最終話「永遠に、あなたの傍に」
――視点:リゼリア・ローゼンブルク
⸻
朝日が昇りきった今も、私の身体には彼の熱が残っていた。
シーツの中、ぬくもりに包まれたその腕に抱かれながら、私は彼の鼓動を聞いていた。
――昨夜、何度も、何度も、私を呼び、私に堕ちた男の心音を。
「リゼリア様……まだ、眠くない?」
「あなた、もう何度目かわかってるの?」
「うん。でも……まだ、欲しいんだ。リゼリア様の全部が、もっと」
淫らな願いを、何の躊躇もなく口にするようになった彼は、もう“ただの従者”ではない。
私の身体を知り、魔力を呑み込み、心も支配してくる――まるで、魔に魅入られた精霊のよう。
「……じゃあ、もう一度、誓いなさい」
私は彼の頬に手を添え、艶のある声で囁く。
「あなたのすべては、わたくしのもの。わたくしの呪いと、悦びの檻に囚われて生きると」
彼の瞳が、獣のように潤んで光った。
「僕の命も心も、躯も、欲も、快楽も……全部、リゼリア様に捧げる。永遠に。絶対に」
その言葉に、私はたまらなくなった。
唇を塞ぎ、舌を絡め、指で彼の肌をなぞる。
シーツの奥で交わる熱は、魔術のそれよりも淫靡で、現実よりも甘やかだった。
「ほら……また、熱くなってる」
「リゼリア様が……そんな声で触れるから……」
「ふふ、かわいい。じゃあ、その熱――わたくしの魔力で、また溶かしてあげる」
唇を胸元に落とし、舌で円を描く。
彼の震える声が、甘くベッドの中で響いた。
まるで、呪文のよう。愛撫のたびに身体が跳ね、魔力が熱と快楽に溶ける音が、耳をくすぐる。
快楽に飲まれる彼の姿を見るたび、私の中の支配欲と愛情が共鳴する。
もっと与えたい。もっと堕として、悦びに泣かせたい。
――それこそが、魔女としての“愛”。
「リゼリア様、また、僕……でちゃっ...っ」
「ええ、いいわ。何度だって、何度でも――私の中に堕ちてきなさい」
最後の吐息が交わり、身体と心がとけ合ってゆく。
契約でも、呪術でもない、ただ淫らで、愛おしく、永遠を誓うような交わり。
私はこの男を選んだ。
従者であり、愛人であり、私の“悦びの器”となる唯一の存在――ルカを。
「……あなたは、永遠に、私の傍にいなさい」
「はい……リゼリア様。僕は、もうどこにも行けません」
夜も昼も、夢も現も、すべてこの魔女の腕の中。
淫靡に、甘やかに、永遠に――
彼は、わたくしのものとなった。