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100ものアレルギーを持つ女   作者: AQUARIUM【RIKUYA】
第1章:高校編
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第3話 「友に打ち明ける秘密と、潔癖症の壁」




***


校舎の廊下はいつもよりざわついていた。

新学期が始まって間もないが、真白結衣の周りにはいつも通りの静かなオーラが漂っている。

だがその表情は、いつもより少しだけ硬い。


誰にも言えない秘密。

学校での自分と、家や緋人と過ごす本当の自分とのギャップ。

その狭間で、彼女は今日も揺れていた。



「結衣、ちょっといい?」

クラスメイトの由香が、放課後の教室で声をかけた。

乃々香は優しい笑顔で、どこか心配そうに見える。


「うん、どうしたの?」

結衣はわずかに笑みを返しながら、ノートを閉じた。



「実は、聞きたいことがあるの……」

乃々香は少し躊躇いながらも、声を潜めた。

「結衣って、いつもキレイで完璧だけど……ちょっと変わってるって思うんだ。潔癖症とか、何か秘密があるのかなって」


それは誰もが薄々感じていたこと。だが、結衣の口からそれを聞くことは誰もできなかった。



結衣は深く息を吐き、目を伏せた。

「……実は、私……すごくたくさんのアレルギーを持っているの。卵や大豆に花粉、動物、ほかにも色んなもの……」

その言葉は、小さな告白だった。


「だから、外ではマスクをしたり、手を洗ったり、触るものにも気をつけている。……みんなには内緒にしてほしいの」



由香は黙って頷いた。

「わかった。秘密は守る。私も昔、喘息で辛い思いをしたことがあるから、少しだけ結衣の気持ちがわかるよ」

二人の間に、強い絆が芽生えた瞬間だった。



その日の夜。

結衣は緋人に電話をかけた。

「今日、由香に全部話したよ。秘密を打ち明けたの」

「それは良かった。でも無理はしないで。君は君らしくいていいんだ」

緋人の言葉が、結衣の胸に温かく響いた。



翌日、学校で。

結衣の潔癖症の壁はまだまだ厚い。

けれど、少しだけ人に心を開けたことで、孤独の影が和らいだ。


「私、少しずつ変わっていきたい」

そう誓う結衣の瞳には、これからの未来が確かに映っていた。


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