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 なんか訳のわからない絡まれ方をされていた。


「この女の子は渡すから俺は殺さないでくれよ、死にたくないんだ」


「は、ずいぶんと薄情なやつなんだな。自分の命がそんなに惜しいとは、まったく男の風上にもおけない。答えはノーだよ。君には死んでもらわないといけない。僕たちのことがバレるわけにはいかないからね」


 えー、どうやら返してくれるつもりはないらしい。

 どうしよう……またあの不可避の攻撃を食らってしまえば、俺は普通になすすべなく死んでしまうよな? どうにかしたほうがいいのか? でもどうしろと……


「ぴかーん! そうだ、俺にも意味不明な魔法があるじゃないか。それで頑張ればいいんだ」


 思えばまだ雷魔法しか試してなかった。

 俺は身体能力を強化する魔法を使った。

 からだがすごく軽くなったような気がした。


「さ、とりあえずこの男を処分して女を確保しよう。多少反抗的なら痛めつけてもいいよ、あとで治癒魔法を使うから」


 少年の指示で他の仲間も動き出す。


 仲間の一人、弓術士と思しき男が弓を振り絞った。

 さっきの矢が飛んでくる感じか?



 ぴゅーん!



 案の定矢が解き放たれた。


 矢がこちらに向かって飛んでくる。

 のが見える。


 すごい、スローモーションに見えるぞ。


 この矢をどうしてやろうかな。


 掴んで投げ返してやろうか?



 俺は矢をキャッチし、そのまま高速移動して矢を直で弓術士の男に突き立てた。

 胸にぐっさりと差し込んでやる。


「うへー、肉をえぐる感覚……キモチワル……」


 弓術士の男は何が起こったかわからないといった顔で倒れていった。

 心臓を貫いたつもりなので、まぁくたばっただろう。


「「な!?」」


 一同は驚愕していた。

 俺が急に近くに現れたように見えたのかな? だとしたらしょうがないかもしれないな。


「申し訳ないけど、ただでやられてやるつもりはないんだ」


 俺は残りの仲間二人の心臓を抜き取って地面に沈めた。

 といっても胸をエグリ飛ばしただけだけどな。風穴をあけてやっただけだ。


「な、な、なんなんだお前は……」


 少年はびっくりしていた。

 尻もちまでついている。


「正当防衛だよ。身の危険を感じたら反撃しないといけないからね。それは当たり前のことで、常識に囚われていては出せないような結論だよ」


「くそおおおおおおお!!」


 少年は変身した。

 服がやぶれ散り、超巨大な黒い体毛に覆われたバイソンのような姿になる。

 目は赤くほとばしり、基本は二足歩行のようだった。


「うおおおおおおおおおおおおおお!!」


 俺もすかさず変身した。

 全身がどんどん巨大化していく。

 目指すは超巨大な猿だ。


 俺はひたすら巨大化し、月にも届きそうなレベルの大猿になった。


「がっはっは! すごい! すごいぞ俺! これならとてつもない力を出すことができるだろう。そう、例えば、お前なんてこうだ!」


 俺はなにもさせずにやっつけてしまおうと思い、バイソンを真上からぶん殴った。

 バイソンを遥かに超える大きさの拳での攻撃だ。

 地面にクレーターができ、拳をどけると、バイソンがぷつりと事切れていた。

 全身が破裂してしまっている。まるでトラックに敷かれた猫のようだ。

 流石に死んだと思うが、いちおうつまみ上げて、どこか知らない方向にぽいっと投げ飛ばしてあげた。ひゅーん、キラーン! となった。


「はぁ、なんかあっけなかったな。おっととりあえずもとに戻るか」


 このままの姿でも目立って仕方がない。

 俺はもとの人間の姿に戻ることにした。


「いやーん」


 だけど巨大化する際に当然衣服も破けてしまっていたので、裸のツルンツルンの俺がそこに誕生した。流石に公然の場でこれは恥ずかしいので、ひとまず猫の姿にでもなっておいた。


「ふぅ、なんだかいい感じにスカッとしたな。さすがは魔法。なんでもありだな。あれ? ハクナ?」


 すっかり忘れていたが、視界にぽつんと立ち尽くすハクナの姿が映った。

 なんだか呆然としてしまっているようだ。


「どうしたんだにゃー。この姿が不思議かにゃー。まぁ普通に喋れるんだけどな。まぁ無事でよかったよ。今思い返してみれば、最初に矢の攻撃を防いでくれたのはあんただしね。そのへんの義理は返さないといけなかったよな。じゃあここまで付き合ってくれてありがとう。この世界についても色々分かってきたから、もう案内とかもいらないと思うし」


 とりあえず宿が見つかって、お金を稼ぐ手段もだいたい分かった。

 もうひとりでも普通に生きていけるだろう。

 まぁそもそも鼻からその予定だったし。


「それじゃあね」


 俺に付き合うのはもうやめたそういう話だったはずだ。

 俺もこの魔法を使っていろいろできそうだし、好きに生きていこうっと。まずは依頼を完遂させて――


「ぐるぐるぐるぐるぐる!」


 ハクナが俺を鷲掴みにしてきた。

 猫の俺は簡単に掴み上げられた。


「あの、なんでしょう」


「ごめんなさい! 本当にごめんなさい! 私が無能でしたすべて間違っておりました! あなたのことを完全に見誤ってました! そう、あなたこそ神。素晴らしい神よ。私がやっていたことなんて所詮神もどきだった。あなたのそのお力をこの目に焼きつけられたこと。はぁ、なんて至極なことなんでしょう! マサトキ、いや、マサトキ様。どうか私めをあなたの召使にしていただけはしませんか! しましぇんか!?」


 ハクナは正気を失った目をしていた。

 ええ、なんだよこいつ。


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