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武装守護霊  作者: 改樹考果
間章その五『逆鬼ごっこ三日目』
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二、『常にメイド服と執事服を着ている人達』

 逆鬼ごっこ三日目。

 流石に警戒されたのか、グラウンド前には誰もいなかった。

 先に飛ばしたスカウトサーバント達からの情報によると、校舎の屋上や海の中など、学園大門に繋がる道に多く子達が隠れているようだった。

 ふむ……数は少ないが、反対側・回り道するルートにも隠れているな……が、こっちを進むのは危険かもしれない。数が少ないということは、つまり、その数でも十分通用すると信じられている連中。って可能性は考え過ぎだろうか? ん~あからさま過ぎるって感じもしなくもないしな……まあ、少なくとも、共闘はしているのは間違いないだろう。

 しかし、わかっているんだろうか? 共闘するということは、他人と同調して戦うということであり、その分だけ、動きがまとまって、予測し易くなるということを。

 そう思った俺は、生徒下駄箱に大量に作り出したオウキと俺の偽物を見る。

 「……さあ、行こうか!」

 一気に偽物達の五分の一を外に出す。

 偽物のチャイムは鳴らすが、まだ俺自身は出さない。

 代わりにオウキだけを先行させ、昼休みに下見した学園庭園森エリアに向かわせる。

 大量の俺とオウキの偽物達に、最初は無反応だった子達だが、あからさまな偽物である光学的な偽物や、実体を持ったドッペルゲンガーサーバントを織り交ぜたことで混乱したのか、散発的に攻撃が行われ始めた。

 当然、まだ始まってもいないので、子側の武霊能力制限ルールによって、次々と失格者が現れる。

 そのことに気付いた子側が武霊能力の使用を止めたタイミングで、第二陣を出発させた。

 これも偽物と思うかもしれないが、別にそれならそれで問題ない。

 第二陣が学園庭園に入り、森エリアを抜け、学園庭園に差し迫った時、再び子側の武霊能力が炸裂し始める。

 勿論、まだ俺は下駄箱から出てないので、攻撃した子達は失格。

 同じような手法で、第三陣、第四陣、第五陣を出す。

 子側が攻撃する度に、彼らのメンバーが姿を消す。それに怖気づいたのか、偽物達の出現が止まっても、森エリアに隠れたオウキと俺達に攻撃をしようとする者達はいなくなった。

 が、実は第三陣の時点で俺は既に下駄箱から出ており、とっくに逆鬼ごっこは始まっていたりする。

 本物のチャイムが鳴った後に、攻撃した子達が姿を消したのは、プロジェクションサーバントやステルスサーバントを使って、その武霊使いと武霊の姿を消していたからだ。勿論、姿を消されて戸惑っているところを、睡眠弾(スリープ)でお休みになって貰っているので、見た目上は本当に失格したかのように見えるという寸法。

 ここまでしたのは、単純に時間稼ぎのため。

 下見を終えた森エリアに、地雷機雷(フェアリー)やサーバント達の罠を設置するには、それなりに時間が掛かる。

 昨日は、挑発連鎖による失格者続出で時間を稼げたが、今回はその手は使えないと考え、なら、別の方法を使う必要があったというわけだ。

 とはいえ、今回もまんまと引っ掛かってくれちゃって……まあ、それだけオウキの武霊能力が優秀だってことで、俺の手柄ではないな。

 そう自分に言い聞かせていると、先に森に潜んでいたオウキが、俺に近付きながら否定の感情を送ってきた。

 ……調子に乗ってしまうから、そういうのはできれば止めて欲しいな。

 俺のお願いに、オウキは謝罪の感情を送って来てくれたが……まあ、嬉しかったよ。

 喜ぶオウキに苦笑しながら、森の真ん中に陣取る。

 さて、そろそろ気付き始めたかな?

 上空に飛んでいるスカウトサーバント達の視界を脳内ディプレイで確認する。

 すると、学園大門に向かう反対側・回り道するルートにいた何人かの子達が、こっちに向かい始めた。

 真っ先に彼らが気付くということは、やっぱり要注意な武霊使いだと考えるべきだな。

 そう思って彼らを注視すると、見知った相手が混じっていることに気付いた。

 まあ、そうはいっても会話はしたことはない。目立っているから勝手にこっちが覚えてしまったって感じだろうか?

 なんせ、なんでか教室の中でも常にメイド服と執事服を着ている人達だかなら……

 クラスメイトの二人がこっちに猛然とした勢いで迫っていることに、俺としてはちょっと困る。

 見知った相手を、非殺傷にしているとはいえ、攻撃するのはどうにも気が引ける。

 他のクラスメイトは、一昨日と昨日は、勝手に失格になってくれたり、睡眠弾(スリープ)で集団ごと退場させていたから、特にそれを意識することはなかったが、今回は場合によっては直接対決になりそうだしな……罠にかかってやられてくれないかな?

 なんて確率の低そうな希望を抱いていると、メイドと執事の二人に反応した他の子達が、森エリアに向って動き出した。

 ほどなくして、足の速い武霊達が、森まで後十数歩ってところまで現れる。

 では、まずはあいさつ代わりに……スナイパーサーバント!

 森エリアの縁の木々に待機させていた長大な銃身が付いた円盤達が、一斉に弾丸を放つ。

 これによって森に入ろうとしていた武霊達を次々と打ち抜き、霧散化させる。

 ん~人間並みに大きいトンボやら、ロボットペットやら、マグロ男やら……規則性が全くないな。まあ、そもそも、所属している生徒組織に関係ある武霊を持っている武霊使いばかりではないだろうしな。

 などと思いながら、スナイパーサーバントの弾幕の嵐を抜けた武霊とその武霊使い達を確認する。

 先頭にはやっぱりクラスメイトのメイド&執事コンビ。

 コンビといったが、どうやら仲が悪いらしく、何事かにこやかに、それでいて頬をひくつかせたり、額に血管を浮かばせるなどの怒りのエフェクトをチラつかせながら言い争っていた。

 ふむ……興味深い二人だが、クラスメイトっていうのがネックだな……こういうタイプ達は傍から見るのが一番面白いんだが、下手すれば巻き込まれるんじゃないんだろうか?

 などと今はしなくてもいい心配をしながら、森に子達が侵入するのを確認。

 それと同時に次のトラップが発動する。

 森の縁に設置したトラップは、シールドサーバント達。

 要するに、見えない壁をいきなり発生させたというわけだ。

 マグロ男の武霊が空中を泳ぐように一気に森の中に侵入しようとしたが、突然現れた気体モードのシールドにぶつかり、一気に霧散化してしまう。

 武霊に対して使ったのは、最大硬化&攻撃性を持つ気体モード。

 不可視の力場が常に放出され続けている性質上、そのまま突っ込めば、弾かれ、突入力が強ければ大ダメージを受けるということだ。

 他の武霊達も、霧散化とまではいかないが、多少なりともダメージを受けているようだった。

 とはいえ、武霊使いに対しては、そんな危険なモードを使うわけにはいかないので、柔軟性がある液体モードを使用している。

 不可視の力場が流動的に展開されている性質上、勢いよく突撃されても、優しく受け止めることができるのだ。

 まあ、そうは設定していても、実際にそうなるかどうかは若干不安だったので、チアリーダーらしき子が突撃してくる様子を観察してみる。

 彼女は勢いよく液体モードシールドに突っ込んだため、ぐにょんした力場にからめとられるように空中に浮いた。

 そこまでは予定通りだったのだが……ん~液体モードの感覚が気持ち悪かったのか、物凄く嫌そうな顔をしてもがき始めるのに、ちょっと、いや、なんかかなりの罪悪感が……いや、本当にすいません。

 と心の中で謝りながら、シールドに捕まった武霊使い達に対して、スナイパーサーバントで睡眠弾(スリープ)を撃ち込み、退場して貰った。

 が、メイド&執事コンビは、何故から睡眠弾(スリープ)を撃ち込んでも、弾丸が炸裂しない。

 よく見ると、執事の後ろにいる同じ執事服を着た右目に眼帯を付けた青年が、その両手を二人の頭上に向けていた。その手の先には、シールドの範囲外で止まっている睡眠弾(スリープ)がある。

 この武霊、超能力者。念動力の使い手と考えるべきか。あ、いや、よくよく見てみれば、昔売られていた超能力物で執事物なライトノベルの主人公じゃないか。

 確か念動力以外にも色々な超能力が使え、眼帯を外すとリミッターが解除できるって設定だったか?

 そう思った瞬間、彼らの近くに配置していたスナイパーサーバント達の反応が次々と消失した。

 その上空に飛んでいるスカウトサーバントの視界で確認すると、木々の上を縦横無尽に飛び跳ねている茶柴犬耳犬尻尾を持ったメイドさんがいる。

 手に伸びた爪で枝葉の中に隠れているスナイパーサーバント達を切り裂く。

 こっちは昔あった犬耳メイドの漫画の主人公か……というか、あの作品、こんな攻撃的だったか?

 思わず眉を顰めながら、離れた位置にいるスナイパーサーバント達に指示を出して、迎撃させようとした。

 次の瞬間、ぴくっと犬耳が動き、爪を引っ込めて、手を広げた。

 その意図を測りかねていると、虚空から自動拳銃が現れ、その両手に収まった!?

 こっちが狙撃するより犬耳メイドの方が早く弾丸を撃ち出し、瞬く間に離れた位置にいたはずのスナイパーサーバント達が破壊されてしまう。

 こ、これは明らかに漫画の設定にはない武霊能力だな。つまり、なにかしらのプラスαなイメージが加わっているってことか……なるほど、見た目だけに囚われて武霊能力を推測するのは危険なんだな。個々人が根底に持っているイメージは、なにも一つの作品、一つの事柄だけではなく、複合的な場合もあるというわけだ。ふむ。勉強になった。

 メイドと執事の武霊達によって穴が開いた森の縁に、他の子達が殺到する。

 他の場所からのサーバントが集まり、侵入経路を閉じられるのを嫌ったか、勢いよく森の中に入る武霊と武霊使い達。

 だが、それはちょっと軽率過ぎやしないか?

 俺の苦笑と共に、次のトラップが発動する。

 森の木々によって侵入ルートが制限されているため、自然と別々に塊になる武霊と武霊使い達。

 その塊の真ん中、あるいは近くで、ポンとなにかが地面から撃ち上がる。

 機雷地雷(フェアリー)だ。

 武霊に対しては、様々な耐性があることを想定して、衝撃弾(ショック) 冷凍弾(コールド) 火炎弾(ファイア) 電流弾(サンダー) 光線弾(レーザー) 重力弾(グラビティ) 貫通弾(ペネトレーション) 力場障壁貫通弾(シールドペネトレーション) 爆裂弾(エクスプロージョン) 消滅弾(エクステンション)などなど、これでもかってぐらいに攻撃的な物が炸裂するようにした。

 武霊使いに対しては、閃光弾(スタン) 睡眠弾(スリープ) 催涙弾(ティア) 発煙弾(スモーク) 低威力設定衝撃弾(ショック) 低威力設定電流弾(サンダー) 粘着弾(アドヒージョン)などなどの、無力化する非殺傷系が炸裂するようにしている。

 森の各地で電撃やら、冷気やら、炎やら、なんかよくわからないものが炸裂しまくり、混乱し、誰かが恐怖のあまりに泣き叫ぶのが聞こえた。

 ……もしかして、やり過ぎ……か?

 阿鼻叫喚の渦と化している森エリアに、顔が引きつって、頬を掻いてしまう。

 考えてみれば、昨日の棟群より、森の中は不意打ちさが増すだろうし、常に使われている生活感漂う建物と違って、人が普段は通らない不気味さが存在する。

 そんな所で、予測不可能な不意打ちを食らいまくれば……まあ、誰だって混乱するか。しかも、相手はそこら辺の知識を持っていなさそうな総務グループだ。昨日の主な相手だった文化系三組織だったら、こういう森の中での戦い方やトラップなどを想定する輩もいただろう。サバゲー部とか? だが、彼らは昨日の内に退場して貰っている。そこら辺の各生徒組織の性質を考えて、戦う舞台を設定し、どんな作戦で行くかを考慮しているのだから、こういう結果は、上手く行ったと喜ぶべきだろう。

 まあ、それでも、もうやだぁーとか、やり過ぎだ馬鹿! とか、森の中に配置したスカウトサーバント越しに聞くと、どうにも心が痛む。

 とはいえ、一対多数だし、昨日一昨日の俺の行動を見れば、個人的にはこれぐらいのことをやることは想定して欲しい物だと思う。場所とやり方は違うが、やっていることはそう違いはないと、思うのは仕掛けている側だからだろうか?

 などと思わず余計なことを考えた時、多分、油断していたんだろう。

 不意に俺の前にクラスメイトコンビが現れた!?

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