⸻ 第7話 心音(しんおん)の距離
真白結衣と逢坂緋人の秘密は、また一歩、崩れそうになった。
あの教室での出来事――二人が“夫婦”だと気づかれかけた瞬間、緋人は反射的に結衣の手を握った。
それは、ふたりの間の唯一の接点。けれどもその触れ合いは、彼らが抱える絶対的な壁をより強く実感させるものだった。
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放課後のキャンパスは、いつもよりも冷たく感じた。
緋人は図書館の奥の静かな席で、呼吸を整えながら結衣を待っていた。
結衣は、いつものように表情を整えながら、そっと席に着く。
「触れたね……」と、結衣は小さく呟く。
「悪いけど、あれは避けられなかった」
緋人の声には、守りたい気持ちが詰まっていた。
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二人だけが知るその秘密は、いつも静かな緊張に包まれている。
結衣の肌に少しでも触れれば、命の危険が迫る。だから、手のひらで触れ合うことも、抱きしめることもできない。
けれど、心の距離は近づけずにいられない。
「もし、普通の恋人だったら……」結衣の瞳は、ほんの少しだけ寂しさを見せる。
「それでも、あなたといることが私のすべて」
緋人は静かに頷く。
「どんなに離れていても、僕たちは繋がっている」
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図書館の時計の音が二人の時間を優しく包み込む。
目と目で交わす言葉は、時に声以上の力を持つ。
結衣は、緋人の胸の鼓動を感じた。
触れられなくても、この心の音が彼女を守り、彼女を生かしているのだと。
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それでも、ふたりの関係は決して楽ではない。
周囲の好奇の目、芸能界の重圧、そして何より自分の身体という“壁”。
だが、そんな壁の向こうに、確かな愛があることを彼らは知っている。
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「僕らはまだ始まったばかりだ。」
緋人は小さくそう呟き、結衣の手には触れずに、ただ彼女の存在を確かめる。
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彼らの愛は、言葉にも触れにも代えられない強さで、静かに燃え続けていた。




