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「こほん」


 ハクナはすごく気まずそうに咳払いをしていた。

 冷静沈着なようにも見えるが、顔はわずかに赤くなっている気がする。気がするだけかもしれないが。


「それで、なんなのあの力は? あんなやばい力どうやって手に入れたのよ」


 開口一番、すっかりいつもの調子で俺に尋ねてくる。いや、なんだかちょっと声が震えてる気はするな。


「いや、俺の力なんて大したことないよ。それよりもさっき助けてくれてありがとな」


「猫の姿のあなたがどの口で言ってんのよ! 猫の口ってこと? 猫の口ってことなのかしら!? 大したことない? 猫に変身する力なんてみたことないわよ、ましてやあんな大猿!」


 ハクナは限界とばかりにまくしてててきた。


「そうは言ってもな。俺からしたら本当に適当に試してみただけだし。それに君にはもう関係ないだろ? 俺に付き合うのはやめたとか言ってたじゃん」


「前言撤回よ! 前言撤回に決まってるじゃない。あんなの見せられて手放すわけにはいかない。離れるなんてバカのするような真似するわけないじゃないの! そもそも最初からあのときの私を信じてればよかったのよ。やっぱり空から見た、あなたの姿を始めて見留たときの私は間違っていなかった。その感覚も忘れてその時ばかりの状況で見切りをつけようだなんて……ああ、私のバカ。あんぽんたん! ぼけなす!」


 ハクナは暴れ回っていた。

 そして俺の視線に気づき、キリッと姿勢を正す。

 何事もなかったかのように再びクールな感じに戻った。


「ともかく、私はあなたについていくわ。それは代わりないから」


「ええー、結局そうなるのかよ」


 意味がわからない。

 俺の力を目の当たりにして気が変わったのか? やっぱり大猿がおとめごころにフィットしてしまったのかな。大猿が確実に効いてるな。これは。


「まぁそう言うとは思ってたよ実はな。まぁなんやかんやで世話にはなったし、仕方ないから俺の目が許す限りはついてきてもらってもいいぞ。でも俺の邪魔だけはするなよ」


 今の俺は寛大なのだ。

 もう魔法でなんでもできると分かってしまった俺に死角はないのだ。今も猫の姿だけど、すでに自分の身に危険が迫ったら迎撃してくれるような魔法を付与してるし、仮にさっきみたいに弓矢を撃たれたとしてももう大丈夫なのだ。たぶんだけど。


「もちろん、私はただそばから見守るだけよ」


 そういうハクナはなんだか嬉しそうだった。




 とりあえず服がないので、ハクナに猫の姿のまま抱っこして運んでもらうことにした。


「で、これからどこに行けばいいのかしら?」


「うーん、依頼はクリアしといたほうがいいよな。そういやさっきのオークの巣っぽい場所はどうなったんだろう」


 思えば俺達はオークまであと少しのところまで来てたんだった。


 場所は本当にすぐそこだったので、移動し様子を見てみる。

 すると洞の前に、周囲を警戒する様子のオークたちが何匹か集まっていた。


「なんだ? 慌ててるように見えるけど」


「たぶんあなたが暴れた分で動揺してるんでしょ。流石に近所に住んでて爆発が起きて見に行かない人はいないでしょ」


 そういうもんなのか。

 俺はハクナに指示し、オークたちの前に躍り出た。


「ぶほ……!?」


 オークたちは明らかに俺達を警戒していた。

 全部で六匹くらいかな。


「にゃー!」


 俺は猫パンチ電撃を放った。

 オークたちはまとめて感電し、地面に崩れ落ちた。


 すると異常を感じ取ったということか、洞の穴から別のオークがぞろぞろと出てきた。

 想像以上に大きな巣だったらしい。

 電撃で瞬殺していった。


 とりあえず洞から出てくるオークはいなくなった。

 これだけ討伐すれば、かなりの報酬は期待できるんじゃないかな。

 しかしどうやって討伐を証明すればいいのかわからない。

 ハクナに聞いてみると、魔物には魔石というものを所持しており、大抵は体内にあるとのことだった。


 ハクナに全部剥ぎ取ってきてと指示すると、結構大人しく言うことを聞いて全部剥ぎ取ってくれた。

 なんだかすごく素直になった?





 とりあえずラランの村の村長にオークを討伐したと報告した。

 別に隠す必要もないので、たくさんのオークがいて殲滅したと言っておいた。

 すごく喜んでいた。

 討伐完了のサインを貰って、村を出た。

 なんだか村で行方不明者が出てるらしいが、俺達には関係ないので大丈夫だろう。




 リンドの街に帰ってきて、冒険者ギルドに依頼の報告に向かった。

 夕方ごろになっており、他にもそれなりの冒険者たちが並んでいたが、順番抜かしなどの不正はとくにしなかった。

 少し待って俺達の番になり受付嬢に報告した。


「冒険者カードの提出を。はい。えー……マサトキさん? ですか。あれ、他の職員から聞きましたが、確か今日冒険者になられたばかりの新人冒険者さんですよね? 男の方と聞いておりましたが、その、あなたが……?」


 受付嬢の目線はハクナに向かっていた。

 当然だ。今の俺はハクナに抱かれているだけの猫に過ぎない。

 ちなみに村でもやりとりしていたのは全部ハクナであった。


「そうです。私がマサトキです。細かいことはいいじゃない。それよりもオークを無事討伐してきたんだけど。これがそう」


 ハクナがごろごろと取り出したオークの魔石の数を見て、受付嬢は目をこわばらせていた。

 その後依頼達成が無事認められ、報酬を得ることができた。

 報酬額は金貨6枚と銀貨4枚だった。

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