第一章 10
ベルが第十四チームの四人を排除するのを三人が見ていた。それぞれ違うチームの三人だ。武器購入の為に来た者と、他のチームの情報を把握する為に来た者たちだった。ただ、武器を持った相手を、そして、三人がかりでも敵わないベルを見て、武器の購入を諦めようとしていた。その張本人のホワイト・ベルが、武器屋からすぐ目の前の広間に陣取るように立っているからだ。これでは、第一ラウンド内に武器を購入出来ない。ただ、それは他のチームも同じだ。それに……。
三人は、自分のチームのメンバにホワイト・ベルが、武器屋を占領していることを伝えた。少なくとも40ポイントを獲得していること、そして、なによりも重要な、第七チームのエッグの守りが手薄になっていることを。
明らかに不測の事態だが、悪いことばかりではない。あの第七位の居場所を確認出来ているのだから。ばったりと偶然出会うのが一番怖いエッグマンにおいて、相手の位置を知るのは大きなアドバンテージとなる。そして、第七位と直接戦わなくても、勝てるのだ。
三人は、それぞれ、見つからない位置に身を隠しながら、第七位が動き出さないか、見張りを続けた。もしも、第七チームのエッグが破壊されたら、武器を購入することも出来る。それに、第十一位や四位や一位と潰し合って、その隙に武器を購入出来るかもしれない。その為にもこの場所を離れるわけにはいかない。チャンスを待つために、三人は身を顰め続けた。
そして、それは、ベルにとっても好都合だった。膠着状態を狙って、姿を見せているからだ。
第十四チームのタロウは、ナイフを右手に持ち、腕を完全に伸ばした。あれは近接戦闘に専念する型だ。ナイフは投げても当たり判定がある唯一の武器なのに、あの使い方では、行動が絞られる。だから、加速出来た。投げることを考慮すれば、別の戦い方になっていただろう。大きなダメージを免れても、触れただけでアウトなこのルールでは、確実に勝てるとは言えない。武器を購入させて、それを奪う作戦では、いずれ負けることもあるだろう。そうなると、奪ったナイフも失うことになる。
ベルは、向かってくるものを排除する為に、広間の中央に立っている。ナイフはポーチの中に入れてある。身を潜めているエンプティを二人見つけたが、ここを離れて追撃するわけにはいかない。このまま第一ラウンドが過ぎれば、それでいい。ここまでは上手くいっている。いや、上手くいきすぎているくらいだ。
ベルは自分が犯した誤算に気づかないまま、自ら立てた当初の作戦に従った。