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助け舟は見当たらない


「懐かしいな~~~~~」

「…ごめんって」


小さな声で謝る。

まさか、あの時のことがここまで大事になるなんて思っていなかった。

2人が未だに劇団に所属しているのは完全に予想外だ。


ただ、演じるのが楽しかっただけ。

ただ、皆と一緒に舞台に立つのが楽しかっただけ。


だから舞台を降りた後に受ける異常なほどの賞賛が怖かった。


賞賛だけではない。


『期待』 『羨望』 『嫉妬』


それらを含んだ様々な視線に晒されることに、幼い私は耐えられなかったのだ。


「ちなみにソフィ姉は今何してるの?」

「裏方メインで劇団を支えてくれているよ。いわば、裏方の座長だ。多分今日あたりは、ここの次に行く国との打ち合わせをしているんじゃないか?時間があればこの国にも来るって言っていたな」


ああ、まさかソフィ姉まで未だに劇団に所属しているなんて…。

謝罪の量がどんどん増えていく。


「ソフィ姉、怒ってた…?」

「とんでもなかった」


その一言だけで分かる。

どうやら私は本当に恐ろしいことをしてしまったようだ。


「あああああああ!!会うのが怖い…」

「まあまあ。俺も擁護する気がないし、しっかり怒られてくれ」

「無理だって~…」


ぐずぐずと泣き言を並べるも、ジル兄は守ってくれる様子もない。

100%私が悪いけれど怖すぎる。


「それよりシャルはここで何してるんだ?観光?」

「そんなことで済まされたくないんだけど。……私は、学生やってる」

「・・・・・もしかして、」

「今度パーティーが開かれる学園の学生です…」

「待て待て待て待て」


ジル兄は酷く動揺した様子で捲し立てた。


「別にシャルが学生をやってることは構わないし、むしろ嬉しく思ってる。俺とソフィアは前の座長が学校に通わせてくれようとしたのを断った過去があるからな??でも、パーティーが開かれる学園なんて貴族や伯爵が通う学園だろ?どういう経緯があってシャルが通うことになったんだ??」

「待って!落ち着いて!」

「全部説明してくれるんだろうな?」


ジル兄はにっこりと微笑む。

頷くしかないけれど怖すぎる。

ジル兄もソフィ姉も怒らせると本当に怖い。


「まず、学園に通ってることを許してくれてありがとう。2人を劇団に巻き込んだのに私だけ学校に通っていて申し訳なかった面はずっとあったの」

「それはいい。むしろ喜ばしいぐらいだし、俺たちは俺たちの選択で学校よりも劇団を取ったしな」

「・・・・・」

「で?」

「ハイ…。えっと、あの学園に通っている理由だよね?」

「そうだ。早く言え」

「……実は、劇団に所属してる時に婚約を申し込まれまして、」

「は?」

「ジル兄とソフィ姉がたしか遠征に行ってた時かな。で、…うん、受け入れたらここに連れて来られて学生やってます、…」


いつの間にか視線が下がってしまったが、上げるだけの勇気がない。

怖いほど静かだ。

あ、無理無理無理無理。

これは死んだ。


「婚約…?俺は知らないんだが、ソフィアは知ってるんだよな??」

「ア、エット」

「知 っ て る ん だ よ な ?」

「ア゜ーーーーーゴメンナサイ」


圧に耐えられない。

一気に冷や汗が流れる。

これはヤバい。

逃げないと、一刻も早くここを離れないと、


手が震える中、ほとんど飲んでいないオレンジジュースを一気飲みする。


「ほ、ほら、ジル兄も仕事中でしょ?私も寮の門限とかあるしさ!お互いどこにいるのかも分かったことだし、これからは手紙のやり取りとかでお話し出来たら嬉しいかな~なんて、」

「すみませーん。オレンジジュースをもう1杯お願いできますか~?」


ジル兄は店員さんに声をかけて注文をする。

そして注文はすんなり通ってしまった。


「あー、ごめんな。可愛くて可愛くて仕方ない妹が急に爆弾発言するもんだから、間違えて追加注文しちゃったよ。折角だし、もう少し話さないか?」


ジル兄はそう言って笑うが、目の奥が笑ってない。


「え、えと、」

「どこまで話したっけ?な、シャル?もう1回、ちゃーんと教えてくれないか?」

「ハイ、」


半泣きになりながら小さく呻いたところで、何も知らない店員さんがオレンジジュースを運んできてくれた。



結局帰ることができたのは門限ギリギリだったし、ジル兄に住所をしっかり把握されてしまったのは言うまでもない。


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