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劇団オルビド


「で、どうしてジル兄はこの国に来たの?」


お互い注文を済ませると早速話題を切り出す。

室内だというのに、ジル兄は目深く被った帽子を取らないまま話し始めた。


「仕事の一環だよ。この国の学園から依頼があったんだ。今日はその下見って感じだな」

「……学園?」

「? そうだが、どうしたんだ?」


ジル兄の言葉に嫌な予感がする。


「…ジル兄って今、どんな仕事をしてるの?」

「あの時からずっと劇団に所属して働いてるよ。今は役者とか手品がメインだな」

「もしかして、【劇団オルビド】?」


思い切って聞いてみると、ジル兄はチラッとこちらを見た。

店員さんがコーヒーとオレンジジュースを運んできてくれた。

しかし、どちらも手をつけずにじっと固まる。


「シャルになら言ってもいいか。そうだ。俺は今、劇団オルビドの座長をしている」


ジル兄の言葉に唖然としてしまう。

世界的に有名な劇団オルビドの座長!?


「ということで帽子被ったままだけれど許してくれ。バレるのはご法度なんだ」


そう言ってコーヒーを飲むジル兄。


「それは別にいいけど。えぇ…?」


私の反応にジル兄は目を細める。


「で?天才女優サマはこんなところで何をやっているんですかねぇ???」

「ちょ、ちょっと!まだ覚えてたの!?」

「当たり前だろ。劇団が始まって以来、スカウトを受けたのはシャルだけだ。劇団オルビドからスカウトされるなんて相当すごいことなんだぞ」

「そ、そんなの知らなかったし、…」

「挙句の果てに『ジル兄とソフィ姉がいないなら嫌』とか我儘言っただろ?で、最終的に自分だけこっそり抜けてやがって。しかも俺らには事後報告。ソフィアの荒れようはすごかったぞ」


責めるような目から必死に逃げる。





これは十数年前の話。


ある3人の子どもが辺境で毎日楽しく遊びながら暮らしていた。

兄のような存在の『ジルノ』と、姉のような存在の『ソフィア』、彼らに愛される末っ子の『シャル』。

血の繋がりがない3人は本物の兄弟のような関係だった。

特に末っ子のシャルは2人に溺愛されながら日々を送っていた。

そんな中、彼らの暮らす国に劇団がやって来た。


【劇団オルビド】

当時はほぼ無名だった劇団ではあったが、特に娯楽が無かった子どもたちにとって劇団オルビドの存在は大きかった。


ある日、子どもたちを交えた劇をやることになった。

劇団オルビドに所属している劇団員と、現地の子どもたちを交えた和気あいあいとした劇。

もちろん、彼らがその劇に参加しないわけがなかった。


劇は大成功。

しかし、ただ成功しただけではなかった。



__1人だけ異才を放つ少女がいた。



全ての視線を惹きつけて離さない少女を一言で表すならば『天才』、それに尽きる。

少女の魅力は観客だけでなく、同じように舞台に立っている役者でさえ、惹きつけてしまうほどだった。



「シャルさん、あなたをスカウトしたい。ぜひ、我々と来てほしい」


終演後、当時の座長がシャルと呼ばれる少女の前に膝をついた。

しかしシャルはきょとんとするだけ。


「それはジル兄とソフィ姉も一緒?」


シャルにとって、2人と離れることはあり得なかった。

2人が居ないのならば、どこにも行く気は起きない。


「ジル兄とソフィ姉と一緒ならいいよ!じゃなかったら嫌!」


団長は少し悩んだが、シャルの才能を取った。

そして3人は劇団オルビドと共に国を出たのだった。


シャルの我儘でついてきたジルノとソフィアも、凄まじい速度で様々な能力を身に付けていった。

半年経った頃には全員が主要な役を貰いながら、手品などにも才能を伸ばすほどだった。


しかし誰がどれだけ頑張ってもシャルに追いつくことはなかった。



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