第七話 冷徹女王は気づかせたい。
日は珍しく都心まで来ていた。
普段ならこういう所にあまり縁がなかった、あるとしたらグッズを買いに行くとかだろうか。
現在は10時32分、集合時刻のほぼ30分前だった。
「伏見さん、さすがにまだだよなぁ。」
一応辺りを見回して探してみる。
「え、あれ...?」
あの髪色、もしかして...。
遠くから回り込んで見てみると伏見さんだった。
何かきょろきょろと挙動不審になっている。
もしかして、僕を探してる?
「あ、堀田!」
「あ、やっぱり。」
伏見さんが手を振って近づいてくる。
「やっぱり?」
「遠くから見て、伏見さんかなと思って。でも、早く来すぎたから。」
伏見さんはやはりおしゃれな恰好で着ていた。
いや、センスがなさすぎるから確証がないけれど。
白い半袖の上着に、明るい紺色のズボンを着ていた。
どこからどう見ても美少女すぎて、隣を歩くのが正直気恥ずかしい。
「堀田、今日なんか雰囲気違うね。」
「あ、え、そう...かな。」
「うん、似合ってて格好いいよ。」
「あ、うん、ありがとう...。」
あまりの恥ずかしさに目を背けてしまう。
ラブコメの主人公なら、「伏見さんも似合ってるよ。」とか言えるんだろうか。
「...ねぇ、私の服、どうかな。」
「え、あ!うん!すごい似合ってるよ!」
「...ふふ。ありがと。」
やばい、自分から言えばよかった!
せめてここからは自分でリード?をしないと...。
「えと、映画館はどっちだっけ。」
「あ、その前に先にご飯食べない?」
「あ、そっか。そうだね。」
「美味しい所調べてみたから、そこ行ってみよ。」
「あ、うん。」
わざわざ調べてくれていたらしい。
やっぱり伏見さんって僕のことが...。
いや、そ、そんなわけない、よな...。
「パスタがおいしいらしいよ。他にも色々おすすめメニューがあるみたいなんだけど。」
「あ、そうなんだ...。」
やばい、もしかしてガチの高級店とかなのだろうか。
万が一僕の財布がもたない可能性が...。
大丈夫だろうか。
「え、あ。凄く何て言うか、雰囲気良いお店なのかな。」
「うん。まだ入ったことないからわからないけど。確かこっち。」
「あ、うん。」
不安と期待を胸に、僕は伏見さんと歩いたーーー。
「ここだ。行こ。」
「あ、うん。」
何というか、所謂「映える」とか言われそうな感じの、おしゃれな店だった。
本当に大丈夫だろうか、僕の財布...。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか。」
「二人です。」
店員がテーブルまで案内してくれる。
そのままメニューを手渡し、お辞儀してからバックヤードに向かった。
「何にしよっか。」
「あ、えっと...。」
メニューを眺めてみると、思っていたよりは高くなかった。
これなら二人分でも払える...か。
「好きなの頼んでいいよ、私が払うし。」
「え?」
「え?」
「いやその、申し訳ないし...。」
いくらなんでもここまでリードされて払わせるのは恥ずかしいような気がした。
もしかしたら、僕の価値観が間違っているのかもしれないけれど。
「誘ったの私だし。どのお店か決めたのも私だし、ていうかこのお店でよかった?」
「う、うん!むしろこのお店、何て言うか雰囲気良いし素敵だと思う。」
「じゃあよかった。お金は気にしないでね。」
「あ、うん。じゃあその...。」
「次どこか行く時は、僕が払うね。」
「...うん!」
思わず次があるかのように行ってしまったのに、伏見さんは凄く笑顔だった。
やっぱり伏見さんはもしかして、僕のことが。
少しだけ投稿ペースが遅れます。完結は問題なくさせます。