カフェとお客さま
お買い物が終わるの待つのはたいへん。
ふしぎなお客さまが出てくる話。
燦々と輝く太陽。
隣のデパートでは夏スイーツ、夏服で賑わっていた。
涼を求めてこのカフェにやってくるものは多い。
買い物が終わるのを待つものや買い物帰りのものだ。
何故かいつもと違い今日はお客さまが少ない。
からんからん。
黒い髪に赤いスカーフを首に巻いた青年だった。
青年はデパートが見えるカウンタ―席に座った。
メニュー表に目を走らせてから、メロンクリームソーダだった。
氷を入れてメロンソーダをそそぎ、
アイスディッシャーでバニラアイスをくりぬく。
青年はその様を楽しそうに眺める。
おいしそうに食べるお客さま。
「こう暑い中、デパートの前で待つのも大変でねぇ、まったく参ったよ」
アイスを一口食べて、そうお客さまはこぼした。
おそらく隣のデパートで母親が買い物を待っていたのだろう。
ちょっと買い物するつもりが長引くことはよくある。
たいへんですねぇ、と青年の方を見て目を疑った。
そこには赤いスカーフ首に巻いたの黒いラブラドール・レトリバーがいたのだ。
おいしかったよ。それじゃあ、ご主人が待っているのでね。
と、代金を払ってカフェを去って行った。
翌日、ご主人と一緒に来店し、今では常連客だ。
だが、たまに青年の姿で来店することもある。
決まって、メロンクリームソーダを頼む。
ワンコ、お買い物が終わるの待つのたいへんだよね。