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武装守護霊  作者: 改樹考果
間章その七『美羽VS夜衣斗!』
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三、『いい勝負になるとは思うが……』

 下駄箱に向いながら、村雲は飛矢折さんに関する話を続けてくれた。

 「去年の末辺りかな? 星波町で連続して婦女暴行事件が起きるようになったんだ。羊の角を持った狼男……まあ、悪魔をイメージしていたみたいだな。そんな武霊を使って女性を暴行し、動けないほどの重傷を負わせてから、言葉を使いながら身体ごと心すら犯す……そんな手口が何件も続いても、自警団や警察はそいつを捕まえるどころか、何者であるかどうかすら掴めなかった」

 「……被害者からの証言は得られなかったのか?」

 「被害者は、事件の被害を丸ごとなかったこと(・・・・・・・・・)にしないと正気に戻らないほど壊されていたからな……それに犯人の武霊は、気配を隠すこと察知することに長けていたってのもある。その証拠に、こっちが警戒している裏を突かれて被害者が出たってことも何度かあった。それに加えて……春休みに強力な武霊使いが何十人も武霊を奪われてしまったからな……」

 「……体勢を立て直すのに時間が掛かったってことか?」

 「まあ、な。とはいえ、なんでか飛矢折の件まで鳴りを潜めていたんだが……もしかしたら……」

 少し何事かを考えるように言葉を止めた村雲は、浮かんだなにかを否定するように首を横に振った。

 話の流れから、大原亮の可能性を考えたのかもしれないが……まあ、無意味な推測だな。

 「とにかく、ゴールデンウィーク前、飛矢折はそいつに襲われたんだ」

 「……」

 「とはいっても、そのおかげで、おかげっていうのも変だが……まあ、そいつを捕まえることができたんだけどな」

 「……飛矢折さんも武霊使いなのか?」

 「いいや」

 「……武霊使いじゃないのに、武霊使いを倒せたってことか?」

 「さあな。詳細は飛矢折が語らないからわからないが……意識を失った犯人が見付かった時、飛矢折は両手両足を粉砕骨折し、服もぼろぼろの満身創痍な状態で発見され、その近くに黄道が倒れていて、彼女に謝っていたって話だ」

 「……どういう状況だ? というか、黄道?」

 「飛矢折の後ろの席が、ずっと空席だろ?」

 ……そういえば、空いている席が一つあったな……

 「『黄道(おうどう) 美幸(みゆき)』。俺らのクラスメイトで、武霊部の主力の一人であり、飛矢折の親友なんだが……その事件からずっと登校してない」

 「……事件で受けた傷は治っているんだろ?」

 「医療系の武霊能力の凄さは、黒樹も実感しているだろ? 例え死んでも直ぐに治療すれば助かるし、心の傷さえ消すことができる。まあ、そうは言っても、流石に倫理的な問題から、精神的な治療は滅多にされないがな」

 「……つまり、飛矢折さんと黄道さんは、身体の治療のみだったと?」

 「どうだろうな……少なくとも、黄道は引き籠ってしまっているし、飛矢折は不意に近付いてきた男の武霊使いを反射的に気絶してしまうようになっちまったからな……」

 「……黄道さんはいいとして、飛矢折さんの変化はどういうことだ?」

 思わず既に痛みは引いている顎を擦ってしまう。

 「飛矢折の家は、代々武術家をしている家柄らしくてな。単純に生身の勝負で、接近戦となると、武霊使いでもあっさり気絶させられるんだよ。まあ、それは黒樹も体感済みだろ?」

 思わずギクッとなるが……まあ、耳が早い村雲のことだ。ついさっきの出来事だって知っててもおかしくはないだろう。

 「まあ、もう解決した事件だからな。黒樹が気にすることじゃねぇよ。後は飛矢折自身の問題さ」

 確かにそうかもしれない。とはいえ……ん~なにか、妙な引っ掛かりを感じるんだよな。なにに対して、なんでそう思うのか、具体的な取っ掛かりするらイメージできてはいないが……まあ、他人の、しかも、事件が終結した後に来た俺が関わるべきことではないのは間違いない。それに、仮に最悪のことが起きていた場合、専門家でもない俺が関わるにはあまりにもデリケート過ぎる。男であること問題……ああ、なるほど、だから飛矢折さんの部活の仲間は、俺に対して敵意をむき出しにしていたのか……慕われている人ってことなんだろう。なら、なおのことって感じか……



 「「はいは~い。今、まさに注目の対決である美羽VS夜衣斗! その戦いのゴングが鳴ろうとしています。この戦い、村雲君はどう思います?」」

 「「黒樹はここ数日の逆鬼ごっこで急速にオウキとの扱いが上手くなっているみたいだからな。それに加えて、あの強力で汎用性が高い武霊能力だ。いい勝負になるとは思うが……それでもまだ赤井の方が優勢だろうな……」」

 「「ほほう? それはどうしてです?」」

 「「まず、夜衣斗と美羽では武霊に対する経験値が絶対的に違う。加えて言えば、黒樹はほとんど独学であるのに対して、美羽は十年と言う歳月を掛けて武霊部が作り出した知識と技術がある」」

 「「なるほど、確かにそれだけでも夜衣斗君は不利ですね」」

 「「ああ、しかも、間違いなく空中戦になるだろ? ドラゴンであるコウリュウは当然空中戦が得意だ。オウキも飛べるようだが、これも経験が違い過ぎるからな」」

 「「そう言えば、今までの逆鬼ごっこで空中戦になったことはありませんでしたね」」

 「「この間の高神麗華戦では空中戦を見せていたが、あの状況とはまた違うからな」」

 「「それはそうでしょうね。ん~でも、美羽ちゃんの武霊ランキングは、この間の繰り上がったとはいえ、昨日の図書委員長より圧倒的に下ですよ?」」

 「「それをお前が言うか? そもそも武霊ランキングなんて当てになるのか?」」

 「「っむ! 作っている人に向かってなんて言い草!」

 「「いや、だから、そんなことを言うなら、ランキングがどうやって決まるか公開しろよ」」

 「「え~芽印ちゃんわかんなぁ~い」」

 「「……お前、その仕草、死ぬほど似合わないって自覚はあるか?」」

 「「失礼な! こんな可愛い子を捕まえて!」」

 「「あ~はいはい。可愛い可愛い」」

 「「キー! 何よ自分は彼女がいるからって、他の女は投げやりに対応していいって言うの!?」」

 「「アホか! てめえだから投げやりに対応してんだよ!」」

 下駄箱で逆鬼ごっこの準備を進めながら校内放送を聞いていたら、何だか急に口論を始めた村雲と早見さん。

 まあ、逆鬼ごっこ開始前だから別にいいかもしれないが……逆鬼ごっこ中は戦闘に忙しくてあんまり気にしていないが、大体いつもこんな感じなようだ。

 思わず苦笑してしまうやりとりだが、今は放送を聞いている場合ではない。

 意識を切り替えるために、ふーっと大きく息を吐く。

 俺は今、いつも通りサーバントを大量に展開するなどの準備を進めていた。

 ドアの向こうに見えるグラウンドには、レベル2の巨体となっているコウリュウと、その頭上で仁王立ちになっている美羽さんが確認できる。

 やる気満々で……良いような悪いような……まあ、願ったり叶ったりな状況下でもある訳だから、良いっちゃいいんだが……ん~……

 段々複雑な心境になってきた。まあ、直前に飛矢折さんに関することを聞いたから、少しナーバスになってしまっているのだろう。

 武霊に関する闇に晒される運命にあるとはいえ、俺以外で、しかも、既に終わってしまったこととなると、完全にどうしようもない。そういうどうしようもないことは、俺は堪らなく嫌だった。

 こういう思考は無駄だとはわかってはいるが……駄目だな。呼吸だけでは、どうにも意識を切り替えられないな……

 根本的に俺は、マイナスに寄り易い思考傾向にあるのだろう。

 溜め息と共に苦笑してしまった。

 なら、これを抱えながら、進むだけだ。

 「「これより逆鬼ごっこを開催いたしますわ」」

 琴野さんの宣言が聞こえると同時に、俺は下駄箱から出るために前へと歩み出した。

 今日は、小細工はなしだ。少なくとも、武霊戦では。

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