いいわけカタストロフィ
「あかりさ、もしかして痩せた?」
「え、うそ、自分でも気付かなかったのに」
「ダイエットやめたんじゃなかった? 最近忙しいからとか言って」
「そうだったっけ」
「まあこれも健太のためだし。必要な投資ってことで」
「ていうか、必要悪?」
「あ、そだ」
「なに?」
「次の公演いつだったっけ」
「健太の? 来週の十四日だけど」
「まじかー。それじゃ間に合わないじゃん。行けないじゃん」
「そこまで頭抱えんでも」
「だって、名古屋で初公演だよ? あの名古屋で。古参で支えてきた私たちからすりゃ、絶対に外せないじゃん。もはやファンとして失格」
「大げさだなー」
「大げさじゃありません」
「思ったんだけどさ」
「出た、あかりの『思ったんだけどさ』発言」
「推しって、なんでこんな尊いんだろうね」
「それは本当にそう」
「いや、ありきたりだけどさ、推しって神じゃん。ゴッズでアラーじゃん」
「意味被ってるけど、まあ、そうね」
「パーツや身動き一つとっても愛おしいっていうか、もはや恐れ多い? っていうか」
「原子レベルですごいよね」
「そうそう、原子レベル。というか核だわもう」
「……そういう表現はちょっと」
「あ……」
「うん。……ね」
「……ごめん」
「…………」
「で、何の話だったっけ?」
「推しは尊いって話」
「大した話じゃなかったわ」
「あは、ウケる」
「ヒカリ、最近まつエク行ってる?」
「行ってるよ。外見に割く時間はやっぱ必要だからね」
「女子たるもの、一切の余念を残さず!」
「まあそゆこと。昨日は服買いにモールにも行ったよ」
「どこのモール?」
「この前あかりと行ったとこ」
「あそこ!? 改装とかしてなかったっけ」
「今は終わって、更に他の施設と統合? みたいなのされてる」
「そうなんだ。へぇ、ユリも誘えばよかったのに」
「……あかり、もしかして知らない?」
「え? 何?」
「ユリは二日前の実験で死んだよ」
「あ……」
「……うん」
「へぇ……」
「…………」
「……なんで死んだの」
「デーモンコアみたいな部品あるじゃん」
「あの不気味なやつね」
「そう。それの不具合とかで、放射線が漏れて……みたいな」
「そうなんだ」
「うん」
「苦しくなかった?」
「私はその場にいなかったから。知らない」
「ていうかうちら、何でこんな研究手伝ったりしたんだろうね」
「大学のサークルで――」
「それって建前じゃん。誘われて断れなかったとか、そういう問題じゃないと思うんだよね。だって、この世界全体の問題じゃん」
「第三次世界大戦……そこら辺の過激派デモが言うようなホラ話だと思ってたけど」
「うちらには関係ないと思ってた」
「ていうか、ずっと関係したくなかったわ」
「それな」
「うん」
「…………」
「俳優・葉月健太は世界一」
「そ れ な」
「あははっ」
「もー、誤魔化さないでよ」
「私ってさ、なんかシリアスな場面ほど変に面白いこと言いたくなっちゃうんだよね」
「意味わからん。宇宙人か」
「地球人ですが何か?」
「こんな地球人がいてたまるかっ」
「あと何分?」
「五十八秒」
「おー、迫ってきてんね」
「何その年越しライブのカウントダウンみたいな言い方」
「心境としてはそれに近いよ」
「うちらが作った核爆弾が全世界に投下されるって、なんかさ」
「実感湧かない」
「そう。それ」
「ここまできてか、って感じだけど」
「あのさ」
「何?」
「うちらって、完全に悪者じゃん」
「そうだね。全世界の敵」
「だから、今ここで言い訳しておこうと思うんだ」
「ほう。といいますと?」
「全世界に向けての、地獄の閻魔様に向けての代弁? みたいな」
「弁解ね」
「そそ、弁解。世界を根本から変えちゃう存在って、意外と、うちらみたいにごく普通の女子なんだよ」
「その心は?」
「いつだって間違えるのは普通の凡人だし、テレビやメディアに出るような成功者とかも、意外とそういう人が多い。たっだ一歩を踏み出すのに躊躇がないってだけ。だから、もし万が一来世とかがあったら、今度は、本当に正しいことに一直線でありたいなって思う」
「あ、なんか地面揺れてきた」
「最後に一言いい?」
「どうぞ」
「葉 月 健 太 は 世 界 一 ッ !」
「あはははっw」




