第一話 遭遇 後編
第1話遭遇 後編
まず、先手を取ったのは鉄島だった
「これでも食らえ!」
鉄島が叫ぶと拳が空を飛んだのだ。
なんと鉄島は自分の義手を改造し馬力を底上げし、
更にギガルブックというこの世界における世界記録を記録している本に記載されるほどの強力なバネ、その名を
鉄島バネ、親父と共同開発した自家製の強力なバネを義手に内蔵しているこれにより遠距離の相手もいとも容易く葬ることが出来るのだ。
更に鉄島は神経伝達のためのチューブとチェーンまで仕込み、飛ばした手を遠くから操り、回収し無限にロケットパンチをぶっ放せる。
更に遠距離攻撃なのに世界一のバネ、鉄島バネにより3メートル先のスイカすら一撃で砕ける威力を誇。
まともな人間なんぞ簡単にノックアウトできる程の威力を誇るのだ。その名は
ギガルショット
敗者の宝石が鉄島の必殺技ならギガルショットは鉄島の代名詞と言ってもいいほど愛用してる汎用遠距離技である
「なにィ!?」
飛山は驚きながらなんとか身を翻し避けることに
が成功する。しかしたった一発攻撃を避けただけなのに飛山は冷や汗と吐息が止まらなかった。
それもそのはず、先かの一瞬飛山の後ろにあったはずの自動ドアに穴が空いたのだから、
(ありえねぇ遠距離技なのに威力が高すぎるっ!)
(だが位置取りは良い!ここはコンビニ、環境を利用し、ぶちのめす!)
飛山はビビったフリをして鉄島を引き寄せた。
「来るな!寄るんじゃねぇ!」
その演技に騙され、
鉄島は不敵な笑みを浮かべながら歩を進める、その姿、まるで殺人マシーン。
自分の思い通りにことが進んでいるのに飛山の額には更に汗が滴り落ちる。
敵は圧倒的剛の者、一瞬のミスが敗北に繋がる。
本能は逃げろと叫んでいた、しかしプライドが
こんな頭おかしいやつに負けてたまるかとブチギレていた。
というか、逃げ道は塞がれていた、選択肢はいくらあっても選べるのは結局一つ、故に選択肢は戦う一択、
飛山は今、賽をブチ投げた。
飛山はまず、自分で開けた距離を自分で走って距離を詰める。
「バカがぁ!死にに来たかぁ!」
「ギガルショットォ!」
(懐に飛び込もうとしても無駄だ!俺の義手はロケットパンチを撃っても合金の手首で殴れる、むしろカドがあるからこっちのほうが痛ぇっ!)
(更に!俺の足は腕に行くはずの栄養が足に行ってる故に俺の蹴りは異次元の脚力を誇る※ダッキングしても無駄だ膝で蹴り倒してやるよ)
鉄島は不敵に笑う
※の解説コーナーは読まなくても大丈夫です。
※ ダッキングとはボクシングの技法の一つで
姿勢を低くし相手の懐に潜ることで相手のパンチを打たせづらくすることでダメージを抑えながら攻める技法、腰を低くしダメージを抑えるのは社会人もボクサーも変わらないようだ
しかし飛山が起こした行動は鉄島の予測を全てを物理的に上を行く秘策だったのだ。
「引っかかったなぁ!俺の狙いはこれだぁ」
飛山は叫びながら壁を蹴り飛びはねた。
「馬鹿がっ!どこを狙ってる!」
「ウリィーー!!」
飛山の狙いは鉄島に蹴りをかますことではなく、
商品棚に跳び移ることだったのだ。
飛山が跳び乗った商品棚は体重をかけられ鉄島に襲いかかる。
卑怯者 飛山連にかかれば商品棚てすらトラップに化けさせる。
「ぐぅぅ〜!!!うー!こんなもんで俺が倒れるか!俺の義手は世界一だぁ~」
「どぅあらっしゃい!」
「バカめ!棚を倒すのはお前の腕を塞ぐためだ!」
飛山は高速で床に落ちていたビール瓶を拾い上げ刹那の滅多打ちを浴びせた。
流石の飛山もビール瓶で殴るという殺人技など滅多にやらないしかしやらずにはいられなかった何故なら、飛山は確信してるからだ本能で、少しでも大ダメージを与えねば、敗北しギタギタにされ三途の川で文字通り生死の境を彷徨うと。
「オラァ!」
「お前の腕が最強なのは分かっただがそれなら全力でお前の腕をメタり切るまでよ!」
ビール瓶で滅多打ちにするという容赦のない攻撃鉄島はゆっくり頭を上げ呟いた。
「うぅう〜いってぇなぁ〜俺でなかったら死んでたぞぉ」
鉄島の表情は正に般若であった
「はぁっ!?これで駄目なのかよ!」
飛山は軽く絶望した。
「俺の頭は石頭なんだよ腕に行くはずの栄養が頭に行ってるからなぁ俺は腕どころか!」
「俺の頭も世界一なんだよ!」
「くそっハァハァ」
飛山は苦悶の表情をしながらビール瓶を捨て軽口を叩く。
「人の話を聞かない頭の硬いやつとはいえ物理的に硬いとは思わなかったぜ」
「ポン…頭がおかしい上に2つの意味で頭の硬いなんて勘弁して欲しいぜ」
「アン?話ってなんのことだ?強盗の仲間じゃないのか?」
「しかし、お前さっき俺の腕をポンコツ呼ばわりしようとして言い淀んだのか?」
「破れたビールを刃物に出来るのに捨てたし、お前なにか特別なわけでもあんのか?」
その時、飛山の脳は急回転する
(おっ?やっと誤解が解けるか?)
(頭に登った血が流れたのか??)
(案外話せる奴かもな)
(イケる!こんな喧嘩がすぐ終わる!)
「そうだ!俺は強盗の仲間じゃ」
しかし、喋るより早く拳が飛んで来る喧騒の華は
中々枯れないようだ。
「だがこれで終わりだぁ!!」
鉄島は渾身の鉄拳を放つ、しかし飛山に鉄島の鉄拳が届くことは無かった。
こんなこともあろうかと用意していた飛山、第二の手、自作の暗器バネ式握り鉄砲による技、その名は裏撃ちを発射し先手を取られ、みぞおちに弾を撃ち込まれ、流石の鉄島も悶絶
皮肉にも握り鉄砲に使われたバネは鉄島が作った。
鉄島バネであった。
何故このようなものまで飛山は仕込んでいると言うと見ての通りこの世界ヤバい奴が結構いるからだ、こわい!。
(クソぉ最後まで喋らせてくれよぉ〜)
「ぐふぅ!まだ仕込みがあったのかよぉ」
「いってぇなぁみぞおちとはいえこの威力火薬の匂いはしねぇ、間違いない、この威力を火薬以外で出すには俺のバネしか無い、よりにもよってまさか自分が作った物にこんなダメージをもらうとは思わなかったぜ!」
「うわぁっ!思い出した!ギガルブックに書いてた制作者だぁ!」
「こんなとこで自分の作品に出会うとはな!」
「自分の作品でこんな思いするとは最高に胸糞だぜ殺す!」
「うるせぇ!そもそもお前が勘っ」
「そこだぁギガルショット!」
またまた飛山が誤解を解こうとするがそのセリフは遮られる。
(くぅ!こんなバケモンと戦ってられるかよ、しかし誤解は解くにはなんとか倒すしかねぇ!)
「まだまだぁ!」
正面切っての殴り合いと見せかけて飛山はさらなる
手札を切ろうとしていた。
飛山は自分の制服の上着を脱ぎ、まるでスペインの
闘牛士のようにはためかせた。
正に今の猛牛状態の鉄島相手にピッタリの戦術であった。
「ふん、俺を牛扱いとはナメラれたもんだぜ自分で言うのもなんだがこの腕を馬鹿にするやつを必ずぶちのめすと決めてるが馬鹿じゃあないぜ」
「そんな手に引っかかるかよ!」
「そいつはどうかな?こいつの使い方、教えてやるよ」
「上着は喧嘩じゃこう使うんだ!次の瓶は耐えられるかな!?」
「上着を顔面に当てて目潰しとは古典的だなぁ!無駄だ!」
鉄島は咄嗟に頭をガードする、振り終わりにカウンターを狙うしかし鉄島はまんまと飛山の罠にハマってしまっていた。
「さっき頭を狙ったから頭をガードすると思ったぜ!」
「くっ!?」
飛山は鉄島の思考を読み、上段ではなくスネを瓶で殴った、弁慶の泣き所と言われるほど弱点、人が鍛えられない箇所を狙う卑劣な技だ。
戦いとは敵の嫌がることの徹底することはよく言ったものだ。
相手の裏をひたすら突き刺す汚い戦い方、しかし何故飛山はここまでして汚い手を使うのかその理由は飛山に言わせればそもそも戦うという行為自体を飛山は汚い行為と考えているからだ。
飛山にとって喧嘩に汚い手を使うなんて
ウンコに泥を塗るようなものなのだ。
ならば、何故飛山は喧嘩するのはなぜなのか、
それは、実は飛山はひねくれもので怠け者のくせに道理に合わないことが許せないタチで、それなのにめぐり合わせが悪く、頭のおかしい理由で因縁をつけられたり、イジメの現場に立ち会ったりして揉め事を起こしまくった、もちろん友達も飛山の揉め事な関わりたいはずもなく、飛山は一人で大勢と戦わないといけなくなったのだ。
こうして、飛山はクソ汚い戦術を使い、糞より汚い心の持ち主と戦うはめになってしまったのだ。
そしてとうとう付いた異名が卑怯者、
この飛山の手札はこうして生まれていったのだ。
そんな飛山が鉄島が戦うのは勘違いが発端とは言え皮肉である。
飛山の作戦にハマり続ける鉄島、しかし鉄島もバカじゃなかった鉄島は打開策を打ち出す。
「甘いんだよ!心理戦で勝つのは無理なのは分かった、だがっ!攻撃力も耐久も俺のほうが上だぁ!」
「だからよぉ、ノーガードで殴れば良いんだよ!それなら当てれるそしてオレの勝ちだ!」
全く回避を考えないノーガードの拳は飛山の虚を破った。
しかし飛山、間一髪ガードが間に合わせる。
「グゥゥッ!?痛ぇしなんで腕が痺れんだよぉ」
「馬鹿な!今の俺のパンチは※レベル2の※二馬力だぞ!ダメージが少なすぎる!???」
※ 読者の諸君は二馬力と聞いて鉄島はひょっとして弱いと思った読者もいるんじゃないか?そんなことはない実は一馬力とは国によって多少異なるが一秒間に75キロを1メートル動かす仕事量と定義されている
つまり二馬力とは150キロを一秒で1メートル運ぶほどのエネルギーちなみに鉄島はレベル5の5馬力まで馬力出せるぞこれならタンスどころか冷蔵庫も片手で運ぶ事ができるほどだ…流石に先に背骨が折れそうな気がするがしかしどうでもいいが裏話なんだが作者はちゃんと調べてなかったらもしかしたら馬力設定が1000馬力の化け物になるところだった。危なかった)
「ハァハァ俺はこんなこともあろうかと俺は服の袖に小型の角材と細くて薄い鉄板で作った篭手を仕込んでいる、更に昔ケンカ売ってきた奴から盗んだ技、※化勁を併用しているんだよ、ハァハァ防御力を上げてるのはお前だけじゃねぇ」
※ 化勁とは中国拳法の1種太極拳の技の一つだ、腕を転がすように動かして相手の技を受け流す技だ飛山のコピー技は付け焼き刃に毛が生えたものだが複数の仕込みや技を合わせ我流の技に昇華している鉄島が義手のスペシャリストなら飛山はあらゆる技と仕込みを組み合わせるジュネラリストなのだ
「そんなもので!?不良の喧嘩なら確かに万全の備えだがえっ?そんなもので!?」
「コイツぅ技巧派なくせに体のスペックも中々高いじゃねぇか」
「だが無駄だ掴んだぜ、お前の襟をな」
「このまま勝利も掴ませてもらう」
「俺の必殺敗者の宝石は片手打ちも可能だ」
「今この状況、回避もあのガードも使えないお前の終わりだ」
「あばよ」
シャカシャカと機械音を響かせ、飛山の土手っ腹に
片手版敗者の宝石
を叩き込んだ。
「うぎゃぁゔっゔ」
飛山の鈍い断末魔を聞き鉄島は勝ちを確信し飛山に背を向けた、しかし次の瞬間
鉄島はとある違和感を抱いたのだ。
なんで後ろからドサッと倒れた音がしないんだ?ということにバッと振り向くとそこにはフラフラとしてはいたが飛山が立っていた。
飛山はまだ倒れない。
「馬鹿なぁ!???」
「なんで片手撃ちとは言え俺の必殺技を食らって耐えれる!?俺の攻撃をマトモに耐えれるのはあの海原くらいのハズだぁ!?」
「コレだよ」
「!?」
飛山が鉄島の必殺技敗者の宝石を耐えた理由それは制服の下に薄い鉄板を仕込んでいたからだったのだ。
「腹にも鉄板、仕込んでたの!?」
「備えあれば憂い無し備えあれば嬉しいなってなぁ!お前みたいなやつを倒すためには俺はよぉ何でもすんのよ」
「そしてよぉお前が勝手にドン引きしてる間に入ったぜお前の懐に」
(うっ!?しかし無駄だお前の腕力じゃオレは倒せねぇ)
(せめて鉄島バネのやつの3倍の威力が無いとなぁ)
「終わりだちなみにさっきの暗器【裏撃ち】は連射できねぇんでな複数持ってるんだ更に遠距離攻撃したかったから威力上げたバージョンも用意してるんだわ」
「ここだな、そしてこいつを人体急所みぞおちに撃ったら流石のお前も終わりだな」
「はぁっ!?」
「そしてお返しだ服を掴んだぞ」
「これで避けれないなさっきの俺みたいになぁ!」
「喰らいやがれ!バネを3倍に増やした3倍裏撃ち」
流石の鉄島もみぞおちに特性の必殺技3倍裏撃ち
「ぐふぇっ!?うふぅあがぁ!?」
「これでも足りんだろ!」
「トドメはテメェの技を食らわしてやるぜ!」
「敗者の宝石だァァ!」
(なっ!?こいつ俺の技をっ!?)
それは所詮義手ではなく生身で打ったため
本家鉄島と比べたら流石に劣る連撃だった、しかし
ボロボロの鉄島をダウンさせるには十分だった。
鉄島は膝をつき、倒れた。
「なるほどなぁ人の殴り方には力を抜くだな色んなコツを聞いたことがあるが関節の固定を意識するのも中々悪くないな」
「後よぉ何度でも言うが俺は強盗の仲間じゃねぇ!!!」
「ハッ!?」
「違うの?強盗じゃないの?」
「だから強盗じゃねぇどこの世界で学生服で強盗する馬鹿がいるんだよ!」
「亜光速でバレるわ」
「なんてことをしちまったんだ俺は」
「全くだ、よくもやりやがったなぁ!」
飛山は悪態をつきながら鉄島のほっぺをペチペチした。
「完全に俺が悪い勘違いでやっちまった」
「許してくれ!」
鉄島は土下座しようとした、しかし飛山は静止した。
「そんなことを後だ!コンビニでケンカなんてバレたら下手したら退学だぞ!」
「あ、後よぅそういう土下座は土下座したくないやつにやらせるから意味あるんだよ」
「自分から土下座するやつに土下座させるのは気が引ける」
「そんなことをしてる暇はない!」
「全力でそこのコンビニ強盗に全てを押し付ける隠蔽工作をするぞぉ!」
「おっおう?」
「良いか?口裏を合わせろ!まず俺達は…」
数分後二人は警察の事情聴取を受けていた。
「で、二人で強盗を捕まえたと?なるほどぉ」
「ご協力ありがとうございます」
「しかしね二人共、強盗は危険だから戦わず逃げてくださいね」
「い、いや逃げ道を塞がれましてね…なっ?鉄島くん?」
「そっそうだよなっ?…いやぁ戦わないとどちらかが死ぬと思ったった言うかなんというか?」
「すいません松浦警部少々よろしいでしょうか?、どうも強盗の後藤は殴られたショックと覚醒剤の仕様のせいか証言が無茶苦茶です」
「強盗なのは店員の証言で間違いないようです」
「ふぅんじゃふたり共帰っていいよ」
「ふぅいいか?鉄島これは二人の秘密だからなコンビニのこと絶対喋るなよ?」
「あっああ、悪かったよなにか頼みがあったらなんでも言ってくれよ勘違いして本当に悪いことをしたごめん」
「おっおう考えとくわ」
(なんだ案外まともな奴だったな最初はバケモンと思ったが義手なあんな思い出があったら無理もないな)
(殴られたのは最悪だったがちゃんと心を込めて謝られると案外怒りも引っ込むもんだな)
(しかしもう会うこともないだろうがな)
今日の起こったことに思いを馳せながら飛山は家路についた。
一方、飛山の頭上の電柱の電線に一匹のカラスが止まっていた、そのカラスは鷹のような目をしていて、普通のカラスの一回りもニ回りも大きかった。
ただ静かに二人を見つめた後、大空を悠然と飛び去った。
数日後飛山は体を癒やすため、学校を休んでいた。
「体の痛みも無くなったけどダルいし、スマホも飽きたし、他に面白い番組無いしニュースでも見るかぁ」
ピッピッとリモコンでチャンネルを切り替えていく。
「お手柄高校生二人、コンビニ強盗捕まえる。いやぁ凄…」
「このニュースも飽きたな」
ピッピッ
「最近SNSで話題の高校生人形職人、栗木山宗治さんのびっくり!人形です…とても精巧で…」
ピッピッ
「話題のオカルト特集自称異世界を夢で行き来する男!夢渡聡太さんです
なんとね異世界に住んでる竜王ペラード・ドラァグザァークは最低な魔法な使い手で無詠唱魔術の達人で無詠唱で相手を氷漬けにするんですよ、無詠唱だから回避も出来ないんですよでも意外な面もあってヨガとかが趣味なんですよね」
「ここまで酷い嘘だとちょっと面白いな」
ピッ
「速報です!なんと葛ヶ原高校に隕石が落下しました!死傷者は…」
「嘘だろ…近くじゃん」
「ん…そういやあいつも葛ヶ原高校だったな」
「まさかな?」
こうして予感は的中し飛山の退屈な日常は良くも悪くも終わろうとしていたのであった。