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武装守護霊  作者: 改樹考果
間章その三『逆鬼ごっこ一日目』
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二、『逆鬼ごっこのスタートです!』

 美羽さんと琴野さんの怪獣大戦争は、ほどなくして登場した村崎さんにより、互いが氷漬けにされることで止まった。

 その後に村雲から聞いた話によれば、二人の喧嘩とその決着方法は学園の名物の一つとして扱われているらしく……道理で逃げるのが上手いと思った。

 ちなみに俺は、制服偽装のPSサーバントを着ていたので、吹き飛ばされても大してダメージを受けずに済んではいる。

 が、この騒動で昼飯を食いっぱぐれてしまったんだよな……おかげでお腹が鳴らないかと戦々恐々な午後の授業だったが、まあ、なんとか恥をかかずに済んだ。とはいえ、こう空腹だと、今からやる逆鬼ごっこに影響が出てしまわないだろうか?

 なんて心配しながら、俺は高校校舎の下駄箱にて逆鬼ごっこ開始の合図を待っていた。

 なんでもスタートの場所は下校時に行われるという理由で、その生徒が学んでいる校舎の下駄箱から始めるのが通例になっているそうだ。

 まあ、ゴールが学園大門であることを考えれば、その選択は自然な気がしないでもない。

 「夜衣斗さん」

 不意に背後から美羽さんに声を掛けられた。

 振り返ると、どこかしょぼんとした様子で、その手にはチョコレートなどのお菓子を持っている。

 「あの……昼間はすいませんでした。その、美羽、沙羅ちゃ……コトサラを前にしちゃうと、なんでかおかしくなっちゃうんです」

 ふむ……今、下の名前でちゃん付けで言い掛けたな……なるほどね……まあ、俺が深く立ち入るべきことじゃないしな……

 「それで、これは吹き飛ばしちゃったお詫びです」

 そう言って、手に持っていたポテトチップスやチョコレートなどのお菓子を、俺に渡してくれた。

 「お昼、食べ損ねちゃってますよね? これぐらいでお腹の足しになるかはわかりませんが、食べちゃってください」

 「……ありがとうございます」

 「じゃあ、美羽は地下観覧場で応援してますから、絶対に捕まらないでくださいよ」

 「……善処します」

 俺の頷きに、美羽さんはにっこりと笑い、

 「っで、美羽が参戦する日に捕まってください」

 そんなことを言って地下へと続く階段へと消えて行った。

 苦笑するしかない正直な言動に、俺は頬を掻きつつ、貰った菓子の封を開ける。

 さて、空腹問題もこれである程度改善されたことだし……

 「オウキ」

 とりあえずチョコをポリポリと食べながら、俺はオウキを通常具現した。

 勝つための準備をしようか。


 「「今、イベント運営委員会の最終確認が終わったとの報告がありましたわ」」

 その琴野さんの放送を聞きながら、俺は下駄箱のガラス扉越しにグラウンドを確認していた。

 野球選手のウチローやプロゴルファーの石渡遼・スケート選手の浅塩未央などのスポーツ選手が基になった武霊達が百体以上の存在しており、その近くには当然それぞれの生徒組織を象徴する格好をした武霊使い達がいた。

 直前に聞いた追加説明によれば、逆鬼ごっこの子側には、鬼との区別を付けるために自分が所属する部活や同好会のユニフォームとかを着なくてはいけないルールになっているらしい。

 まあ、俺としては区別し易くていいっちゃいいが、ユニフォームとかない文化部とかはどうするんだ?

 などと思いながら、武霊合わせて二百人近い人数を一人一人確認してみる。

 一瞥するだけでも、サッカー部や野球部などの分かり易い格好をしている人達は勿論、上半身裸もマッチョマンや、マスクマンなどの見るからに生身で戦いたくない人達や、インディアンみたいな恰好をしたなんの競技かわからない人達もいたりと、まあ、多岐に渡っているというかなんというか……少なくとも普通の鬼ごっこだったのなら、俺に勝ち目はなさそうな感じがする。

 それにしても……ふむ……村雲から聞いた情報通り、本当に今日は運動系しか出てきていないみたいだな。

 村雲曰く、星波学園の生徒組織は、八つの派閥に分かれているらしく、一種の勢力争いのようなことを日々しているらしい。

 とくに部費などに直結する武霊使いの確保は、争いの火種としては十分過ぎるほどなので、一定の統率と各派閥間の実力公平化などを配慮し、逆鬼ごっこでは参加できる順番を決めているとのこと。

 早い段階で逆鬼ごっこに参加できれば、その分だけ新たな武霊使いを確保し易いのはわかるが、ん~単純に早ければいいってもんじゃないと思うんだけどな? まあ、それぞれの思惑や考えがあって、今の形になっているんだろうが……

 今日出て来ているのは、運動系生徒組織の集まり『スポーツ同盟』。

 武霊のタイプが人間タイプであるが故に、総力では最も劣ると考えられているらしいが、油断は禁物だ。なんせ、人間タイプには特殊な(・・・)武霊能力(・・・・)が発現している個体もいるらしいからな。

 「「それではこれより逆鬼ごっこの開始を正式に宣言しますわ。以降はイベント運営委員会・審判部・マスメディア部の三生徒組織により、このイベントは管理されますので、参加者並びに観覧者は彼らの指示に従ってくださいですの」」

 その琴野さんの言葉が終わると共に、校内放送が切り替わり、早見さんの声が聞こえ出す。

 「「「はいは~い♪ こちらマスメディア部部長芽印ちゃんだよぉ~♪」」

 ん? なんか昨日とキャラが違くない?

 「「そしてこちらが、今回の逆鬼ごっこゲスト解説者村雲勇人君です。はいは~い♪ 拍手拍手」」

 ……は? なんで村雲が? 速攻で帰ったんじゃないのか?

 「「なんで俺が解説なんてしにゃきゃならねぇ」」

 明らかに不機嫌そうな声に、本意じゃないのは明らかだな。

 「「え~だって、村雲君ぐらいしか武霊に詳しくて、どこの部活にも所属していない人がいないんだもの」」

 「「アホか! お前だって十分詳しいだろうが!」」

 「「え~芽印ちゃんはわかんな~い」」

 「「つうかさっきからなんだそのキャラは! きしょいから止めろ!」」

 「「いいじゃない、たまの実況中継でテンションが上がってんのよ!」」

 「「知るかボケ!」」

 「「まあまあ、こんな可愛い子と実況中継出来るんだから、こんなに嬉しいことはないでしょ?」」

 「「だから俺はこれからバイトがあるって言ってんだろうが!」」

 「「あ、それなら、うちの部から代理の者を行かせたから安心して」」

 「「はあ!?」」

 なんだ? この漫才みたいなやりとりは……

 「「なお、理由は不明ですが、与えられるはずの一ヵ月の猶予を断った夜衣斗君は現在、下駄箱にて何やら準備をしているようです。ちなみに、下駄箱の映像は鬼側の不利になると判断されたため、審判部によりマスメディア部のカメラ班は締め出しを喰らっています。ッチ! ケチが! ……っで、解説の村雲さん。夜衣斗君はなにをしているか予想できますか?」」

 「「お前、もうちょっと放送されてるってことを意識しろよな……ガラ悪いぞ」」

 コロコロと口調を変える早見さんに、呆れた口調の村雲は、ため息を一つ吐き、少し考え、

 「「多分だが……いや、まだスタートしてない段階で、あれこれ言うのは止めよう。数の上で圧倒的に不利な黒樹をこれ以上不利にさせるわけにはいかない」」

 「「ケチケチすんなよ! なんのために解説として呼んだと思ってんだ?」」

 「「知るか! 大体なぁお前は――」」

 不意に放送が切れる。

 この唐突感だと……顧問の先生にでも注意されているんだろうか?

 そんなことを思っていると、グラウンドの生徒達が妙にざわつき始める。

 村雲に聞いた話では、今までの逆鬼ごっこでは、多くの場合は、開始の宣言と同時に、スタートすることが多いらしい。

 つまり、開始が宣言されても、一向に下駄箱から俺が出てこないことに疑問を感じているんだろう。

 ん~とはいえ、時間としてはそんなに長くはないとは思うんだけどな……もうちょっとで準備が終わるから待ってほしいものだ。

 「「これは一体どういうことなのでしょう? 準備と言ってもこれほど時間が掛かる物なのでしょうか? それとも、まさか今更怖気付いた?」」

 「「そんな玉が――」」

 ようやく放送が再開し、妙に丁寧な口調になった早見さんのコメントに、村雲がなにかを言おうとした瞬間、下駄箱の観音開きのドアが一斉に開く。

 自分が命令していたことなのに、思わずビクッとしてしまい……恥ず……

 赤面している主を余所に、背後にいるオウキに命令されたサーバント達が一斉に外へと飛び出した。

 俺の頭上には、天井が見えないほどのサーバントによって埋め尽くされている。

 それが一気に外に出れば、

 「「「え?」」」

 早見さんと村雲が同時に、疑念の声を上げた。

 現れたサーバント達に反応した武霊の何体かが、砲丸投げや槍投げなどによる遠距離攻撃をする。その瞬間、その武霊の武霊使いの姿が掻き消え、同時に攻撃した武霊が霧散化。

 「「えっと……これって要するに逆鬼ごっこが始まってないのに、子の武霊が攻撃したためにルール違反として扱われたってことですよね?」」

 「「まだスタート合図のチャイムは鳴ってなかったから。『スタートの合図がある前に攻撃を行うと即退場』ってルールが、確か在ったはずだ」」

 「「つまり、それを夜衣斗君は突いたと?」」

 「「まさか、これもただの準備だろ? 退場になった連中はただ単に間抜けなだけだって」」

 「「なるほど」」

 ん~流石はマスメディア部の部長と、元武霊ランキングトップランカーだな。

 まさしくその通りな解説に感心しつつ、俺はオウキを引き連れて、下駄箱から一歩踏み出した。

 その瞬間、スタートのチャイムが響き渡る。

 「「さあ! 今度こそ、逆鬼ごっこのスタートです!」」

 その早見さんの言葉と共に、俺の逆鬼ごっこは始まった。

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