第八話 冷徹女王は気づかせたい。 二
食事を終えて、僕らは店を後にした。
伏見さんは、恐らく食事のマナーも完璧だった...気がする。
話題もほとんど伏見さんから振ってくれて、僕は相槌が大半だった。
それに比べて僕は、緊張で全然喋れないし、正直緊張で味がわからないくらいだった。
こんな僕じゃ、やっぱり伏見さんといると浮いてしまう気がする。
「美味しかったね。調べた甲斐があった。」
「...うん。そうだね。」
「そろそろ映画館行こっか?」
「あ、うん。そうだね。」
都会の街並みを眺めながら、二人で歩く。
伏見さんはこんな僕と遊んでいても、すごく笑顔だった。
やっぱりとても優しいんだろう。
「あ、次遊ぶ時は堀田が好きなお店教えてよ。」
「え...。」
伏見さんは、もう次を考えてくれていたらしい。
「普段行くところ...ごめん、あんまりおしゃれなお店知らなくて。」
「全然おしゃれとかじゃなくてもいいよ。堀田の好きな店を知りたいの。」
「じゃあ...近くのラーメン屋とか...。」
「ラーメンよく食べるの?私も好き。」
伏見さんがラーメンを食べる姿が、全く想像がつかなかった。
「そうなの!?え...、何味が好き?」
「普段は塩とか。豚骨も好きかな。」
「じゃあうちの近くのお店、ほぼ豚骨専門だしいいかも。」
「そうなんだ。じゃあ、今度一緒に行こうね。」
さりげなく取り付けられる次の約束に、思わず驚いてしまう。
陽キャって、すごいんだなぁ。と、思わず抽象的に感心してしまった。
「あ、うん...。多分家系ラーメンみたいなタイプだと思うんだけど、いいの?」
「全然平気。」
「なら、大丈夫かな。」
ちょうど話に区切りがついたところで、映画館の前についていた。
辺りがカップルばかりで、何というか緊張する。
「ちょうどもうすぐやるみたいだよ。」
「あ、じゃあ早く行かないとだね。」
昼時で空いていたのか、列がないのでそのままカウンターへ向かう。
「お二人ですかね?」
「はい。」
「あ、もしかしてカップル様ですか?」
「え?あの...。」
「カップルの方だと、割引が付くんですが...。」
「え、あ...。」
いや、さすがにここは高くなっても否定しないとーーー。
「はい。そうです。」
「え!?」
「そうでしたか。じゃあ割引をしますとーーー。」
否定する前に伏見さんが肯定してしまった。
もしかして、もう付き合ってるみたいな...。
いや、有り得ないか。あくまでお金が安くなるからだよ、な。
「...伏見さん、よかったの?」
「...あ、カップル割の話?」
「そうそう。その...僕とカップル扱いとか、迷惑だろうし。」
「...迷惑じゃないけど。というか、むしろ...。」
「え?」
「何でもない。行こ。」
むしろって...。
やっぱり伏見さんは...。
ドリンクを買った後、指定された席に向かうと、
まさしくカップルシートというやつだった。
...恥ずかしすぎる。
渋々、伏見さんの隣に座る。
「そういえば、ポップコーンとか買ってないよね。」
「ご飯食べた後だしいいかなって。」
「あ、そうだね。」
確かに、さすがに食べきれない気がした。
「狭いし、もうちょっと距離詰めようよ。」
「あ、うん...。」
肩と肩が触れる距離。
どう考えても、映画には集中できなさそうだった。




