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遠い昔の約束


若干の間の後、皆は各々思うままに動き出した。


踊り出す人

食事を楽しむ人

会話を楽しむ人


やっとパーティーらしくなってきたように感じた。


「シャル」


いつの間にか隣に立っていたレオルドさんを見上げる。

その目は若干の不安に揺れていた。


「レオルドさん、私の知り合いがご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

「いや、その、」


口籠りながら周囲を見渡したレオルドさんは声を潜めた。


「…バルコニーに行かないか?静かな場所で話をしたい」

「もちろんです。私もお話ししたいことがあります」


どちらからともなく歩き出した。




バルコニーには誰もいなかった。

窓越しに楽団の演奏が聞こえるが、ここなら随分静かだ。

夜のため少し肌寒いが、これぐらいがちょうどいい。


「ドレス、よく似合ってるな」


先に口を開いたのはレオルドさんだった。

今自分が着ているのは彼に贈られた青色のドレスではなく、黄色のドレス。

彼にはそれがどのように見えているのだろうか。


「…ありがとうございます。でも、用意していただいたドレスではなくてごめんなさい」

「いや、こちらこそ毎年ドレスを押し付けて悪かった」


レオルドさんはどこか辛そうにしている。

今までの彼からでは考えられない表情だ。


「……ジル兄とソフィ姉は私を育ててくれた親のような人であり、かつ兄弟のような人でもあります」

「まさか」

「はい。婚約の時にお伝えした『条件』にあった『2人』とはジル兄とソフィ姉のことです」




それは遠い昔のこと。


ジル兄とソフィ姉がいない間に行われた秘密の婚約。

婚約にあたり、天才女優と謳われた自分がレオルドさんに出した条件は2つ。


1つ目は、私を舞台から降ろす覚悟を決めること。

2つ目は、私を育ててくれた『ある2人』から私の存在を隠し続けること。


彼はその条件を呑んだ。

そして、条件の1つは今破られたわけだ。




「…もっとシャルと向き合っていればこうはならなかったのか」


レオルドさんは小さく呟いた。


「ずっと後悔していた。俺に付き従って、静かになってしまったシャルを見て苦しかった。あんなに舞台では笑っていたのに、それを壊したのは俺だ」

「・・・覚悟、決めたんじゃなかったんですか」

「決めてたよ。……決めてたはずだった。でもあの日からずっとシャルに対して真っ先に浮かぶのは、…謝罪なんだ」


レオルドさんは固く拳を握り、震える息を吐いた。


「謝罪が浮かぶから話しかけられなかったんだ。段々罪悪感が強くなっていった。だから、駄目だと分かりながらも令嬢たちに声をかけて、優しくして、自分を囲ませた」

「私から話しかけられることが無いように、ですか?」

「ごめん。ごめんな」

「………」

「謝って許されることではないのは分かってる。でも本当にご、」

「婚約、終わらせたいですか?」


私は彼の謝罪を遮って早々に賭けに出た。

彼は私の言葉に謝罪を止める。


「令嬢たちとの浮気ごっこの件はもういいです。気にしません。正直そんなことよりも大事なのは婚約を続けるのか、それともやめるのかという部分ですから。レオルドさんが決めてください」

「い、いいのか?」

「何がですか」

「俺が決めて。1つの条件はもう、」

「たしかにジル兄とソフィ姉には見つかりましたが、それはそれです。どうせ私たち以外誰も知らない条件なんですから、2人の同意の下でなかったことにしても何の支障もないでしょう?」


レオルドさんは呆然として私を見つめた。

私はしっかりと彼に向き合う。


「どうしたいですか?」

「……シャルはどうしたい」

「それを決めるのは私ではありません」

「俺たちのことだろ」

「それでもこれだけは私が決めてはいけないんです。私が決めたら意味がない」


顔を顰めたレオルドさんは覚悟を決めた様に呟いた。



「俺は、婚約をやめたくない」



「・・・言えるじゃないですか」


そう言って笑うと、彼は酷く驚いたような顔をした。

そしてそのまま抱き締めるように手を伸ばされたと思ったら、触れる寸前で止まってしまった。


「抱き締めなくていいんですか?」

「……いいのか?」

「あなたの婚約者なんですから。お好きなようにどうぞ」


恐る恐る腕を回される。

私もゆっくりと彼に腕を回して目を閉じた。

肌寒かったから、これぐらいの温かさがちょうどいい。


「もう少しだけでいいので私のことも見てくださいね」

「ごめん」

「そろそろ謝罪以外も聞かせてください」


レオルドさんはほんの少し腕に力を込めると、私にだけ聞こえる小さな声で愛を呟いた。



終わったような雰囲気ですが、まだまだ続きます!

応援よろしくお願いいたします!

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