表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/64

第一章 9


「素晴らしい動きです。第七位ホワイト・ベル」司会者が声を張り上げた。「まさに、瞬殺。これはいったいどういうことでしょうか?」

「ホワイト・ベル選手は、ルールをしっかりと理解していますね」解説者が答えた。

「と言いますと?」

「武器屋を出たタロウ選手は、襲ってくるベル選手を見て、瞬時に構えます。これは想定の範囲内だったのでしょう。その証拠に、第十四チームは、見事な連携でした。ですが、タロウ選手の構えに対して、ベル選手は左手でナイフを持ったタロウ選手の右腕を掴みました」

「これは意外とあっさり捕まえることが出来ましたが、なにか理由があるのですか?」

「はい。ベル選手は、十メートルほど手前で加速しています。ただ、二メートルの地点で更にもう一段階加速しているのです。その速度を想定していなかったのでしょう。そして、右手を掴んだベル選手に対して、タロウ選手は左手で攻撃に出ました。恐らくこの左手が、タロウ選手の本命だったと推測されます。ただ、ベル選手もそれを読んでいました。向かってくる左腕を右手で掴み、瞬時に跳びました。腕を掴んだまま、タロウ選手の頭を超えて、背後に回ったのです。二段階目の加速もあり、勢いを殺さず跳んだわけですから、そのエネルギィは相当なものです。タロウ選手も斜め後方に一緒に浮いたのですから。そして、そのまま、空中でタロウ選手の背中を両足で蹴り決着です。普通なら、これで終わりなのですが、第十四チームは、タロウ選手が敗北すると知るや、直ぐに三人同時に飛び出して、ベル選手に飛び掛かります。これは、武器を奪われない為でしょう。時間が限られている中、強く握られたナイフをエンプティドールから奪うのは、難しいのです。ただ、ベル選手が行った蹴りは、腕の関節ごと外すほど、強力な蹴りでした。これにより、エンプティドールは、痛みを生身に伝えない為に、ペインカット機能が働きました。そして、支配権を奪われた握力は簡単にナイフを落としてしまったのです」

「これは、ルール的には問題はないのですか?」司会者がわざとらしく首を傾げた。

「問題ありません。例えば、一度蹴りを入れて、体から離れた後に、関節を外すほど、もう一度強く蹴り追加のダメージを与えるのは、禁止されています。ですが、初撃であれば、多少強く殴ったり蹴ったりしても、構いません。手加減をする余裕がない場合もあるからです。ベル選手はそれを利用しています。掴んだ腕は当たり判定から外れた地点です。そして、最初の一撃でペインカットを狙い武器を奪ったのです。その前の、第六チームと対戦した時も、相手のエンプティドールに触れて、そのまま体を投げて攻撃に利用していました。これもなんの問題もありません。もし、出来るならやってみればいいのです。ただ触れるだけよりも、遥かに難しいことがわかるでしょう」

「なる程。レベルの差ですね。そのあとすぐ、ベル選手はナイフを拾いましたよね?これはなぜですか?第十四チームの三人が彼を襲うのは、それより早いことが、簡単に予想が付いたはずですが?」

「武器の所有権を得るには、間に合いませんが、ただ、奪うだけには十分な時間でした。そして、第七位のベル選手には、それだけで十分たった、ということです。その証拠に向かってくる相手の攻撃をナイフで弾き、その後の攻撃で、確実にポイントを稼いでいます。攻撃の武器であるナイフを盾のように使ったのです。この短時間でベル選手は、四人を排除したことになります」

「武器を持っていても勝てないのでは、もう、勝ち目はないのではないですか?」

「そうでもないでしょう。直接戦わなくても、勝てるのがエッグマンという競技ですし、それに、第一位や第四位、第十一位のチームが今大会には出場しています。彼らとベル選手がどう戦うのか、非常に楽しみです」

「それでは、三十分が経過した、現在の成績を見てみましょう」司会者が言うと、数字とグラフが並んだ。「現在トップは、190ポイントを獲得したベル選手率いる第七チームです。第七チームは290EPとなっています。続いて二位と三位は、第二チーム、第十七チームが230EPと続いています。第五チームは、第十一チームと遭遇しましたが、ここには戦わず、その後、第九チームと戦い、これに勝利しています。第九チームの一人を排除した後、エッグを破壊したことにより、現在四位に付けている第五チームのEPは220EPとなっております。ただし、この時、第五チームのエンプティドールの一人が攻撃を受け、排除されました。現時点で破れたチームは、第六、第九、第十二、第十五、第十八、第十九チームの6チームという早い試合展開。ただ、ゲームはまだ始まったばかり、生き残ったチーム全てに優勝の可能性はあります。それがエッグマンです。それでは引き続きお楽しみに」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ