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 マジでどうなってるんだ?

 俺まだ人間ですとかいうボケをしただけだよ? 今ちょっとずつ後悔してきてたところなのに、その矢先にこの仕打ち?


「よし、こいつを捕らえろ、とりあえず基地まで搬送するぞ」


 なんだかとんでもないことになりつつあった。

 あーあ、もうめんどくせぇなぁ。そうだ、こういうときに魔法があるじゃないかコイツラを焼き払ってしまえばいいんじゃないか? 地球では暴力はだめだったが、この世界ではワンちゃん許されるかもしれないしな!


「ちょっと待ちなさい!」


 俺が攻撃しようかなぁなどと考えていると、どこからか声が聞こえてきた。

 なんだと思っていると、上空から何者かが降ってきた。

 その人物は俺と男たちとの間に立ちふさがった。


「わっ、なんだお前」


 男らはすごく驚いているようだった。当たり前だ空から人間が降ってきたのだ。当たり前だった。


「全く、天からたまたま見てたけど、こんな理不尽なことってないわ」


 その人物は女だった。

 白い髪に、古代ギリシャ風の白い衣服。

 背中には純白の翼が生えており、ものすごく幻想的な感じの少女だった。すごく美しい、ただただそう思わざるをえなかった。


「あなた達この男を捕らえようとしてたわよね? そんな頭の悪いこと言ってたわよね? 私はね、ただただ不快だった。頭の悪い人が、なんの罪もない人をいたぶるなんて、まぁそれこそこの世界のいたるところで起きていることではあるけれど、それでも私はこの一件をしかとできない。それは例えるなら蜘蛛の巣に捕まっている虫を、ひょいっとつまみ上げてあげるような、そんな程度のちっぽけな慈悲だと思ってもらえたら」


 少女は言葉巧みだった。

 なんかすごく喋っているが、まじでこの人だれなんだろう。空から降ってきて、翼が生えているということはそういう人種なのかな? この異世界特有の人種だったりするのだろうか、だとしたら俺はまだだいぶこの世界に対する理解が追いついていないのかもしれない。


「なんだ? 訳のわからないことを、お前さんには関係ねぇことだろ、俺達はとある事件の調査をしているんだ。その過程で怪しいと思しき人物を見つけた。それならばとりあえずのケアとして捕縛して事情を徴収するというのが人々の安全を確保するという意味でも最適解のはずだ」


「それは詭弁よ。あまりにも美しくないわ。怪しいと思われる人物に目をつけるというのは分かる思考、けれどその怪しいを判定する目が鈍っているようじゃ無関係の人をいたずらに巻き込んじゃうだけでしょう? 私は空から見てたけど、この人は無罪よ。だからあなたの言ってることにはどう頑張っても賛同できないわ」


「ふん、なんだこいつはいきなり出てきてぺちゃくちゃと……」


「小隊長、こいつもなんか怪しくないでしょうか?」


「そうですよ小隊長、きっとこいつらグルですよ。ここはまとめて捕まえておいて、後でジンバ様に鑑定してもらいましょう」


「そ、それもそうだな、俺達に出された命令は怪しいものを捕まえろ、だもんな。よし、そういうことだ、お前たちは怪しい、まとめて捕縛する」


 なんだかそういうことになったようだ。

 もう何がなんだかだ。


「はぁ……おろかね……人間ておろか。やっぱり天に引きこもる決断は間違ってなかったみたい……」


 少女は顔を抑え呆れ顔だった。

 なんなんだろう、俺からしたらこの人も十分怪しいけど……俺は一体どうしたらいいんだ。


「よし、周囲を囲んで逃げ道を塞げ! 一斉にかかるぞ!」


 小隊長と呼ばれていた男の指示をもとに、鎧の男たちが展開し始める。

 俺は雷魔法を放った。


「あがががががががががががががあ」


 男たちは、全員意味不明な笑ってしまいそうになるダンスを踊ったあと、その場に崩れ落ちた。

 肉が焼ける嫌な匂いがあたりを漂った。

 すっごい火力。これはいったかな、やっぱ雷って怖い。


「な、なに今の……」


「あの、翼を持つ少女さん? とりあえずあなたには攻撃しないであげたけど、あなたは何ものなんだ? とりあえず歳は俺に近そうだけど」


 俺はひとまず話しかけてみた。

 さっきから見てる感じ、俺に敵意はなさそうだ。


「どうして私には攻撃しないの?」


「そんなことが気になるのか? まぁ男たちの方はもう聞く耳を持ってくれそうになかったからな、一応対話の余地があるのは君のほうだろ?」


「まぁだとして殺すのはやりすぎだったとは思うけどね。いいわ、あなたと対話したいのは私も同じだったし」


 少女はその瞳を俺に向けてきた。

 青く透き通っている大きな瞳。

 小顔できれいな目鼻立ちで、正直可愛いような気がした。いや、これは間違いなくかわいい。多分。


「それで、誰?」


「私は神よ」


 少女は端的にそう答えた。

 それだけのようだった。誇らしげだった。


「待ってくれ、頭がおかしいのか? 神にはあったことあるけど、君みたいな人じゃなかったよ」


「厳密に言えば人間なんだけどね、人間から神になったって感じかな。それは私が選択したことなの、優雅な天での生活を満喫してるのよ。分かる?」



 分かるわけなかった。俺は危機感を覚えていた。

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