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武装守護霊  作者: 改樹考果
間章その三『逆鬼ごっこ一日目』
60/85

五、『宣言してやる』(終)

 黒丸君&ルシフェル戦後、俺とオウキは特に障害なくゴールできた。

 拍子抜けな感じだが、事前に聞いていた人間タイプがよく持っているという特殊な武霊能力『テリトリー』を警戒し過ぎたか? いや、ただ単に、同時並行で行っていた作戦が上手く行き過ぎただけかもしれない。

 他のサーバント達を囮にしつつ、ステルス機能やステルスサーバントで姿を隠したスカウトサーバント達で不意打ちを行う。

 至極単純な作戦だったのだが、これが面白いように効果を発揮し、学園の各所に隠れて俺を捕まえようとしていた鬼達をバンバン倒していた。

 ん~まあ、正直な所、テリトリーって特殊武霊能力がどんなものか体感してみたかったんだが、その隙をこっちが与えなかったのだからしょうがない……なんであれ、どこから攻撃されるかわからなければ、混乱するのは当然だ。特に相手が統率のとれていない集団であるのなら、それは理不尽なまでに効果的だったんだろう。

 あんまりにも策が上手く行き過ぎるのは、個人的には色々と困るのだが……まあ、どうであろうと、これで単純な不意打ちは使えないと考えるべきだろう。

 こういうのは種がばれればあっさり対応されるのは、よくある話だ。しかも、多くの目に晒されている逆鬼ごっこであれば尚更と考えないといけない。であるのなら、問題なのは明日以降ということになる。

 ん~戦えば戦うほどこっちの手の内が明らかになり、傾向も読まれてしまう……だとすれば、やっぱり、念には念を入れて早々に手を打っとくべきか……はぁ……憂鬱だ。

 これから自分がやる自分で考え付いてしまった作戦を考えると、どうしても深いため息が出てしまう。

 正直やりたくない。だが、やらねば数の暴力に負けてしまう可能性が大だ。

 そんなことを考えながら、オウキに『アーキテクトサーバント』を出させる。

 ライト付きの工事用ヘルメットに見えるサーバントで、内部には無数のアームが収納されている。そのアームの先端には、ナノマシン注入器や手・溶接器などにすることができる機能が付いており、それらを使って建物の建造や、修復、更にナノマシンにより様々な物質を変換などが可能。それ故に、必要な量の物質が在れば、どんな場所にでもどんな物でも建てることができる優れもの。

 とはいえ、今回は修復なわけだが……まあ、同じことができるサーバントは他にはないので、彼らを壊した場所に飛ばしつつ、学園大門の前で、腕を組んで待つ。

 逆鬼ごっこ終了を知らせるチャイムは既に鳴っており、琴野さんによる一日目の終了宣言も終わっている。

 なのに……遅いな……時間が経てば経つほど、覚悟が薄れ、胃がキリキリし始めるんだだが……

 今日の逆鬼ごっこを振り返っている校内放送を聞きながら、腹を擦っていると、ようやく、

 「「はいは~い♪ それでは勝利者インタビューに行ってきますねぇ~」」

 と言う早見さんの声が聞こえ、俺は深くため息を吐いた。

 直ぐにインタビューがあるから、帰らないでね♪ っと言っていた癖に、待たせないでほしいものだ。

 心の中で愚痴を言っていると、俺の前に早見さんがカメラマンと一緒に転移し来た。

 さあ、上手くやれよ俺!

 気合いの言葉を心の中で口にすると同時に、早見さんがその手に持っているマイクを俺に向ける。

 「凄かったですね。まさか、あれだけの数の参加者をほとんど撃退して、余裕でゴールしちゃうなんて、いやいや、今でも信じられません。この分だと明日もなんとかなるかもしれませんが、明日は学園の中で最も勢力がある文化系三大勢力が一辺に出てきますから、より厳しくなると思いますよ? 夜衣斗君はそのことに対してど――」

 次々と言葉を口にする早見さんの言葉を遮って、前もって用意していた言葉を俺は口にした。

 「っは、学園の武霊使いがこの程度なら、明日の逆鬼ごっこはもっと短く終わらせられるさ」

 「え? あれ? え? キャラ違くない?」

 俺の強気な発言に、頻度が低いとはいえ、会話を交わしたことがある早見さんは戸惑う。が、それを無視して、カメラ目線で、極力不敵になるように努め、言葉を続ける。

 「宣言してやる。明日は、今日の半分の時間で終わらせてやるよ」

 そう言って、ニヤリと笑う。っく! 滅茶苦茶恥ずかしいが、耐えろ俺!

 「っで、出ました! とんでもない宣言が出ちゃいました! なんと夜衣斗君は、明日の逆鬼ごっこを今日の半分の時間で終わらせるそうです!」

 カメラに割って入って、そんなアナウンスをする早見さんは、脇に手を回し、背後の俺だけにわかるようにグーサインを出した。

 いや、グーサイン出されても、あなたのためにやったんじゃないんですけどね。

 そう思いながら、俺はカメラに映らないように深いため息を吐いた。


 あ~ドキドキした。キャラじゃないことをするのは緊張するな……

 そう思いながら、俺は学園大門前で、美羽さんを待っていた。

 未だに心臓の鼓動が収まらないのは、ヘタレの証拠だろう。まあ、ヘタレにしては上出来な演技力だったといえるが、二度としたくない。

 情けないことこの上ない感想を抱いていると、学園庭園にある地下階段から美羽さんが現れるのが見えた。

 校内放送では、俺へのインタビューから戻った早見さんが、村雲と今日の逆鬼ごっこの総評などをしている。が、みんなそれにはあまり興味がないらしく、続々と階段から出て来て下校し始めている。

 そんな連中のほとんどが、怒ったような目線を送って来ているので……まあ、概ね予定通りだが……かなり居心地が悪い。せめて待ち合わせ場所はここじゃない方がよかったんだろうか? いや、昨日までの考えだと、わざとここで姿を見せて、インタビューで生じた怒りを助長させるつもりだったわけだし……

 なんて意味のない思考をしている間に、美羽さんが小走りで俺の前に立った。

 「えっと……とりあえず、一日目クリアおめでとうございます夜衣斗さん」

 そう言いながら俺に微笑んでくれた美羽さんが、両手を握り、ブンブンと上下に振り始める。

 「とても凄かったです! 流石としか言いようがないですよ!」

 思い出したかのように興奮しながら、そんなことを言ってくれるが、そのテンションにはちょっと俺は付いていけないな……黒丸君以外は大体予定調和だったし。

 「……えっと……まあ、ありがとうございます」

 なので、どうにもしどろもどろに返答してしまうと、美羽さんは手振りを止めて苦笑した。

 「やっぱりこっちが素なんですね。でも、なんであんな挑発をしたんです?」

 まあ、早見さんでさえ違和感を覚えたのだから、彼女より長く一緒にいる美羽さんだって気付くか。

 「あんなことを言っちゃったら、明日の逆鬼ごっこ、今日の比じゃないほどに物凄い勢いで襲い掛かってきますよ?」

 「ええ、そうでなくては困るので」

 「へ?」

 ポカーンとする美羽さんに、俺は思わず微笑んでしまう。

 「……まあ、明日をお楽しみ」






  間章その三『逆鬼ごっこ一日目』終了


   次章


    間章その四『逆鬼ごっこ二日目』


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