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建築魔道士と闇の王女  作者: 流星明
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第3幕 闇の女神の力

お待たせしました。

3人で話をした後、私達は門前の兵士達と合流。傭兵達の死体のみが転がっていて、兵士達やロナウスはほぼ無傷であった。ライラはロナウスに抱きついて喜んでいる。妹よ、先程の態度と変わりすぎだぞ。女性って本当に怖いな。


「皆、招かれざる傭兵を倒してくれて感謝する。しかし、屋敷を襲わせた親玉はまだ残ってるわ。私の庭で勝手な事をする愚者には、苛烈な制裁が必要。今から港に行って、奴の奴隷達を奪う。極力だけど民には手を出さないように。ただし、逆らう奴は殺しなさい」


「「「はっ、かしこまりました!!」」」


クレア様の号令の下、兵士30名が山を降りていく。さて、私とロナウス、ライラにナルガは残されたがどうするんだ?


「私達は商人の船を奪うわよ。兵士達と戦っている隙を狙う。ルビめ、私を怒らせたらどうなるか思い知らせてやるわ!」


「‥‥終わったな、ルビは。姫様がこうなったら怖いぞ。血を見ないと決着がつかないからな」


「私達としては、あのガマガエル商人に意趣返ししたいから構わない。では、クレア様。道は私が作りますので、ロナウスとナルガ、ライラと共に付いてきて下さ‥‥」


「本当か、ライラ!? 目が見えるようになったのか! 俺は、俺は嬉しい‥‥ぞ」


「ロナウス、喜び過ぎよ。今からまた戦いに出ないと行けないから気を引き締めて。目が見えたから分かったけど、あなたってかっこいいわね」


ロナウスとライラ、再び歓喜の抱擁。真面目な空気を桃色空間によって吹きとばす馬鹿っプルめ。君らさ、もう少し状況をわきまえてくれないかい?


「ちょっと。なあに目の前で盛ってんのよ。だらだらする時間なんて無いんだから、すぐに動くわよ。‥‥いつか、私もアリストとあんな感じになりたいわね」


クレア様の言葉、最後が小声で聞き取れなかったが、ロナウスとライラは慌てて離れる。隣を見たら、ナルガも呆れているのか、首を横に振っているぞ。


「恋に恋する馬鹿っプル2組か。やれやれ、俺も恋人を作ろうかな?」


いや、ちょっと待て! 2組って私とクレア様もかね? しかも恋人を欲しがるなんて、孤高の剣士ナルガはどこにいった。おほん、気を取り直して先に進もう。港から戦う喚声や武器のぶつかり合う音が聞こえて来たからな。


「私の土魔法で平坦な道を作って降ります。数分程で港に着くでしょう。では、行きますよ!」


私は港に向かう最短経路を土魔法で作っていく。壁はトンネルを作り、地面は平らにならし、邪魔な岩は取り除く。それを何回か繰り返すと、さっきまでいた広場に着いた。


傭兵達の死体が転がり、奴隷となった人々は逃げ回る。建物には火が燃え広がり、まさに地獄絵図の有り様と言えた。ナルガに聞くと、クレア様直属の兵士達は、あまたの戦場を駆け抜けた精鋭なのだとか。そこらの野良傭兵に勝てるはずがないと断言されていたが、圧倒的な戦いっぷりだよな。


「うわあ、酷い有り様だぜ。人々は逃げ回って、街も燃え盛ってるし。火付けはクレア様の指示ですか?」


「私はここまでしろとは言ってないわ。たぶん、傭兵連中の仕業ね。逃げるついでに略奪するのは、彼等にとって日常茶飯事よ」


クレア様の言われた通り、生き残った傭兵達が貴金属や食料等を抱えて逃げ出している。あっ、平民の男性が斬られた。彼は確かルビの側近だったよな。自分達が雇っていた傭兵に殺されるって哀れだね。


「騒ぎに乗じ、私達は船を接収するわよ。街の方はイガ伯爵に任せる。自分達の失政と決断で呼び込んだ災禍。だったら、自分で解決しないとね?」


「了解しました。クレア様」


私達は広場の騒ぎをよそに、忍び足で船へと近づく。船のはしけに到達するという段階で、ライラの警告の声が聞こえた。


「兄さん、グリク兄さん達が積まれた木箱の裏に隠れてる。8人はいるわ、止まって!」


「ちっ、後少しだったのにな。乳臭いライラ、俺の邪魔をするなよ。ようやくアリストを殺‥‥がっ!!」


木箱の裏から現れたグリク兄さん達だったが、クレア様の神速の抜刀術によって、首が飛んだ。血しぶきを上げ、倒れるグリク兄さんの体。木箱に跳ね返って、足下に落ちた首をクレア様が思い切り踏みつける。


「なに勝手に私の下僕を殺そうとしているのよ、このグズが! にしても弱い、弱すぎだわ。こんなのがマイズ男爵領の暴れ者とは笑わせてくれるものね。さて‥‥配下のグズども。かかってきなさいよ! 主人と同じ地獄に案内してやる」


凄まじい怒気を身にまとい、たんかを切るクレア様。まずい、黒い闘気が体に現れた。下手すると全員殺されかねんな。あまり好きじゃない連中だが、ここは‥‥。


「えいっ!」


「ぎゃあああ! 目に、目にナイフがああ!!」


可愛らしい声とは裏腹に、同郷の奴等に投げナイフを投げたのはライラだった。ちょっと待ってくれ!? いつからナイフを持っていた。そして、何で見事に命中させてんの!


「さすがはリューネ様。色々と能力を頂けて嬉しいわ。ようやくこいつらを殺せる。昔、散々いじめたあげく、最近は胸や尻を触ったりする変態どもだから。ねえ、あなた達。どんな死に方をしたい?」


穏やかな妹がキレているのは珍しい。だが、安心しろ。私も怒りの臨界を越えたからな。ロナウスは‥‥ふっ、青筋立てて大剣構えている。前言撤回だ。貴様らに死を見せてくれよう。土魔法を攻撃に使う時が来た!


「最早容赦はしない。妹の受けた屈辱、貴様ら倍にして返してくれるわ!」


「てめえら、俺のライラにそんな事をしてやがったのかあ! 頭かち割って、鮫のエサにしてやるぜ!!」


「ちょっと兄さん、ロナウス。私の獲物を残しといてよね」


それが合図となり、私達はグリク兄さんの取り巻きを殺しにかかる。ライラは素早い身のこなしでナイフを自在に操り、次々と仕留めていた。首を斬られてもがき苦しんでからの死だ。さぞや苦しかろう。


ロナウスは力任せに大剣を振り回す。それだけで人が軽く吹き飛び、頭は兜ごと潰れていく。私も負けてはいられんな。魔力を解放し、近くの土を巨大な針に変える。‥‥魔力の上限量と威力が上がっているな。もしかして、闇の女神リューネが力を与えてくれたのか。その力、早速使わせてもらう。


「恨むなら自分の行いを恨むんだな。くらえ、アースニードル!」


「ひいっ! 許して、許し‥‥ぎゃああ!」


「ごふっ。俺は、俺はもうダメ‥‥だ」


「助けてくれよ、アリスト! 俺達は仲間だ‥‥」


生き残り目掛けて、私は全力の魔法をぶつけていく。なんか世迷い言を言っていたが、気にせず殺していこう。やはり、男爵領の連中って弱いんだな。7人もいたのに、ほぼ秒殺に近いじゃないか。


「ふふっ、あははっ! こんな奴等を怖がっていたなんて、お笑い草だわ。これで、これで私は安心出来る。いきなり、襲われそうになったり、石を投げられたりしな‥‥く‥‥て」


「ライラ、辛かったな。今は泣いて良いぞ」


泣き始めたライラを私は強く抱きしめる。辛い人生を歩ませてごめんな。これからは兄さんがしっかり守ってやるぞ!


「アリスト~~。それは俺の仕事だぞおお!」


「なんでかしら? 妹だと分かっているのに、すごくイライラするわ!」


おい、そこの2人。美しい兄妹愛に水を差すな。そして、ナルガよ。必死に笑いを堪えてるんじゃない。なんか恥ずかしいだろうが!


「き、貴様らああ!! よくも、よくも私の邪魔をしてくれたな。許さん、許さ‥‥」


おい、ガマガエル。貴様もか! 貴様の場合は出てきたのが間違いだと思うぞ。だって、クレア様が滅茶苦茶怒ってるんだから。


「誰が何を許さないって、このガマガエルが! 私の島で勝手な事をしておいて、よく言えたものね。ルビ=ゴ=ガマ。何か言い分はあるかしら? 無いわよね、さっさと死ね」


「ちょっ! 少しは言い分を聞いて‥‥ひいいい!」


クレア様の刀がルビに迫るも、何者かに阻まれて跳ね返された。ゴツい戦斧を持つ凶悪な面構えの男を見て、私は思い出す。昔、領内で暴れてくれたゴロツキどもの事を。


「お前の傭兵団だったのか、悪鬼ゴール。あの時は好き勝手やってくれたな。しかし、その悪行も今日までだ!」


「抜かせ、アリスト。てめえとロナウスにやられた恨みは忘れちゃいねえ。ここで会ったが‥‥」


「はいはい、雑魚の口上なんていらないわよ。あんたの傭兵団は壊滅状態、ルビの商会は財産没収。貴族は当主を吊るし首にして所領を減らしてあげるわ。あんたとルビは‥‥そうね。乾いたわらを全身に巻き付けて、火をつけてあげる。そうしたら、あんた達も楽しく踊ってくれるでしょうよ!」


クレア様、血も涙もありませんが!? 見てください、あのルビが震えあがってますから。まあ、奴等の悪行はかなりのものだし、死んだらみんな大喜びでしょうけど。


「おい、姫様。血も涙もねえって噂は本当だったんだな。道理で結婚相手が逃げ出す訳だぜ。こんな怖い女じゃ、誰も付き合わねえだろう。てめえは‥‥」


「あいにくだな、ゴール。今はクレア様の下僕だが、いずれは私が伴侶になるつもりだ。こう見えて、なかなか素敵な女性なんだぞ」


私の言葉にルビとゴールは目を見開き固まる。ナルガとライラは吹き出し、ロナウスは親指を立てて歯を見せて笑っていた。あれ、私は何か変な事を言ったかな?


「「正気か、お前は! クレア姫が良いなんて、どこに目をつけている!?」」


「あっ? ここにちゃんと付いてるだろう。お前達こそ、目が見えてないのか?」


「「そういう意味じゃないんだよ!!」」


そんな問答をしていたら、いつの間にかクレア様が動いていた。2人に近づくや、後頭部を思い切り鞘で叩く。悪党2人は一瞬で気絶して、地面に投げ出された。


「見事な手並みです、クレア様」


「‥‥アリスト。後で覚えて置きなさいよ?」


クレア様は顔を赤くして私をにらみつける。うん、ちょっとからかいすぎたみたいだ。素直に反省しよう。奴隷にならずにすみ、将来の奥さんに会えたせいか、少し浮わつきすぎたな、気をつけないと。






次回、貴族と聖職者達の処分

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