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サプライズプロポーズ  作者: 猫之面
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サプライズなんていらない

「結婚して下さい!」


彼からプロポーズされた。


『マジか』

心の中で呟いた。


それは、レストランでの出来事。



……数日前、彼から


「前にテレビで見たレストラン美味しそうだったよ。雰囲気も良さそうだったし、今度行ってみない?」


とLINEがきた。


店の名前を聞いて、ネットで検索すると確かに雰囲気が良く、SNSで見る料理の写真はどれも美味しそうだった。


「いいね。今度行ってみたいね」

いつものように気軽に答えた。


すると、数日後


「この間の店、予約が取れたよ」


と彼から連絡があった。


次のデートの約束をしていた日に予約が取れた。

というのだ。



しかし、気になる事が……


その店は、値段が高めだった。


次のデートは、どちらかの誕生日や記念日でもない。

普段のデートでなら行かないような店だ。


違和感を覚えたが、断る理由もなかった。



デート当日。


会った時から彼の様子が、いつもと違っていた。


話をしていても、どこか上の空で、ソワソワしていて何となく緊張しているようにも見えた。


店では予約していたコース料理が提供され、

見た目もきれいで、どの料理も美味しかった。


それでも、彼は目の前の料理よりも、何かを気にしているようだった。


デザートが運ばれてくるタイミングで、

デザートと共に店員が花束を運んできた。


彼が、その花束を受け取り、

いつの間にか手に小さな箱を持っていた。


小さな箱を開け、花束と指輪の入った小さな箱を私に差し出した。


そして、

「結婚して下さい!」


店内にはプロポーズを盛り上げる曲が流れ、食事をしている他の客達が、彼と私の様子を注視している。


私の返事待ち状態………


『はぁぁぁぁぁぁぁぁ、ほんと勘弁してほしい』


この状況で


「ごめんなさい。今はまだ結婚できません」


なんて、言おうものなら、彼に協力した店側は落胆。


この場に居合わせた客達も、

店内の雰囲気も気まずさに包まれる事、間違いなし。


私の返事次第で、この場の雰囲気が、

天国か地獄になるか決まってしまう。


ある意味、この状況は拷問だ。



……三ヶ月前、彼からのプロポーズを断った。


「今はまだ結婚は考えられない」


「いつ結婚したいと思うか自分でもわからない。あなたが早く結婚したいなら、私と別れて別の人を探した方がいいかもしれない」


私の正直な気持ちを伝えた。


彼は

「結婚がしたいわけじゃない。君と結婚したい。

君と一緒に居たい、と思ったんだ」


「君と別れて他の人を探すなんて考えた事もない。

君が結婚に前向きなるのを待つよ」


そう言ってくれた。


嬉しい反面、申し訳ない気持ちになった。


彼と過ごす時間は楽しいし、彼の事は好きだ。


だから、恋人のままでいられるなら私にとっては嬉しい事だ。


でも、私は彼と結婚して今の生活が変わってしまう事が怖かった。

自分の時間、自分の人生を大切にしたい。


私の我儘に彼を付き合わせるのは、申し訳ないと思い、彼と話し合った。


そして、結婚という形にこだわらず今まで通り付き合って行くことで、お互い納得した。


はずだった。


その時の彼の言葉に甘え、恋人関係を続け、

今回のレストランの予約に違和感を感じながら断らなかった。


私にも落ち度はある。


だけど、彼のやり方は汚い!!


この状況で私が断ったら、彼は可哀想な人。

私は酷い女だと思われるかもしれない。


店側や状況を知らない客達を巻き込み、プロポーズを断りづらい状況を作り出すなんて!!

なんて、卑劣なやり方だろう。


私は周囲をゆっくりと見回した。


客の中にスマホで私達のやり取りを撮っている人がいた。


よく見ると、以前、会った事のある彼の友人だ。


私は、彼に猛烈に腹が立った。


彼や彼の友人、彼に依頼された店側にとっては、

幸せなサプライズのつもりかもしれない。


その一部始終を撮影して、プロポーズが成功したら、

この映像を結婚式で流すつもりでいるのだろうか?


私は心に誓った。


『この人とは絶対に結婚しない!』


そして私は彼に、にっこりと微笑んだ。



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