表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
執着従者は魔女の傍から離れない  作者: カトレア


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/20

第7話「魔女の香りに溺れる朝」



――視点:ルカ



 目覚めた瞬間、世界はまだ夢の中にいた。


 魔女の館は朝でも静かで、窓から差す陽光すら、遠慮がちにカーテンの隙間から覗く程度。けれどそんなことは、今の僕にはどうでもよかった。


 リゼリア様の香りが、まだ体にまとわりついていたからだ。


 昨夜、彼女の唇が触れた。

 ほんの少し。なのに、その痺れるような感触は今も残っている。


 まるで、肌の奥に“刻印”でもされたかのように――

 僕の心も体も、リゼリア様に支配されている。


 


 「……ふふ。おはようございます、リゼリア様」


 僕は寝台の上で軽く伸びをして、外套を羽織りながら扉を開けた。向かうのは、いつものあの部屋――


 彼女が朝の茶を飲む、東の塔の窓辺。


 静かに扉を開けると、彼女はそこにいた。

 薄手のローブの下、長い髪をまとめもせず、紅茶の湯気に頬を染めて。

 まるで、神秘そのもの。



 「……朝から、ずいぶん熱っぽい顔してるわね、ルカ」


 「だって、リゼリア様の香りが、まだ残ってるから」


 「……っ」



 彼女の指が一瞬止まった。けれどすぐに何事もなかったようにティーカップを唇に運ぶ。

 その仕草が、たまらなく愛おしい。


 僕はゆっくり彼女に近づき、背後からそっと抱きしめた。

 肩越しに髪をすくって、その香りを吸い込む。



 「リゼリア様って、どうしてこんなにいい匂いがするんだろうね」


 「……魔女の秘薬を浴びているからかしら」


 「それ、僕にもちょーだい。じゃないと、一日じゅうこうして嗅いでるから」


 「……っ、ばか」



 リゼリア様の体温が、腕の中でわずかに上がるのを感じる。

 普段は決して乱れない彼女が、僕のせいで少しずつ崩れていく。


 それが、どうしようもなく、嬉しい。


 


 「リゼリア様」


 「なに」


 「もう、毒でも呪いでもいいから……もっと、僕を壊して」


 「……壊してどうするの」


 「あなたのものになれるなら、それでいい」



 沈黙。紅茶の香りがほんの少し濃くなる。

 そして彼女は、ふとカップを置き、静かに振り向いて言った。



 「……壊すのは簡単。でも、本当にわたくしのものになれる覚悟があるの?」


 「あるよ。だって、もう僕は――」



 彼女の唇が、そっと僕の額に触れた。


 その魔女の香りに、僕は完全に溺れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ