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劇団オルビドが誇る最高のパフォーマンス

その笑顔にどこか既視感を覚えた時、会場の照明が落ちた。


皆がざわつく中、


「初めまして、紳士淑女の皆様」


凛とした声が会場に響き渡る。

突然の声にざわついていた会場が一気に静かになった。


その隙に私はレオルドさんと傍を離れた。

ここからはレオルドさんを撒くことに専念しないと。


会場の中心に、パッとスポットライトが当たる。

そこにいたのは、伯爵や貴族とも引けを取らない服装に身を包んだジル兄だった。


「お初お目にかかります。私は劇団オルビドの座長、ジルノと申します。以後お見知りおきを」


顔を上げたジル兄は、ジル兄のはずなのに全くの別人に見えた。

ふわりと浮かべた笑顔に思わず見惚れてしまう。

会場全体が息を呑んだのを感じた。


「この度は劇団オルビドをご招待いただき、誠にありがとうございます。皆さまと楽しい時間を過ごせたらと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします」


その言葉に会場から盛大な拍手が起こる。


(すごい……)


会場そのものがすでにジル兄の虜だ。

全員が釘付けになっている。


ジル兄は指を鳴らし、どこからともなくステッキを出現させる。

そして、ステッキの先で軽く2度床を鳴らした。


その瞬間、会場の照明が戻る。

それと同時に、会場に現れた楽器を持つ劇団員に皆が歓声を上げた。


「さて皆様。同じパーティーは二度とございません。このひと時をどうかお楽しみください」


ジル兄がにっこりと微笑むと演奏が始まった。

そして、未だに皆の視線を集めているジル兄はまっすぐ私の元に歩いてきた。


「シャル」

「ジ、ジル兄…」


ジル兄が親しげに私に話しかけてきたことにより、会場中から驚愕の声が聞こえる。


何でわざわざ注目を集めたまま話しかけてきたのよ!!!

もう少し落ち着いてからにして!!お願いだから!!!


「どうして青色のドレスを着ているんだ?もちろん可愛いけれど、シャルの魅力を引き出すにはもっといい色もあるさ」

「こ、婚約者から贈られたから…」

「ふーん」


ジル兄はスッと目を細めると、内ポケットから大きな布を取り出した。

そんな大きな布をどうやって仕舞っていたのか問う前に、無遠慮に頭から被せられる。

気づけばすっぽりと全身を包まれてしまい、反射で目を閉じた。


「ドレスというものは『相手への愛情を可視化するための道具』ではなく、『着る人の魅力を最大限に引き出すもの』ですよ。そこをはき違えて、独占欲の塊のようなドレスを贈っては、ドレスはドレスではなく、ただの拘束具に成り下がります」


布越しにジル兄の声が聞こえる。

そして、


「3…2…1…!」


カウントダウンが終わった瞬間、布がバサッと外される。

目を開けると、私たちを囲んでいる人々から感嘆の声が聞こえた。


「うん、やっぱりシャルにはこの色がよく似合う」


ジル兄が何を言っているのか分からず首を傾げると、クスクス笑いながら鏡を渡された。


そこに映ったのは、淡い黄色のドレスに身を包んだ私だった。

化粧や髪形も、ドレスに合うように変わっている。

慌てて自分の服を確認すると、ドレスは細身のものからふんわりとボリュームのあるものに変わっていた。

所々に金色の刺繍も入っており、その全てが美しい。


魔法としか思えないほどの早業に、私自身も困惑してしまう。


「ジル兄、これ…、」

「さて、お嬢さん。どうかこの手品師と1曲踊っては頂けませんか?」


すでに演奏は始まっているのに、誰も踊り出そうとしない。


皆、圧倒されているのだ。

劇団オルビドの最高のパフォーマンスに。

例に漏れず、私も圧倒されている内の1人である。


痺れを切らしたのか、ジル兄は私の手を引いて会場の中心へと歩みを進めた。

そして、慣れた様子でステップを踏み始めた。


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