⸻ 第2話 初めての同棲生活とアレルギー
大学の講義が始まる前日、真白結衣と藍坂緋人はキャンパス近くの小さなアパートに引っ越した。二人の秘密の結婚生活は、いよいよ始まったのだ。
結衣にとっては、アレルギーの恐怖と隣り合わせの毎日。緋人は彼女の健康管理を一手に引き受け、食事から掃除まで徹底的に気を配っていた。キッチンの棚は結衣のアレルゲンを徹底的に排除した特別な区画が作られ、外食も慎重に選ばなければならない。
しかし、思わぬ壁は生活の細かなところに潜んでいた。ある朝、緋人が用意した朝食に、知らず知らずのうちに結衣のアレルギー物質が混入してしまったのだ。
「結衣、大丈夫?」
緋人の声に結衣は顔をしかめ、喉の奥が痒くなっていくのを感じた。彼女の目が不安げに揺れる。
「なんだか……息苦しいかも……」
緋人はすぐに救急箱からアドレナリン注射器を取り出し、彼女の腕に注射を打つ。結衣の呼吸は徐々に楽になり、顔色も戻っていったが、二人の心は深く沈んだ。
「僕がちゃんとやらなきゃいけなかったのに……」
緋人は自責の念に苛まれながらも、結衣を強く抱きしめた。
「ごめんね。でもこれからはもっと気をつけるから、一緒に頑張ろう」
結衣は小さく頷き、涙をこぼした。
「緋人がいるから、大丈夫。怖くないよ」
その夜、二人は窓の外に見える満天の星を見つめながら、未来の不安と希望を胸に抱き合った。
大学生活はまだ始まったばかり。だが、結衣のアレルギーという大きな壁が、二人の前に立ちはだかっていた。




