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武装守護霊  作者: 改樹考果
間章その七『美羽VS夜衣斗!』
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四、『……今更ですけど』

 俺が外に出ると、グラウンドの美羽さんが首を傾げた。

 「今日は偽物を出さないんですか?」

 まあ、予想通りだな……ふむふむ。なるほど……とりあえず一安心だ。

 俺は心の中で安堵しつつ、不敵に笑って頷いてみる。

 「美羽さんとは真正面から戦いたいですからね」

 その俺の言葉に、美羽さんは小首を傾げ、ん~って感じになり、

 「それ、嘘ですよね?」

 結構ドキッとする言葉を発した。

 「夜衣斗さんのことですから、きっとなんか色々と罠とか、誘導とかしますよね」

 なんだ。気付かれてないのか……とはいえ、なにかに感付いているのは確かだな。流石は勘がとんでもなく鋭くなっている武霊使いだな……

 そう思いながら、俺は再び頷いた。

 「……俺の真正面はそういうことですよ。言葉を変えれば、全力全開全身全霊で闘わせて貰う。ってところでしょうかね?」

 俺の言葉に、美羽さんはぱーっと顔を輝かせる。

 「はい。美羽も、夜衣斗さんとは全力で戦いたいと思っていたんです。もう、ここ数日、うずうずしっ放しでしたよ」

 ……もしかして、美羽さんも武霊ファイト馬鹿なんだろうか?

 「だって、コウリュウの全力をぶつけられる武霊使いなんて、滅多にいないんですもの」

 うわ……物凄く不穏な言葉が出てきたよ……まあ、あれだけ破壊力がある武霊能力であれば、そうなるのは当然といえば当然だよな……というか、俺とオウキでも同じだと思うんですけど。こっちはレベル1で、美羽さんはレベル2なんだから……

 他の武霊使いも同じことを思っているのか、レベル2状態のコウリュウがいるグラウンドには美羽さん達以外誰もいない。

 広範囲攻撃型な上に、飛行タイプであるのなら、いくら気を付けてても、周囲に被害を及ぼすことだってあるだろう。

 実際、美羽さんは琴野さんとの喧嘩や、はぐれ戦などで実際に余波によって壊れたものや傷付いたものだってあったはずだ。

 つい最近、こっちに来た俺より、他の人達の方がその危険性を熟知しているのは当たり前の話しか?

 ……まあ、なんであれ、他の連中を気にせずに戦えるのは良いことだ。

 すーっと息を吸い、大きく息を吐いて、美羽さんを正面から見る。

 「……では、始めましょうか?」

 俺の言葉に、美羽さんは嬉しそうに微笑んだ。

 「はい!」

 その返事と同時に、コウリュウが地面を蹴り、一気に真上へと飛び上がり、羽ばたいて空中に留まった。

 きっとまず最初に空を飛ぶと思っていた俺とオウキは、コウリュウの動きに合わせて、手に隠し持っていた手榴弾(俺の方がリザード・オウキの方がサラマンダー)を投げていた。

 ただし、投げ込んだ場所は、コウリュウに直接ではなく、その真下。羽ばたくことによって叩き付けられている空気をダイレクトに受ける場所だ。

 そして、込めていた中身は発煙弾(スモーク)

 ジャミングスモークと同じ内容の煙が一気に白銀の球体から発生し、コウリュウによって生み出されている強烈な風によってグラウンドのみならず、その周りの校舎まで白一色になってしまう。

 さらにダメ押しに、オウキの全身の簡易格納庫からも大量のジャミングスモークを放出したので、その範囲は一気に学園全土までに及び、隠れて様子を見ていた他の子達が慌てふためく様子が各地で見れた。

 「いきなりですか夜衣斗さん!」

 と言う美羽さんの声が聞こえるが、最初っから宣言していたでしょうが、これが俺の真正面だって……なんであれ、これで最初の仕込みは終わった。

 後は――

 「コウリュウ! ウィンドブレス!」

 美羽さんの命令に応えたコウリュウが、口を大きく開け、下に向けて風の吐息を叩き込んだ。

 強烈な突風により、あっさり吹き飛ばされるジャミングスモーク。

 勿論、そうすることは予想済みなので、ブレスが吐かれると同時に俺とオウキは、煙の中から上空へと飛び出していた。

 ブレスの影響を最小限に止めつつ、コウリュウを挟み込むような形で出てきた俺とオウキに、美羽さんが驚きの表情になり、なにかを命令しようする。

 だが、それが実行されるより早く、オウキは両腰に付けたガトリングミサイルポット(ウロボロス)を連射し、俺も俺で両手に持った二丁拳銃(ドーベルマン)で、美羽さんを狙い撃つ。

 撃ち込んだ小型ミサイルには、コウリュウの動きを止めるための粘着弾(アドヒージョン)・弾丸には美羽さんを気絶させるための電流弾(サンダー)

 仮に防御鱗で電流弾(サンダー)を止めようとしても、粘着弾(アドヒージョン)で鱗をくっ付かせるので防ぐことはできなくなる。まあ、本当ならなるべく痛みを感じさせない睡眠弾(スリープ)を使ってあげたかったのだが、コウリュウには念動力があるため、煙程度ではあっさり防がれてしまうだろう。

 故に、躊躇しつつも、電流弾(サンダー)は美羽さんに直撃するように撃っていた。

 だが、着弾する直前で、なにかに弾かれ、美羽さんから離れた所で弾丸は電流を放出してしまった。

 想定より念動力が強い!? つまり、これが意志力全快の美羽さんってことか……

 美羽さんへの固定上の強い攻撃は、彼女を傷付けることに繋がりかねない。だとすると、武霊使いへの直接攻撃以外を考えなくてはいけない。つまり、コウリュウの撃破以外、美羽さんを倒す手段がないということになる。

 しかし……

 撃ち込んだ粘着弾(アドヒージョン)ミサイルは、自らの周囲に吐いたファイアーブレスによってあっさり蒸発させられてしまっている。

 根本的にレベル2とレベル1の具現化率の違いが顕著に現れているのだろう。仮にこれがレベル1同士であったのなら、今日までの逆鬼ごっこの経験上、霧散化によってミサイルは消えているはずだろうが、それすら許されないというのは……下手な小細工では通用しないか……というか……

 「……今更ですけど、なんでコウリュウをレベル2にしているんです?」

 「え?」

 俺の疑問に、反撃の指示を出そうとしていた美羽さんが固まった。

 「……考えてみると、今までの逆鬼ごっこの子側でレベル2になっている人はいなかったんですよね。多分、俺がまだレベル1の具現化しかできないための配慮だと思うんですが……ナチュラルにレベル2にしてますよね?」

 「えっと……その……」

 俺の更なる問いに、美羽さんがしどろもどろになり、視線をあっちこっち彷徨わせる。

 「いや、だって、ほら、夜衣斗さんってあの高神麗華を倒してますし、その時にレベル2の武霊だって倒しているじゃないですか」

 「……高神麗華を倒せたのは、美羽さんの協力があってこそですし、分裂体のはあくまで疑似でしょうからね。本物のレベル2を倒したわけじゃないですよ」

 「そ、それはそうですが……」

 うぅ~って感じに物凄く困った様子は、少々、いや、かなり愛らしかった。

 このまましばらく見ていたい欲求に襲われたが、まあ、流石にそれは可哀想なので、

 「別に構いませんよ。そのままでも」

 「え?」

 俺の発言に、キョトンとする美羽さん。

 「さっきも言ったでしょ? 全力全開全身全霊で闘わせて貰うって。だから、美羽さんにもそうであってくれないと困るんですよ」

 俺の言葉にじーっと美羽さんはこっちを見詰め、ぽそりと、

 「いいんですか?」

 「構いません」

 とか言いつつ、内心ではうわ、言っちゃったよ……って感じになっているんだが……まあ、そうじゃなければ意味がないのだからしょうがないだろう。次の宿命の悪意の持ち主が、レベル2以上でないという確証はないわけだからな。

 「じゃあ、遠慮なく! コウリュウ!」

 嬉しそうに笑って、コウリュウを俺に向って突撃させる美羽さん。

 迫ってくる赤いドラゴンに思わず後悔しつつ、話している間に仕掛けていた罠を発動させた。

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