第九話 冷徹女王は気づかせたい。 三
「面白かったね。」
「うん!最後のシーンとか特に最高だった!」
映画を見終わり、近くのカフェで寛ぎながら、二人で感想を話し合っていた。
「アクションの出来栄えがすごかった。あと曲の入り方も。...あ、でも沢山の映画見てるわけじゃないからわからないけど。」
「いや、いろんなアニメ映画の中でもすごいと思うよ、カッコよかった!」
「うん、よかった。堀田楽しそうだし。」
伏見さんは笑顔でそう言う。
とても恥ずかしいが、何とか目を逸らさずにいられた。
もしかしたら少し成長できたのかもしれない。
「...伏見さんは、楽しかった?」
「うん。今まで一番なくらい。」
「...そっか。」
思わずきっと、僕も笑顔になっていたと思う。
「そうだ、映画の特典のストラップ、どうしようかな。」
「ああ、そうだね。折角だし、カバンにつけようかな。」
「じゃあ私もそうする。」
止めようとする前に、伏見さんはかばんにつけてしまっていた。
...いや、止めなくてもいいのかもしれない。
僕に偏見があっただけで、伏見さんはきっと、元からこういう人なんだ。
こんな僕にも優しくて、素敵な...。
「どうかな。」
「うん。いいと思うよ。」
「なんかそのキーホルダーとお揃いみたいだね。うれしい。」
「...そう、かもだね。」
僕とお揃いがいいって意味なのだろうか。
いやきっとこのアニメにハマっているだけだよ...な?
ここまでアピールされていると、もはや自分の疑心暗鬼な心が溶けかけていた。
もしかしたら、本当に僕のことが好きなんだろうか。
でも、助けるのだって失敗してるし、僕なんて...。
「そうだ、もう一つ行っておきたい場所があるんだけど、いい?」
「あ、そうなの?」
「うん。あ、どこかは内緒ね。」
そう言いながら、伏見さんが僕の手を引き、歩き出す。
さりげなく手まで...!?
いや、意識しないほうがいいんだろうか。
そんなことを考えながら、二人で歩き出した。
「そういえば堀田って...彼女、いない、よね?」
「え!?...うん。」
「...そっか。いや、そうだよね!じゃないと遊べないよね。さすがに。」
「あ、あぁ。そういうこと。うん、大丈夫だよ。」
「そっか...いないんだ...(小声)」
びっくりした。そっか、確かに彼女がいると二人でなんて遊べないもんな。
でも、僕に彼女なんているわけないって、何となく伝わるんじゃないんだろうか。
コミュ障だし。
「前さ、クラスで堀田がその...女子と二人で話してるの見たから、彼女さんかなって。」
「え?そんなことあったっけ...。あ、委員会の人だよ。掃除を頼まれて。」
「え?掃除?」
「うん。自分が急用ができたから代わりに、って。」
「...それって本当?」
「...どうだろ。たださぼりたかっただけかもだけど、別に僕、早く家に帰ってもあんまりすることないしね。」
ただあの頼まれてる雰囲気からすると、恐らく本当のような気はした。
「そういうの簡単に引き受けるの、優しいとは思うけど、良くないと思うよ。」
「そう...かな。でも困ってそうだったし。」
「...ほんと優しいよね。でも次見かけたら私が止めるから。私と遊ぶ予定があるから無理って。」
「え...。」
「...だめかな。」
「い、いや、うれしい、かな。」
伏見さんも、すごく優しいと思うんだけどなぁ。
でも、口に出せる余裕がないほど、僕は緊張していた。




