表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/32

「あなた名前なんて言うの? 確かなんとか言ってたけど忘れちゃったわ」


 俺は草原を歩いていた。

 もちろん街かどこかにたどり着くためだ。


「名乗る名前なんてない」


「マサトキとか言ってたっけ?」


「覚えてるなら聞くなよ」


「やっぱり! そうそう、そんな変な感じの名前だったと思ったのよ。ちなみに私はハクナって言うの、よろしくね」


 もうこれからよろしくやっていく気満々のようだ。

 あーあ、まだこの世界について何も分かってないうちにこんな厄介なのに絡まれないといけないとか、俺ってこの世界でもすぐ死ぬんじゃないか。それくらいついてないんじゃないだろうか。



 少し歩いていたが、当然街の場所など知るわけもなく、ハクナと名乗る少女に案内してもらうはめになった。当たり前のながれだった。今思うと。


「あそこが街か」


 前方には城壁に囲まれた街が広がっていた。

 もう十分も歩けば到達できるんじゃないかな。


「ほら、私がいて良かったでしょ。さぁ、街につくやいなやあなたが何をするのか、ここで教えてくれないってならじっくり観察させてもらうから」


「何いってんだ頭おかしいのかよ」


 なんやかんやで門まで到着した。

 俺の当面の目標だが実は特にはない。強いて言うならこの世界について詳しくなることだな。でもなんかあのうるさいジジイになんか言われてた気もするけど、まぁ思い出せないしもういいか。思い出すときにおもいだすだろ。


「身分証をお見せいただけますか?」


 門番の男にそんなことを聞かれた。

 当然もってるわけない。

 強行突破するしかないのかな、きっとそれが懸命な判断だよな。


「通行証ってなんだ」


「そういえばそんなの必要だったわね、私も持ってないんだけど。私死んだほうがいいのかしら」


 ハクナという少女も持ってないようだった。


「ああ、それでしたら大丈夫ですよ。エリアリーダーと言って、そのエリアを任されてる兵士の許可があれば特別に入場できるようになってますから。そしてそのエリアリーダーが私なので、まぁ一発ギャグとかで笑わせてくれたら入れてあげますよ」


 ええ、そんなめちゃくちゃな。この人を今から笑わせないといけないってことか? 俺一発ギャグとか一個しか持ってないんですけど。


「おい、ここはお前の出番だろ」


「なんでわざわざ私がそんな恥ずかしいことしないといけないのよ。私は街まで案内してあげたんだから、ここは男であるあんたがやりなさい」


「仕方ないなぁ」


 まぁどのみちギャグは一個しか持っていないのだ。

 これでだめならもう諦めが尽くし、そうなればハクナに譲る口実もできるからやっちゃったほうが早いだろう。


「じゃあいきますよ。ぐるぐるーと回転したあと~……俺、まさときッ!!!!」


 渾身のギャグを放った。

 がっつり滑った。


「やばっ、久しぶりに寒気がしたわ」


「なるほど、実につまらないギャグですね、それを誇らしげにやられるところが逆に尊敬できます。まぁあまりに可愛そうなので、今回は特別に通してあげますよ。普段は厳格な私ですが、今回ばかりは本当に特別ですから」


 通してもらうことができた。

 俺は大事な何かを失った気がした。



「ほぉ、ここが街か、なんていう街になるのかな」


 門を通るとかなりいい感じの街並みが広がっていた。

 一言で片付けるなら中世ヨーロッパ風だ。

 雰囲気ある建物が立ち並び、建物の間を紐がゆきかい洗濯物なんかも干されてる。

 屋台もなにやらへんてこな果物? が売られていたり、人々も賑やかで活気づいてる印象だ。


「ここはリンドの街ね。アルゲリータ王国の南東付近にに位置する街ね。人口は中規模で、近くによもぎのダンジョンがあることで知られてるわ」


 へー、そうなんだ。まぁ人々もにこやかだし、割といい街なのかもな。


「それで、これからどうするわけ? まさかと思うけど何もしないとかは言わないでしょ?」


「当たり前だろ、俺を誰だと思ってるんだよ。とりあえず金がないから、アルバイトしてお金を稼ぐとしよう」


「本気で言ってるの? どこかの組織を壊滅させたりとか、王城に忍び込んだりとか、そういうことはしなくてもいいの?」


「どこかいいバイト先は知ってるかハクナ?」


「知ってる訳無いでしょ」



 きゃーーーー!!



 脇で声が聞こえた気がする。

 女の子の悲鳴だ。俺の耳に間違いがなければ、それは女の子の悲鳴だ。


「まぁそうね、強いて言うなら、危険にさらされてる女の子を助けるバイトなら紹介してあげられるかもね」


「全然うまいこと言えてないからな、まぁでもやっぱり何か聞こえたよな」


 俺達はなし崩し的に、声のした方にいくことになった。




「おい! 抵抗するな! 抵抗するやつはこうだ!」


 路地裏に入っていくと、そこには女の子と男どもがいて、女の子が一発顔を殴られていた。


「はぁ、すごいわね、どこにでもああいうクズはいるものよね。私以上のクズじゃない」


「仕方ないなぁ。俺がとめるしかないのかな」


「ああ? なんだてめぇら――」


 俺は間髪いれずに電撃を放った。

 電撃は女の子をも巻き込んで、そこにいた男どもを全滅させた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ