第三話 人形使いと酸砲酸手
第3話 人形使いと酸砲酸手
時は、丁度葛ヶ原高校に隕石が落ちた日に
恐るべき四人の男がファミレスで談合を開いていた
テーブルの上にはゲーム同好会と書かれた三角に折られた紙が立っていた。
これは話が聞かれて困る話を他の客に勝手に聴かれても勘違いさせるための小道具である
一見ファミレスはこの手の談合に向かないように思えるが、交渉が決裂しても最悪その場で争わずに済むし、人は平日の4時なので人も余り多くなく、仮に盗み聞きされても小道具で誤魔化せる
実際の犯罪者達も犯罪の打ち合わせにファミレスを利用することも少なくないと言われている
「え〜とそっちが黒鉄白鉄事件でクソ強い撮り鉄の格闘家の白鉄とかいうおっさんをぶっ飛ばした人形儡りの栗木山総司さんで」
「もう片方が都市伝説の顔焼き男さんッスか?」
「その呼び方はあまり好きじゃないな」
「異名で呼ぶなら酸砲酸手、酸砲酸手の桜田文夫で頼むよ…そのほうがゴロが良いでしょ?」
「フフ、確かに名前のゴロは大事だ。」
「名前の印象は作品の印象に直結するからな」
椅子に座る二人の依頼を受ける二人の男
栗木山総司は痩せてもないし太ってもいないさして特徴は無い男だが150センチもある木製の箱を隣に置いていて、不思議な雰囲気を纏う男そんなだった。
もう片方の桜田文夫は陰気な顔を浮かべて更にイってる目をした痩せた男だった。
「おっおい、こんな二人であのバケモンに勝てんのかよ?」
「ばっ、バカ!失礼だろ、二人共異名がつくような超大物だぞ!」
「ふ〜んじゃあ良いよ、凄い技、見たけりゃ見せてあげるよ」
そう言うと桜田は薄く薄く切り分けた肉片に
口から胃酸垂らし、肉片はゆっくりジュウジュウと音を立て肉汁になった。
胃酸を吐きだし、相手を苦しめる最悪の技、これこそ酸砲酸手の桜田文夫の真骨頂だ。
如何なる武術の達人の防御も意味をなさない極悪性能の壊れ技だ。
依頼人の二人はまるで妖術を見たかのように驚愕の表情を浮かべた。
「ありえねぇ、ありえねぇよ、イヤ!おみそれしました!」
(やべぇよやべぇよこんな技見たことねぇよ、こんな技喰らえばどんな奴も終りだこんな最悪な技見たことねぇ)
(人間の技じゃない、正真正銘のバケモンだ)
「じゃあ、読者の為にも人形は企業秘密だから魅せたく無いけど違う技は見せてあげようかな?」
「あっでも君たちが私の人形を買うのなら人形の使い方を教えて…」
「あっ結構です」
(依頼以外で関わりたくないわ)
「あっそう」
栗木山は落ち込んだ。
「あっそういや黒鉄白鉄事件ってどんな事件なんですか?兄貴?」
「いや…実は詳しくは俺も知らないんだが」
栗木山はニッコニコで話し始めた。
「フフッ、じゃあ、今度は俺のパフォーマンスタイムか…」
「あれはちょうど一年前くらいかな?」
一年前 土奈貝駅
のどかな山奥の豊かな自然が特徴の日本有数のきれいな駅で今事件が起きようとしていた。
「よ〜し、そこだぁそこの枝を切れその枝を切れば黄金比になる美しい写真が取れるぞぉ〜」
「黒鉄文太さん…機材と仲間まで揃えて貰って貴方はマジ、神っす!!!」
「クク…撮り鉄同士助け合わないとな」
「止めるんだ!そんなことをしてはいけない!みんなの迷惑だ!これ以上撮り鉄のイメージを悪くするな!」
「ゲェ!白鉄一番さんだ!正義感が強くてウザいんだよなぁ」
「下らん、そういう人の目を気にしすぎるのが日本人の弱い所だな」
「我々のように自分の最も重視する物の為なら手段を選ばないハングリー精神それがないから今の日本は衰退したんだ」
「私は君の写真撮影技術を高く評価しているいい加減仲間にならないか?」
「説得はムダか」
「これ以上、お前のせいで肩身の狭い思いはしたくないここでお前にお灸を据えてやる」
「フン、結局己の為暴力を厭わないだけお前も俺だ、しかしこんなこともあろうかと素晴らしい用心棒を雇っているのだよ」
「月五万の契約でな」
「先生!お願いしますー」
ざっざと砂利を踏み鳴らしながらコーヒーを飲み干し、カップを仲間に手渡しニタニタと笑いながら栗木山総司は白鉄に立ちはだかった
「ホォ〜ンこれが黒鉄さんがライバル視してる白鉄一番かカメラの手入れと靴を見るに…惜しいことをする羽目になりますな」
「私の正義感の強い友達が何人か病院送りになっている」
「お前だな?」
白鉄は黒鉄達を指を指し睨みつけながら問い詰めた。
「あぁ多分そうですね…お陰でインスピレーションが湧きましたよ」
「この仕事のお陰で資金とアイディアが手に入る全く、黒鉄さんは素晴らしいクライアントですよ」
(まぁ多少なら迷惑行為は理解できるがヤリ過ぎで引くけどねフフッ)
「私の人形を高みに登らせる為の必要な犠牲なんですよ」
「ピカソのゲルニカのエピーソードを知ってるますよね?」
「ピカソはゲルニカの一部の泣く女の為に二股した女性二人を争わせその様子を描いたように私も少々の犠牲を厭わないのですよフィァハハハ!」
「栗木山先生は美術の高い技術力と類まれな戦闘力を誇る君に勝ち目は無い!」
(こいつは高一といういい年して人形遊びをするトンチンカンだが技術力と実力は確かだククッ絶望させて白鉄一番をメンバーに引き入れてやる!)
「でっその後白鉄は一瞬で敗北し病院送りになり、取り調べにも信じてくれないとか言って黙秘したとか聞きましたけど何があったんですか?」
「教えて下さいよ」
「駄目だよ読者の皆様を驚かせたいのさ今は焦らさせて貰うよ次の話を待ってね」
「まっまぁ良いです白鉄一番と言えば空手七段の猛者と聞く強さは間違いない依頼、受けてくれますか」
「依頼金はお一人に前金五万、成功報酬五万、二人合わせて二十万円でお願いします」
「まぁ良いでしょう私も是非ご依頼を受けましょうこれで今作の作品にラストピースを入れることが出来る」
「最近は黒鉄さんが海外で写真撮影をしてくるとか言い出してカンボジアで地雷を踏んだせいで今月の資金が無くなって困っていたのだが」
「今度こそ不気味の谷を突破出来るぞぉ」
「えっ!?大丈夫なの…?」
「片足で済んでとよ元気そうだったしねお見舞いのフルーツをいっぱい食べてたしね」
「いいなぁみんな、夢とか友だちがあって」
とため息を吐きながら桜田は呟いた。
「んっどうしたんですか?何かこの仕事をしてる理由とかあるのですか??」
「ほう、面白い話が聞けそうだななにかインスピレーションが湧きそうだ」
「はぁ〜じゃあ、たまには自分語りってヤツをやってみようかな」
「あれは2年前くらいかな」
2年前
桜田文夫は汚い路地裏で同級生からイジメを受けていた。酸砲酸手、顔焼き男など恐るべき異名を持つ男も最初は殴られ、踏みにじられる弱者だったのだ。
しかし、人生の転機は突然訪れた。
ある日、いつものように桜田は羽交い締めなされ、殴られ、とうとう吐瀉物を吐きだし
イジメっ子の顔面にぶっかけてしまったのだ。
桜田は更に苛烈な暴力を振るわれると恐れ慄いたが誰よりも恐れ慄いたのは桜田でもなく吐瀉物をかけられた者でもなく、羽交い締めにしていた三人であった。
「おいおいうちのリーダーの里林くんにゲロかけ…」
「オイィェー!」
「ニァァーン」
「うぅあーあっあっー!!!痛い!熱い!」
吐瀉物をかけられだ里林の顔は皮が溶けたのだ。
桜田は腹を殴られた時に自由に口から胃酸を吐き出せる特異体質になったのだ。
突然の惨状に最も茫然としたのは吐瀉物を吐いた桜田自身であった。
「えっ?」
余りの異常事態に手がほどけた一瞬で拘束を抜け胃酸を3人の顔に吐き散らした。
これが酸砲酸手の桜田文夫の代名詞の1つ酸砲である。
異常事態を瞬時に飲み込み、即座に復讐する闘争本能、自分の異能と言っても過言ではない特異体質の胃酸
桜田文夫、この男もまた暴力の鬼才であった。
胃酸で顔を溶かされた四人はお得意の悪口で瞬時に罵り合いながら逃げていった。
その後、イジメをしていたせいで四人は顔が溶けた理由を誰にも話せす、顔が焼けただれたせいで友達全員に罵られ、ついには親にすら、腫れ物や邪魔者扱いどころか産廃扱いされ、完全に心を病み、唯一残された希望の同じ顔が溶けた仲間同士、慰め合う、そんなことなど四人は決してしなかった。
お互いに責任をなすりつけ合い、四人は完全に一人になった。
その後、4人の顔は数カ月後無事完治したが人間不信になり、その後の4人は誰も知らない。
「いや〜あの時はまるでアメコミのヴァランになった気分で最高に嬉しかったよ」
「まさに覚醒したってヤツだよアハハッ」
「でも悲しかったなぁ」
「えっ!?どういうことです?」
「ホゥ?」
「羨ましかったんだよあの4人は友達がいっぱいいてさクズだけど本当の友情を持ってるんだって」
「でもそんなものは無かった顔が溶けたら簡単にバラバラだよ」
「薄っぺらだったんだよあいつ等は」
「その後本当の友情が見たくてこの仕事をしてみたけどみんなあの4人と同じだったよ」
「やっぱし、この世で最もキレイなもの、本当の友情なんて漫画くらいにしか無いのかな?」
「フフッ間違ってるな」
「えっあぁやっぱり本当の友情なんてバカバカしいよね?」
「いや、探し方を間違っているという意味だ」
「「「えっ?」」」
「フフッ馬鹿だなぁ実話の美談なんて世界中にいっぱい在るじゃないかそんなもの持ってる奴はもってるんだよ」
「ただ、そんなものを持ってるのはマトモな人間だけだマトモじゃない人間ぶちのめしても見れないのよ」
「もっと分かりやすく例えるとお前はドブ川でダイヤを漁ってるようなもの、」
「…まぁシェイクスピア曰く大抵の友情は見せかけという名言があるが…裏を返せばある所にはある」
「はぁ〜確かにクズはクズかぁ、そう言われてみるとそうだよね」
「まっ手軽にそういうの見たいなテレビの美談でも見るんだな」
「そうだね、やっぱり芸術家って見識ってやつが広いんだね」
「すごいねなんか、なんだろう、僕と友だちになってくれないか?」
(ハッ!勢いで言っちゃった、言っちゃったキモがられるよね)
「フフッお前って面白いな」
「そうやって美しさとか美徳という決まった形が無い物を求める時点で芸術家の才能が最高にあるよ」
「合格だ」
二人は硬い握手をして笑いあった。
「フフッ初めて友達が出来たよ」
「フフッそうかそうか」
「アァっ〜ハッハッハ」
「イ〜サァッサッサッサ〜!!!」
((笑い声キモッ))
「いや〜今日はいい日だ折角だ俺のライーソグループを紹介しよう!」
「俺の仲間にも良いインスピレーションを与えてくれるしアイツラもかなりのゲーマーだ仲良くなれるぜ」
「良く僕がゲーマーだってわかったねエスパー?」
「馬鹿!今どきゲーマーじゃないヤツのほうが奇しいぜ」
「アァっ〜ハッハッハ」
「イ〜サァッサッサッサ〜!!!」
栗木山と桜田の二人は肩を組み合いながらファミレスを後にしたのだった。
「まっまぁ…なにはともあれあのニ人はこれで終わりですね」
「あっああ…アイツラにも絶望を味わせてやらないと気がすまない」
「これで中学時代障がい者の同級生を軽く殴っただけで鉄島にぶちのめされた挙げ句退学を食らう羽目になった復讐が出来る!」
「俺も飛山にイジメの証拠をネットに流された恨みを晴らせる!」
「挙句の果てにあのクソ鳥にまでヤラれて俺達は薬中だ」
「お先真っ暗せめて彼奴等を少しでも苦しめないと眠ることもできねぇ」
二人は思った。
(こいつ間抜けだな)
(障がい者殴るとかこいつ頭おかしいよ)
二人はお互いを腹の底で嗤いながらしかしお互いの道連れという最後の夢の成功を祈り笑いあった。
「「アハハハハハ!!」」
その後テンション上がった二人はその場の勢いで踊りなから薬物を使いだし警察に捕まり、
二人はピーポーピーポーとサイレンを鳴らすパトカーに吸い込まれていった。