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「最後の生き残りって、どうしてそんなことが分かるんだ? もしかしたら同じように難を逃れた仲間もいるかもだろ?」


「いえ……龍人族には同法の気配を感じる能力が備わってる。それが確かなら、混血で各地に散らばってる薄い反応以外は、一切引っかからない。その人達も故郷とはなんの関係もない人達でしょうから、故郷の強い龍人族は紛れもなく私が最後」


「そうだったのか」


 自分だけが生き残る。か。自分だけが死んでしまった俺とはまったくの真逆だな。そっちのほうが案外辛いのかな。


「そしてなんとか逃げおおせた私は力を求めた。もちろん死んでいった同胞のためにも復讐しなければいけない。逃げた先の大きな葉っぱの下で雨風をしのぎながら確かにそう誓ったの。だから私は軽く修行をして、神の力を持つとされる師匠のもとに転がり込んだ。師匠は天空都市に住んでいて、まともな弟子が取れなくて悩んでたところだったらしいから、快く歓迎されたわ。そこで約二年くらい修行して最後の試験で師匠をぶっ殺した私は新神流の頭領になった。神の技と呼ばれる技を扱う流派でね、それなりに強くはなったんだけど、それでも魔族どもを滅ぼせるほどの力は身につかなかった。そこで私は自分が強くなることを一旦中断して、魔族を倒せるだけの力を持った人を探すことにしたのよ。そうして新神流の技のひとつで天にこもった私は、だらだらとくつろぎ、時に同胞が殺された復讐心を忘れないように時々思い出しながらも、やっぱり年月が経つにつれて私の同胞への思いとか復讐心とかそういった熱い感情が薄らいでいきつつあった。もう別に復讐なんてしたところでどうにもならない、別にこのままだらけて生きるのも悪くないか、なんかいい暇つぶしないかなと思っていたところで、たまたまあなたを見かけて声をかけてみたというわけよ」


 なが……よくそんな一気に喋れるものだな。最後のほうめっちゃ適当な感じになってた気がするし……なんだよせっかく仲間が殺されたとかでちょっと同情しかけてたのに……


「結局何が言いたいんだよ」


「つまり私には魔族どもを殺せるだけの力が必要だと言うことよ。それは別に私の力でなくたって構わない。別の人の力を借りればいい」


「なるほど、それがひょっとしなくても……」


「そう。マサトキ。あなたの力を借りたいわ。あなたは意味不明なくらいの素晴らしい力を持ってる。その訳のわからない力があれば、あの魔族たちを葬りさることも可能かもしれない。だからむちゃを言ってるのは承知だけど、ぜひ私に力を貸してくれないかしら。お願い!」


 ハクナは頭を下げてきた。

 えー……なんだか急だな。話はだいたい理解したけど……でもそんな事情があったんだな。想像もつかなかったよ。


「どうすればいいんだ……」


 今思い出したけど、俺ってこの世界に来たのに理由があったんじゃなかったか? なんか魔王って聞いてすごいピンと来るものがあったんだけど、俺確かその魔王とやらを倒すために転生しなかったっけ? なんかそんなことだったような気がする。いや、あのじじいが確実に言ってたぞ。やべ、今の今まで忘れてたわ。まさかこんなことでまた思い出すことになるとは。なんなら一生忘れてればよかった。


「はぁ、でも思い出したからには仕方がないか。俺も義理は通す人間なんだ」


「え、どういうこと……?」


「こっちの話だよ。まぁ仕方ないな、そこまで頼まれたら断るのも野暮ってもんだろう。確約はできないけど、しばらくは協力してやってもいいぞ」


「本当!? ありがとう! 助かるわ!」


「でもその代わり俺のいうことをしっかり聞くんだぞ。俺が欲しいものがあればダッシュで買ってくるんだぞ」


「できるだけ善処するわ!」


 本当かなぁと怪しい部分もあったが、まぁいいや。俺もハクナがいなかったら危ない場面もあったし、目的が一緒なら行動もしやすいだろ。まぁまた目的をうっかり忘れてしまうかもしれないけどな。






 しばらく星を眺めた後、各々の部屋に戻って寝た。



 明くる日の朝。



「明日もお部屋の方をお取りしておきましょうか?」


「そうですね。一応予約しときます。普通に稼いでくる予定なので」


 旅館を出る前に女将さんに声をかけられたので、そう返しておく。

 今の所持金では今晩泊まる分が足りない。

 また稼いでこないといけないな。


「ということでいくぞハクナ一号機!」


「私は一人しかいないけど、いいわ。とう!」


 俺とハクナは勢いよく旅館を飛び出した。

 これがいいんだ。これが最強なんだ。

 俺達で新たなストーリーを生み出していくんだ。

 それがきっと俺達にとって最善で当たり前で、かけがえのないものになる。

 俺達のストーリーは続くんだ。どこまでも。





「で、今日はどうするの? 魔王を倒しにいくの」


 旅館を出て二、三歩でハクナに尋ねられた。


「ん? どうして魔王なんて倒しにいかないといけないんだ?」


「記憶喪失!? 言ったじゃない昨日。私の目的を。それに賛同してくれたものだと思ってたけど」


 そういやそうだったか。ハクナは確か滅ぼされた故郷の村か何かの敵討ちをしたいんだったよな。まぁ俺もあのあと冷静に考えたけど、普通に故郷を滅ぼされて悲しいだろうし、そこは俺も一人の人間として手伝ってあげてもいいかもしれない。


「まぁもちろん覚えてるよ。そうだな。確かに魔王は倒したいが、ここは一旦冷静になろう。俺達はまだお金がないんだ。だからお金を稼ぐ必要があるんだよ」


「まぁ一旦身を固めるってのはそうね。お金があれば旅の中での消耗品とかも買えるものね。もういっそのことがっぽり稼ぐってのはどう?」

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