安く話しかけれるし」
笑顔でニコって笑ってくる顔が眩しくて輝いていて、無意識に手を前にかざしてしまう。
「え? 何してるの、はは。白門君って面白いね」
「え? あ、すいません」
何やってたんだろ? 全く記憶にない。……あれ? てか俺名前教えてないよな。
「あの? なんで俺の名前を知ってるんですか? 言ってませんでしたよね?」
そういえば、初日も名前を呼んでたような。
「白門君、周りの噂に疎いのかな?」
「……? なんですか、聞こえるように言ってくださいよ」
なにやら、こちらを見て苦笑いを浮かべている。
「……あっ! 時間とか大丈夫でしたか?」
もしかしたら、時間があまりないから、苦笑いを浮かべていたとか?
「いや、別に大丈夫だよ。……ほら、耳を澄ましてご覧?」
「え? あ、はい」
言われた通り耳を澄ますと、そこかしこから声が聞こえてきた。
「ねぇ、あそこにいるのって転校生?」
「うちって、男子少ないから、きっとそうだよ~」
などなど、いろんな人からの声が聞こえてきた。
「これって……」
「そ、全部、白門君の話。君って結構有名なんだよ?」
だから大輔さんも俺の名前知ってたのか。
ていうか転校生だから、噂にもなるのか……な?
一旦納得して、白門と大輔は学校への道を歩いた。
その頃、志津香は。
「佐々木、今日決闘を申し込むわ、羅姫先輩に」
「……!? なぜでしょうか、志津香様」
なぜそんなに不思議そうな顔をするのかしら? 理由は一つなのに。
「決まってるじゃない。白門との契約を破棄してもらうためよ」
「ですが、序列的には志津香様の方が下ではないですか。相手も条件を出すとしたら志津香様と同じく契約を破棄することを条件としてくるでしょう。リスクが大きすぎます」
そんなのは、そんなのは……。
「そんなのわかってるわ! でも、白門と誰かが契約したままだとなんかこう――ムカムカイライラしてくるのよっ!」
「……嫉妬ですか」
「――そうっ! それよ、なんかしっくりきたわ! …………っ!」
自分で言って恥ずかしくなったのか、志津香はこれ以上ないとばかりに顔を赤くした。
「とっ、とにかく! ギャラリーを集めておきなさいっ! 張り紙でもなんでもいいから。……なんとしても勝たないと!」
よほど、白門のことが気に入ってるのか、志津香の目は炎のように燃えていた。
「それより志津香様、学校に遅れてしまいます。急いで支度をしてください」
「それよりってなによ、それよりって! ――あれ? そういえば白門は?」
ようやく気づいたのか、キョロキョロと周り見た。
苦笑しながら、佐々木は真実を告げた。
「白門様なら二十分ほど前にここを出られました。志津香様が送り出したのですよ?」
「えっ! えっ!? 普通待っててくれるものじゃないの!?」
「白門様には常識が通用しませんので」
――志津香様の常識は。
と心の中で呟く佐々木だった。
白門はクラスに入った途端、言葉の波に酔いそうになった。
「昨日はどこで寝たの?」「何食べたの?」「今日の予定は?」「お昼一緒に食べない?」
全員位置について待っていたかのように突進してきた。
「えっと……あはは」
乾いた笑いしか出てこなかった。なぜなら、辛うじて聞こえた質問が、『昨日はどこで寝たの』だったからだ。
答えると、何かしらの誤解を生むと考えた白門は茶を濁すことにした。
「べ、ベットだよ」
だが、そんな回答期待してないよ的な目線が白門に多数突き刺さる。
危ない危ない、視線に攻撃力があったら蜂の巣になるところだった。
だが、その中のひとりが思いついたよう手を挙げて質問してきた。
「白門君って、学園に来たんだから、どこかに部屋が用意されてるわよね?」
「え、あ、うん」
まずい。部屋はどこにあるのっていう質問だろう……。
白門の予想は、当然当たった。
「部屋ってどこにあるの?」
その子が質問したとき、周りの女子たちはその子を見て、親指をグッと立てた。
な、なんだ、この連携……。
どう答えようかと白門困っていると、一隻の助け舟が到着した。
タイミングを見計らったように教室に入ってきた志津香にヘルプアピールを視線で送り続けると、『はぁ、言っちゃえばいいじゃない』という視線が返ってきた。それでも白門が頑なに拒否すると、助け舟は口を開いた。
「白門は私と同衾してるのよ」
全然、全くもって助け舟じゃなかった。
『えっ!? えぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?』
クラス全員の声が教室に木霊した。み、耳がァ……。
「それより、志津香! お前何言ってんだよ!?」
「あら、一緒の部屋なのは間違いないでしょ?」
ぐぬぬ……おっしゃる通りだが……。
そこで志津香は一つ咳払いをして。
「だから、白門に会いたかったら、私の部屋に来ることね。一回百円で入れてあげるわ、私の部屋に」
「おい、俺をネタに商売するなよ」
すかさずツッコミを入れる白門だったが、どうやらもう収まりがつないいらしい。
「私、今夜行くわね!」「私だっていくもん!」「あたしだって……グヘ♪」
あ、昨日の人が居た。っじゃなくて! はぁ、もういいや。
などと考えていると、志津香が手招きしてるのに気づいた。
「なんだよ、志津香のせいで変な誤解と面倒な用事が出来ちまったじゃねぇか」
「驚かないで聞いて……今日ね、あなたのした契約を、羅姫先輩に解除させるわ」
「へぇ~、意外と早くやるんだな」
「それでね、昼休みに羅姫先輩に喧嘩を売りに行くからついてきて」
喧嘩をね、うん、うん…………はっ!?
どうも智也と申す者です。あとがきは……というか前書きも後書きも書くことなくて困ります(>_<)
ということで次回をお楽しみに。