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武装守護霊  作者: 改樹考果
間章その四『逆鬼ごっこ二日目』
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三、『あまり感心しないかな?』

 建物群に入ると同時に、ジャミングスモークを散布。

 白い煙に紛れながら、ガトリングミサイルポット(ウロボロス)を連射させる。

 小型ミサイル群で追ってくる子達を牽制しながら、上空に待機させているサーバント達を次々とジャミングスモークの中に突入させ、事前に考えた通りに彼らを配置させた。

 視界がクリアになる頃には、俺もオウキも隠れているので、追ってきた子達は右往左往し始める。

 姿が見えないからじゃない。普段見慣れた景色であるはずなのに、どこかに違和感を覚えているからだ。

 なんせ、プロジェクションサーバント・ドッペルゲンガーサーバント・スピーカーサーバント・アーキテクトサーバントなどで虚実入り混じった偽物の建物を作り出しているんだからな。

 勿論、不自然にならないように、道や周りの木々や鉢植えなどもちゃんと再現している。

 更に最初はそれほど変化なく、奥へ奥へと行くほど大きく変化させているので、よくよく注意しなければ、違和感の正体に気付かないだろう。

 そして、奥に入り、気付いた頃には、自分がどこにいるかわからず、混乱の坩堝に陥ってしまうわけだ。

 そんな予想通りに混乱し始める子達の様子を脳内ディスプレイで確認した俺は、次の指示を『ガスサーバント』達に出した。

 偽物の建物の中に隠したそいつらは、見た目は普通の小型円盤だが、よく見ると無数の細かい穴が開いており、名の通りそこから内部で生成した様々なガスを噴霧することができる。

 で、今回使っているのは、睡眠弾(スリープ)にも使われている無色透明なガスだ。

 つまり、混乱している隙に、子達を眠らせようとしていたわけなんだが……ん~やっぱり昨日の戦いを見ていれば、これを警戒するのは当たり前か。

 脳内ディスプレイによって映し出される建物群に散らばっている子達は、ガスの範囲内にいるというのに眠る様子は全くなかった。

 妖精のような武霊を中心にしたグループは、その周りに風を纏わせているようなので、それで防いでいる。のはわかるが、そんな風にわかりやすい防御の仕方をしている者達ばかりじゃない。見た目の変化が全くない連中もいるので、ん~さてさて、どんな能力を使っているのやら……

 そんな風にちょっとワクワクしながら、睡眠ガスが建物群全域に散布し終わるのを確認。

 では、止めと行きますか。

 思わずニヤッと笑ってしまうと同時に、俺は同時並行で設置していたトラップを起動させた。


 「「こ、これは……」」

 校内放送で早見さんが絶句しているのを聞きながら、脳内ディスプレイで子の残数を確認する。

 スカウトサーバント達から集まってくる情報によると、少なくとも小中高大統合部活同好会棟群内にはいないようだ。

 だが、黒丸君のルシフェルの例も考えると、もうちょっと隠れてようかな……

 なんて思いながら、アーキテクトサーバントで創り出したプレハブ小屋の中に俺はいる。

 制限時間とかを考えるのなら、残り十分ぐらいなので、このままやり過ごしてもいいだろう。

 ん~それにしても、まさかこんなに上手くいくとはな……

 俺が用意したトラップは、オウキの腰部簡易格納庫から出すことができる白銀の楕円形球体・『地雷機雷(フェアリー)』。

 これは、地面に投げ込むことで減り込んで地雷になり、空中海中に投げることで機雷になる汎用設置兵器。弾丸と同じシステムが適応でき、様々な効果を込めることができる。しかも、内蔵量が弾丸より多いので、単純な威力なら銃器より勝る。また、爆発のタイミングは、こちらからの合図で爆発する『指示式』・本体に触れる事で爆発する『接触式』・一定の範囲に入ると爆発する『探知式』・一定の時間が経つと爆発する『時限式』・対象を追尾して爆発する『追尾式』などが選べる優れもの。

 これをサーバント達によって偽物の建物で埋め尽くしている建物群の中にばら撒き、睡眠ガスが埋め尽くされた瞬間に、指示式で閃光弾(スタン)を一斉に爆発させ、生じた強烈な閃光に驚いた鬼達が咄嗟に建物の影に隠れると、そこに設置していた接触式の粘着弾(アドヒージョン)が爆発し、その場に固定させると共に、追尾式の電流弾(サンダー)が起動し、動けなくなった鬼は勿論、辛うじて逃れられた鬼達へと襲い掛からせ、電流によって気絶させ、慌てて逃げる鬼達の先に起動させた探知式の衝撃弾(ショック)によって吹き飛ばしたり、動きを阻害させたりして、意図的に特定の場所に集まるように誘導し、時限式の力場障壁貫通弾(SP=シールドペネトレーション)で睡眠ガスを防御していた障壁を無効化し、一気に全滅させた。

 正直にいえば、全部作戦通りにことが運び、ここまで上手く行くだなんて思いもしてなかった。

 精々、半分を削れればいいだろうって思っていたんだが、まさか突撃してきた全員がものの見事に全滅するとは、予想外の一言に尽きる。

 しかし……どうにもゾクゾクっとしてしまうのを止めれらないな。これは少しヤバい。良くない喜び方だ。なんというか、どうにも武霊は良くない。本来の俺なら、自分が考えたことが百パーセント成功することなんてまずない。いや、そもそも成功したことなんて一度もなかったはずだ。良くて失敗はしなかった程度であるはずなのに、そこにオウキをプラスαするだけで、これだけの成果が上がる。素直に喜んでもいいかもしれないが、それを証明しているのが戦いであり、町の外には持ち出せないものであることが、どうにも素直に喜ばさせない。というより、喜んじゃいけないんだろうな……今後とも頼ることになる力であると考えるなら、ネガティブ過ぎるのは良くないが、ポジティブ過ぎても良くないだろう。これはこれ、俺自身と切り離して考え、操るべきだろう。俺であって俺でない力の成果なのだからな。

 そう考えを巡らせると、ゾクゾクと感じていた感覚が急に消えた。

 うん。これでいい。調子に乗るだなんて俺らしくないし、らしくないことをするってことは、それだけ失敗し易い。失敗経験の多い俺からすれば、それは当たり前のことだ。

 だから、次の瞬間に起こったことも、驚きはしたが予定調和って感じだった。

 不意に、俺とオウキが隠れていたハリボテの建物が吹き飛ぶ。

 吹き荒れる黒い衝撃波には、見覚えがあった。

 「くっくっく! うはははははははうっごは! ごほご……はあ……」

 上空から聞き覚えのある高笑いが聞こえ、咳き込むのは、確認するまでもなく、どう考えても黒丸君だな。

 「うん。さ、流石は我が宿敵と書いて友。見事の聖戦(ジハード)だっだぞ!」

 若干めんどくささを感じながら、声のした方へと見上げると、やっぱりそこには顔に片手を置き、もう片方の手で十字になる様に腕を重ねてポーズしている黒丸君がいた。

 そのポーズを維持するためか、組体操のように黒丸君はルシフェルの膝に乗り、ルシフェルは黒丸君の膝を持って空中で器用に支えている。

 激しく翼を動かしているのがなんとも微笑ましいというか、黒丸君が出したい雰囲気をぶち壊しているというか……なんであれ、昨日直接戦ったことがあるからか、俺の作戦に引っ掛からなかった訳か。

 とはいえ、それはこっちも同じ。一度戦ったことがある以上、手の内はある程度分かるし、配置しているトラップもまだ残っている。

 例え、昨日の戦いで黒丸君が自分の手の内を全て見せていなくても、武霊ルシフェルの容姿や能力・武霊使い自身の好みの方向性から、ある程度の予測は立てられる。仮にそれが外れていたとしても、こちらも手の内を全て明かしているわけではないし、見せた手の応用も使えるだろう。

 問題は、ルシフェルが妙に丈夫なことか……あまり長引かせると明日以降に響きそうだ。今日見せる予定以上の手札は切りたくないしな……

 「えっと……もしもし?」

 俺が黙っていることに不安を感じたのか、テンションを落として声を掛けてくる黒丸君。

 もしかして、なんか熱い言葉のやり取りとかでも期待していただろうか? 別に趣味が完全に異なっているということは武霊から考えてなさそうだが、だからといって合わせてあげるほど一致はしていない。むしろ、ちょっと引いている部分があることが正直な所か……まあ、だからといって、特段馬鹿にする気にはなれないな。ある意味、俺以上に架空を楽しんでいるといえるから、羨ましく見えなくもない。が、やっぱり乗ってあげるほど気にはなれないな……というか、なんで攻撃してこないんだ?

 困ったように沈黙してしまった黒丸君に、俺はため息一つ吐く。

 まあ、流石に昨日と同じ轍は踏まないか。

 実は、黒丸君、というか、ルシフェルの周りには、既にステルスサーバントで隠したシールドサーバントを配置しており、ハリボテの建物を壊したあの羽攻撃をしてきたら、速攻で昨日と同じ展開にしてやろうと思っていた。まあ、だからこそ、わざわざそうし易いように無反応でいたんだが、ん~露骨過ぎたか? まあ、いいや、なんであれ、速攻で終わらそう。

 そう思って、遠距離に設置しているスナイパーサーバントに指示を出す。

 向こうが攻撃を躊躇っている間に、狙撃でルシフェルだけを撃ち抜こうと考えたわけなんだが、その瞬間、唐突に地面が爆発した。

 ただし、俺の足下ではなく、黒丸君達の足下がだ。

 咄嗟にルシフェルが黒丸君ごと自らを羽根で覆ったため、爆発に巻き込まれて吹き飛ぶだけで済んだようだが……

 「あまり感心しないかな?」

 その声は、下から聞こえてきた。

 「わざと反応しないことによって、注意を自分に向け、段階的な攻撃をする。戦術としては正しいけど、少し冷徹過ぎる気がするよ」

 「……そう言いながら、自分だって俺の策に便乗して、黒丸君をこの場から吹き飛ばしましたよね?」

 「確かにそうだね。でも、彼を倒すのは僕としても骨が折れるから。相性の問題もあるけど、倒してはいないから、君よりはましかな?」

 「……五十歩百歩でしょうね」

 「だね」

 そんな会話をしながら、相手は一向に姿を現さない。

 声が聞こえる地面は、芝生だ。今いる場所一帯は、人工島の中央にあるためか、それともなにかしらの理由があるのか、普通に土が使われているエリアのようだった。

 そのため、先ほどの爆発は、火によって起こされたものというより、土を使った……なるほど、

 「……土使い」

 「ご名答」

 そう答えた瞬間、俺の周囲の土が一気に盛り上がり始める。

 まずい! と思った時には、既に天井が形成され、ドーム状の土壁の中に閉じ込められてしまった。

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