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番外編③「放課後の雨宿りと告白ごっこ」
梅雨の終わり。
放課後、突然のゲリラ豪雨に見舞われた二人は、校舎裏の小さな屋根の下で雨宿りしていた。
「雨……すごいね」
「今日は、折り畳み傘、忘れたんだよな」
制服の裾が濡れ、結衣の前髪が頬に張りついている。
「なんかさ、こういうときに“好きです”とか言われたら、漫画みたいだよね」
ふざけるように言った結衣に、緋人は真顔で応えた。
「じゃあ、やってみるか。告白ごっこ」
「……は?」
「俺が、おまえの“好きな人”役で、おまえが“勇気を出す女子”役な」
「……緋人くん、バカなの?」
「知ってる」
でも、どこか本気の瞳を見て、結衣もふとその気になった。
「……わ、私、あんたのこと……ちょっと前から、ずっと……す――」
「ありがとう。俺も、ずっとおまえのこと好きだった」
言い切る前に先回りされた返事に、結衣は黙り込む。
「練習だろ? これ」
「練習のくせに……本気みたいな顔するなよ」
「……じゃあ、練習じゃなかったら?」
「……殴る」
「できるもんならやってみろ」
そして、笑い合いながら雨が止むのを待った。
“告白ごっこ”のくせに、心臓が少しだけ、本気だった。




