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100ものアレルギーを持つ女   作者: AQUARIUM【RIKUYA】
第1章:番外編⑴
15/33

番外編②「バレンタイン事件」



2月14日――バレンタインデー。

放課後、校門前には女子生徒とファンの長蛇の列。


「緋人先輩、これ! 手作りチョコです!」「サインください! 写真も!」


そんな中、結衣は人目を避け、こっそりと校舎裏のベンチに座っていた。

制服のポケットには、手のひらサイズの市販チョコ。

中身はカカオ100%、無添加でアレルギー対応――彼専用に選んだものだった。


でも、渡せない。周囲の目も、彼の人気も、全部“壁”のように感じた。


そこに、いつもの足音が。


「おまえがくれなかったら、誰のチョコも受け取らないつもりだった」


「……緋人くん……でも、そんなの、ファンの子に悪いよ」


「知らねえよ。俺の嫁がくれないなら意味ない」


彼は結衣の手から無言でチョコを奪い取り、ポケットにしまう。


「……ありがとな。ちゃんと、うれしい」


その一言で、結衣の頬は真っ赤に染まった。


翌日、SNSに“緋人、チョコ全拒否”がトレンド入りすることなど、二人にはどうでもいいことだった。


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