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第三話 冷徹女王は話したい。

「さっきは残念だったね。折角、席譲ろうとしたのに。」

「あ、うん...。」


 何でこんなことに...。

俺は今、伏見さんと一緒に通学路を歩いていた。

周りの目線が痛い...。


「ていうかさ。堀田って、優しいんだね。」

「え、あ、ありがとう...」


どう考えても誤解だ。僕はまたその場から逃げるために、

席を譲ろうとしたんだ。自分の善意なんかじゃない。


「普通席譲るとかあんまりしないと思うけど。まあ譲ろうとしたのに相手があんなのだったのは何というか、残念だったけど。ちゃんときつく言っといたから。」

「なんでわざわざ助けてくれたの?」


僕は思わず、声に出してしまっていた。


「え?」

「あ、え?」

「だって堀田が助けてくれたし...。そもそもあれ堀田悪くないじゃん。あーやって助けようとしてくれたのに...。しかも堀田言い返さないでどこか行こうとしてたから。むかついちゃって。代わりに言ってやろう、って思って。...あ、いや、堀田にじゃなくてあいつにだよ。」



伏見さんは慌てながらそう付け加えた。

もしかして伏見さんって、冷たいクールな感じだと思ってたけど、実は優しいのだろうか。

とりあえず言うべきことは一つだった。


「あの、ありがとうございました。」


僕はお辞儀をした。


「むしろ助けてもらったのは私のほうだよ。ありがとうね。堀田。それと、ごめん。」

「え、何が?」

「その、堀田のこと、何ていうか、偏見があったんだよね。暗そうだったし、クラスで誰かと喋ってるのも見たことなかったし、普段寝てるか本読んでたから。」

「さっきの見て、やっぱり本当は優しいしかっこいいんだなって。」


そう言いながら、笑顔で微笑んでくる。

いや、可愛すぎるだろ。

心臓の鼓動がどんどん早くなっていくのを感じた。

僕は何を言えばいいのかわからなくなり、とりあえず自分を卑下しておいた。


「いや!ぼ、僕なんて根暗だし、ダサいから、その。偏見のままで正しいと思うよ。うん。」

「そんなことないと思う。あいつに絡まれてた時、周りの人誰も助けてくれなかったもん。直接止めようとしてくれたのは堀田だけ。あいつ最近しつこくてうざかったし。」


確かに振り返ると、最近絡んできたのはあの男が多かった気がした。

確かにイケメンではあったし、学校では有名人なのかもしれない。


「でもほら、僕、不細工だし、陰キャだし...。」

「...なんでそんな卑屈なの。別に陰キャとか陽キャとかどうでもいいよ。堀田が助けてくれたし、あの老人だって助けようとしてたから堀田は優しいよ。」


出てくるポジティブな言葉の数々に、思わず眩しさを感じそうだった。

僕はそんなすごい人間じゃないのに、伏見さんはきっと誤解している。

そう訂正しようとしたが、その笑顔を見ていると、思わず硬直してしまっていた。


「そういえば、前から少し気になってたんだけど、いつも何読んでるの。」

「えっと、ライトノベルっていうか、何ていうか...。」

「ふーん。いつも表紙がアニメみたいだよね。」

「あ、うん。アニメになってるやつもあるよ。」

「ふーん...。」


伏見さんはそう言うと考え込み始めた。

...やばい、話題がない。そもそも伏見さんって何が趣味なんだろう。

そう思っても聞く勇気はなかった。


「そうだ。なんか、私のこと避けてるよね。昨日もどこか行っちゃったし。今日もどこか行こうとしたし。なんで?」

「い、いや、伏見さんって有名人だから、僕なんかといると。」

「いや、気にしないけど。...また逃げそうだから言っとくけど、これからも仲良くしよ。隣だし。」

「え、あ...」


僕と仲良くなんて、そう言いそうになって、思わず言い淀む。

伏見さんは言われた言葉の数々を思い出す。

もしかしたら、少しだけ勇気を出してもいいのかもしれない。


「...うん。よ、よろしくお願い、します。」

「ふふ。何それ堅すぎ。普通によろしくでいいよ。よろしくね。」


...伏見さんが笑ったの、初めて見たかもしれない。

隣で話してるのを聞いても、聞いたことがなかった。


「あ、うん。よろしく。」


そうやって話していると、どんどん周りの人の数が増えていく。

それに加えて、どんどん目線が増えていく。

当たり前だ。よく知らない明らかに陰キャぽいやつと、学校の有名人が歩いて登校しているんだから。

いつしか小声でこちらの噂話をしているのさえ聞こえてきた。


「そろそろ学校だね。」

「あ、うん。そうだね。じゃあこれで。」

「え...?あ、何か用事あるの?」

「あ、いや、違うけど。」

「...え?」


もしかして何かまずいことを言ったのだろうか。

何がそんなに疑問なんだろう。もしやまだ言いたかったことが?


「いや...クラス同じだし、席隣だし...別に一緒に行けばよくない?」

「え...。」


言われて気づく。仲良くしようと言われたのに距離を取るのは確かにいかがなものか。

けれど、あの伏見さんと一緒に居すぎると、学校で噂や騒ぎに...。

そこまで考えて、そもそも自分がそれを気にするほど友達も知り合いもいないことに気づいた。


「...じゃあ、その、一緒に。」

「うん。行こ。」


こうして高校二年生になって改めて、僕の不思議な学園生活が始まったのだった。

とりあえず三話まで投稿します。一定間隔で投稿する予定です。もし気に入ってもらえたらいいね等反応をくれると励みになります。

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