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100ものアレルギーを持つ女   作者: AQUARIUM【RIKUYA】
第1章:高校編
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第五話「崩れゆく均衡と、揺れる想い」


結衣は鏡の前に立ち、ふと自分の頬に浮かぶ微かな赤みを見つけた。

「また……アレルギー反応?」


ここ数日、彼女の体調は不安定だった。

気温の変化、花粉、疲労、そして、心の揺らぎ——

どれが原因かはわからない。ただ、どれも重なっていた。


芸能活動のスケジュールは過密だった。

撮影、イベント、リハーサル。

完璧を求められる世界の中で、彼女は自分の「制限」を押し殺していた。


自宅に戻っても、緋人とはすれ違いが続いていた。

彼は最近、グループ活動と個人仕事の両方で忙しく、家に帰るのは深夜。

朝も顔を合わせることが減っていた。


「……緋人くんは、気づいてくれてるのかな」


そう呟いた時、頭がふらつき、視界がぐにゃりと歪む。

重くなった身体をベッドに預けると、胸の奥がかすかに苦しかった。



数時間後、結衣は病院のベッドにいた。

意識を失って倒れたところを、マネージャーに発見されたらしい。


「結衣!」


駆けつけた緋人の声に、結衣はまぶたを開けた。

見慣れた彼の顔。けれど、どこか、遠い。


「ごめん、また心配かけて……」


緋人は、唇を噛みしめていた。


「違う。俺が気づいてなきゃいけなかった。……一緒に暮らしてるのに、何も見えてなかった」


その声は、怒りではなく、悔しさに満ちていた。


「緋人くん……」


「君のそばにいるって決めたのに……俺、守れてない」


その言葉に、結衣の胸がきゅっと締めつけられる。

心配をかけたくなくて、無理をしていた。

でもそれは、緋人の想いを裏切ることでもあったのかもしれない。



翌日。

医師から「しばらく芸能活動を休止した方がいい」と告げられた結衣は、迷っていた。


芸能の世界に立ち続けること。

大切な人と一緒に生きること。

その二つが、両立できるのかどうか。


結衣の目には、決意と不安が交錯していた。

そしてその手を、緋人がそっと握った。


「全部を守るのは難しい。でも、俺が傍にいる。絶対に、離れない」


その言葉は、どんな薬よりも結衣の心を温めた。


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