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報酬はたんまりとゲットすることができた。
「なんだかハクナってばすごい目で見られてたぞ。やっぱりオークをたくさん狩ってきたのがでかいのかな、そうに違いないよな?」
「ほぼ確実にそうでしょうね。オークは危険度Eランクに徹底されてるらしいから、それを複数倒してくるFランク冒険者は好奇に映ってもおかしくはないでしょうし」
「じゃあ金も手に入ったし、さっそく宿に泊まりにいくか」
ということで再び高級宿、シュンギク亭へと向かった。
「まぁハクナさんと、かわいいねこしゃん! またお越しいただけたということは、ご用意いただけたといううことですね? さすがでございます」
お金があったので、無事泊まることができた。
俺とハクナで計四枚の金貨を支払った。
すごい豪華な食事と温泉に浸かり、借りた部屋へと戻ってきた。
ちなみに俺とハクナは別室となった。
まぁ当たり前といえば当たり前だが、俺の猫特権でどうにかならないものなのだろうか。
あと猫の姿のままだと温泉で溺れそうになったので、普通に俺の姿に戻っておいた。
よっしゃーって感じだ。
「あー、ごろごろー、ごろごろー」
俺は猫から戻ったというのに、部屋でごろごろとしていた。
しかも全裸でごろごろしていた。
まぁこの部屋には俺一人しかいないから、別にどんな体勢でどんなポーズを取ろうとかまわないからな。もうこんなことだってしてやる。そしてこんなこともだ!
こんこん。
俺が暴れていると、ふと扉がノックされた。
「マサトキ、いる……?」
この声はハクナ……なんだこんな遅くに? もう俺も少ししたら寝ようかと思ってたのに。なんの用があるのかさっぱりだぞ。
俺は慌て服を着て、いいぞ! と返事をした。
「……」
ハクナが入ってきた。
服装は寝間着になっていて、すごく可愛かった。
背中の天使っぽい羽はそのままなんだな。でもそれが逆に本当に天使じゃないかと錯覚させてくる。天使って一体何なんだ? かわいいから天使なのか? もう何がなんだかさっぱりだ。俺の脳内がヘブンしてしまっているようだな。
「で、なんのようだよ」
「その、謝らないといけないと思って……」
ハクナはなんだかしおらしかった。
俺をちらっと見て目をそらしてしまう。
まぁゆっくりしてけよと、俺は敷いていたふとんにハクナを案内した。座布団代わりに同じふとんに座る俺達。緊張しないほうがおかしくないかこれ?
「あ、謝るって何を?」
「今日あなたに言ってしまった言葉のことよ。あなたなんて大したことないとか、そういう旨の発言をしてしまったでしょ? 正直見くびってたと思って。あなたはすごい力を持っている。それは間違いないわ。だから私が間違えてた、ごめんなさい」
「え、そんなこと? 別にいいよ。俺なんて本当に大したことない人間だし」
「いえ、これはすごく大事なことよ。私の……私のことについてあの男らが喋ってたでしょ、聞いてた?」
「え、なんか言ってたっけ」
「場所を変えましょう」
ハクナが部屋を出て屋上の方へと向かっていったのでついていく。
「私は、実は龍人族なのよ」
建物の屋上、満点の星空の下で、ハクナはそう切り出した。
「龍人族? 天使族とかじゃなくてか?」
「天使族? そんなの聞いたことないけど。まぁこの翼は確かに龍人族にしては全然立派じゃない。というのも立派な翼や角が生えるのは成人してからなの」
「へー、そうなのか」
「私はまだ六十五年しか生きていない。人間からしたらそれなりの年月かもしれないけど、何万年も生きる私達からしたら私くらいの歳なんてまだまだ赤ん坊も同然なの」
よくわからないけどそんな事情があったのか。まぁ普通の人間じゃないと思ってたけど、龍人族か。なんだか異世界っぽいな。
「なるほど、でもそれがどうかしたのか? なんで俺にそんなことを?」
「私があなたを求める理由につながるからよ。私の過去のことを話すわ」
ハクナは神妙な顔つきだった。
「五十年近く前まで……私は龍人族の故郷で平穏な暮らしをしていた。何一つ不満不平のない気ままな暮らしだったわ。龍人族ってそういうものだから。そんな日々が私としても十分に感じていて、とても幸せだった。でもある日……私の故郷が襲われたの。魔王の手下どもの手によってね」
魔王……なんだか聞き覚えのあるようなないような。
「私の故郷を襲ったのは魔王軍の四天王でも最弱の一人だった。でも私達龍人族もそれなりに強いわ。それこそ人間なんて矮小な生物など相手にならないくらいにはね。それに私達には十万年以上の時を生きる長老様もいた。長老様はほとんど全知全能。あのお方が負けるなんて、そここそ想像もしていなかったわ」
「でも、そういうってことは……」
「ええ、私達の故郷は滅ぼされた。完膚なきまでに皆殺しにされたわ。その光景を今でも覚えてる……」
「まじか……でもハクナは死んでなくないか?」
「私だけ長老様の手引で逃げ出すことができたの。いい忘れてたけど、私は長老様の孫娘だったから。私は長老様の跡を継げるだけの才能があるともてはやされてきた。いえ、あの時ですら故郷の成人連中と互角かそれ以上の強さは持ってたから、実際に才能はあったのでしょう。故郷のみんなもそんな私に最後の望みを託して一生懸命に逃がしてくれた……だから私が最後の生き残り。龍人族の最後の生き残りなの」