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40人のお父ちゃん
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その女の子は毎日夕方になると公園のブランコに居た。とくに何すべくことなく元気なくブランコに座っていた。そんな女の子を心配そうに眺める一人のホームレスが居た。
ホームレスの男の名は山下幸三と言い50歳代で髪の毛が薄くなりかけた作業着の男だったが片手にはアルミ缶の入った大きな袋を持って数分間立ち尽くして女の子を見ていた。
そしてそれが数か月続いた頃、山下は女の子の側へ行き「どうしたの… 毎日ここに居るけれど」と、力無く声を掛けた。するとブランコに座る女の子は「ジッ」と、無言で立ち上がると何処かへ走って行った。
多分、怖くなって逃げたのだろうと山下は吐息をついた。だが山下がいつもの道を歩いていると、あの公園のブランコに再び女の子がポツンと座っていたことで山下は心の何処かで安堵していた。