私基準の幸せ
終業のチャイムが鳴る。
それと同時に私は教室を出た。
いよいよ待ちに待った外出だ。
今日は自分好みのアクセサリーを買いに行く予定のため、1秒たりとも無駄にはできない。
(ネックレスはどんなものにしようかな。できれば2、3本欲しいところだけれど・・・)
色々考えながらも頬は緩んでしまう。
こんなに自分のことを考えているのはいつぶりだろうか。
今までずっとレオルドさんのことを考えていた気がする。
(まずは寮に戻って、着替えて、すぐに街に出よう)
そう考えている間にも寮に着く。
あらかじめ用意していた服に着替えてすぐに寮を飛び出した。
街は平日だというのに随分と賑やかだった。
いや、お嬢様だらけの学園が変に静かすぎるのだ。
久々の街の雰囲気にテンションが上がってしまう。
(まずはあのお店…、ううん、あそこのお店にも行きたい!ああ!!屋台も出てる!美味しそう~!)
初めて街に来た子どものように、全てのものに目を奪われてしまう。
こんなに活気に溢れている場所が身近にあったなんて・・・!
全ての店を見て回りたいが時間も限られているため、まずは近くのお店に入った。
そこは温かい雰囲気の雑貨屋だった。
アクセサリーもあるが、鞄や帽子など幅広く揃えられている。
(は~、幸せ)
率直に100満点中120点です。
それぐらい好き。
好きなお店ランキングへの殿堂入りが、たった今決定しました。
心の中ではしゃぎまくっていると、ふとある商品に目が止まる。
それは可愛らしいテディベアだった。
「可愛い・・・」
手に取ってみると、もふもふで柔らかい。
一気に心を持っていかれる。
(でも、…子どもっぽいかな)
元々アクセサリーを買う予定だった。
それに、さすがにこの歳で自分用にぬいぐるみを買うなんて、と若干戸惑ってしまう。
(…ちょっと待って。なんで欲しいものを買うのに戸惑う必要があるの?)
あれだけ意気込んだのにこのザマか。
本心は相当ほしい。
だって可愛いもん。
(我慢する理由はどこにもないじゃん。自分に素直に生きるんでしょ)
1人で強く頷いて、結局購入することにした。
端から見れば不審者だっただろうに、店主は何も言わずに丁寧に袋に入れてくれた。
それから私は色々な店を訪れた。
本当は1つ1つのお店をじっくり見て回りたいが、今日は気になるお店の下見程度にして後日、本格的に回る予定だ。
「んん~!美味し~!!」
今はしばしの休憩ということで、ベンチに座って屋台で買ったクッキーを食べている。
(こんなに幸せになっていいのかな)
幸せすぎて思考が若干溶けている。
でもこれぐらいがちょうどいい。
今まで頑張りすぎたんだ。
(街の略地図も貰えたし、今日は早めに寮に帰って回りたいお店の目星をつけようかな)
初日から門限を破るわけにはいかないしね。
残りのクッキーを美味しく食べてから、テディベアが入った袋を抱え直す。
気づけば鼻歌を歌いながら私は寮までの帰路を楽しんでいた。