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第3話 時給は1500円

 汚れたテルを洗う為に小川に向かいながら話す二人。


「NINEで相沢さんに、異世界へ呼ばれていますが参加しますかって来てたんっスけどここマジ異世界ッスか!?」


 テルはそう言い、きょろきょろと辺りを見渡しながら直人の後をついてきている。


「そうらしいな、俺は異世界転移したみたいなんだよね。天使っぽいヤツがそう説明してたし」

「マジすか! 異世界転移ッスか! 天使に会ったんッスか! ずるいっすよ~先輩! どんな子だったんッスか!?」


 直人は出会った天使の事を思い出しながら


「輪っかのついた金髪の」

「金髪の~……」

「メガネを掛けた」

「おぉ! メガネッすか!」

「翼の生えた……男だ」

「……男ッスかぁ……夢も希望もないっすね……」

「男でも女でもどっちでもいいけどな。」

「何言ってんすか! 男の天使とか誰得ッスか! そんなラノベ嫌ッス!」

「まぁあまり需要はないだろうな~」


 そんな感じで話していると小川が見えてきて、テルは小川へと駆けていく。


「先輩! マジヤバいッス! めっちゃ川綺麗っすよ! 魚も泳いでる! 食えるんすかね?」


 などと言いながら、小川ではしゃいでいる。しばらくするとはしゃぎ疲れたのか直人の方へ戻ってきた。


「異世界パないっすね! てか何で先輩は異世界に居るんっすか?」


 直人はテルに経緯を話した。


「レベル制の魔法のあるファンタジー世界ッスか。まるっきしゲームの世界ッスね。ステータスとかって見れるんっすかね?」

「見れるんじゃないかな? どうやるんだろう? ステータスオープン? おっ、出た」

「見たいっす! 見たいっす!」


 直人たちは目の前にでてきた画面を覗き込む


「まんまゲームっすね」

「そうだな」


 画面の中には自分の立ち絵が表示されたステータス画面。立ち絵をスライドさせるとくるくる回って360度確認できそうだ。そこには地球に居た頃と変わらず黒目、黒髪で細身の見慣れた自分の姿が映し出されていた。次にステータスを見ると



ステータス

名前:相沢直人

種族:人間

性別:男

年齢:28歳

職業:魔導士

称号:異世界人


Lv1

HP:C

MP:A+

攻撃力:C+

防御力:C

素早さ:B-

器用さ:B+

賢さ:S

運:C

能力:魔法(火、水、風、土)

アビリティ:火属性魔法Lv10 水属性魔法Lv10 風属性魔法Lv10 土属性魔法Lv10 MP増加Lv5

ギフト:召喚魔法(異)Lv1



「これって強いんだよな?」


 直人はそう言い、テルの方を見る。すると、テルは肩をすくめ、


「どうなんっスかね? ゲームと同じで、アビリティの上限はLv10までなんっスかね? これタッチしたら説明とかでないんっスかね?」


テルはそう言いながら、表示されたアビリティの文字部分をタッチすると、文章が出てきた。どうやら説明文のようだ。


他項目に関しても、タップすればその詳細な意味合いが表示された。


 アビリティとは、その対象に対するプラス補正でLv1で1割のプラス補正が効く。Lv10が上限。最大で、元のステータスの2倍の補正が掛かる。そこにはこう書かれていた。


「ヤバいっスよ! これチートッスよ! ここから先輩の無双が始まるんっスね!」

「いや、無双なんてしないから」

「えッ! しないんっスか! じゃ俺が無双するッス! 俺もステータス見てみるッス! ステータスオープンッス!」


 テルは自分のステータス画面を覗き込み……


「びッ微妙ッス」


 テルの落ち込んだ様子から直人は横からテルのステータス画面を覗き込む。



ステータス

名前:吉田輝

種族:人間

性別:男

年齢:25歳

職業:レンジャー

称号:異世界より召喚されし者


Lv1

HP:C+

MP:C

攻撃力:C+

防御力:C

素早さ:S-

器用さ:S+

賢さ:B-

運:A

能力:魔法(幻術)、鑑定眼、危険予知

アビリティ:二刀流Lv5 投擲Lv10 

ギフト:因果回避Lv1



「悪くないんじゃないか?」

「無双できそうにないッス」

「足の速さでなら無双できるんじゃないか?」

「全然嬉しくないッス」

「Sが2つもあるし、凄いとおもうぞ?」

「そうッスかね?」

「とりあえず能力の詳細見てみよう」


 HP、MP、攻撃力、防御力、素早さ、器用さ、賢さ、運は、SS、S、A、B、C、D、E、Fで表示され、SSが最高で、Fが最低。一般人はEが平均とされている。これは本人のレベルに対する評価である。例えば、Lv1のSランクよりも、Lv20のCランクの方が優れている。つまりこの評価は強さの基準ではなく才能の基準である。


 そして、ステータス画面には他にも能力という表記がある。能力とは、個人が使える能力であり、つまりスキルのことである。


 最後に、ギフトは世界を渡った者が使える能力だ。これはゲームにはなく、直人たちも初めて見るものだった。


 確認を終えたのかテルは直人の方を振り返る。さっきとは打って変わってその表情は、明るい。


「ヤバいッス! 鑑定眼と因果回避ヤバいッス!」


 テルはそう言い直人にスキルの説明をし始めた。テルの説明によると、鑑定眼は、生物やアイテムなどを鑑定できる物らしい、かなり便利な能力のようだ。だが、本当にヤバいのは因果回避の方だと思われる。


 その内容は攻撃を受けても初撃の場合は必ず回避し、5分経てばそのスキルは再発発動する。5分内に再度攻撃を受けても、二分の一で回避できる。1/2の確率で攻撃が当たったという因果を回避する。5分に一度必ず回避するというものだ。使ってみないとはっきり分からないが、これがどんな攻撃でも回避できるという事ならかなり強力なギフトではないだろうか。


 テルのステータスの説明が終わると、次は直人がテルに説明を始めた。能力はそのままの意味なので、召喚魔法(異)についてだけ直人は話す事にした。


「召喚魔法(異)はスマホを召喚する魔法で、そのスマホのNINEを使ってフレンドを召喚できるらしいな」

「スマホを使ってフレンドを召喚ッスか、新しいっスね!」

「説明によると、召喚された者の体は向こうに残っていて意識不明の昏睡状態で、あちらとこちらの時間軸の経過は同じという事だ。つまり、地球のテルは意識不明の状態で倒れている!」

「マジっスか!? バイト中だったんっスけど! 俺倒れてるんっスか!?」

「バイト場で倒れてるんだろうね、意識不明でな、ぷぷっ」

「マジか~」


 テルが困った様な焦った様な顔をしていたが直人は構わず説明を続ける事にする。


「説明を続けるな――」

「ちょっ! 説明続けるんッスか! 向こうの俺の状況とか心配にならないんっスか!?」

「大丈夫だろ、救急車で運ばれてるだろうから」


直人は笑いを堪えながらそう答えた。


「全然大丈夫じゃないッス!」

「まぁ真面目な話、バイト中に倒れたお前の体は間違いなく病院のベッドの上だろうから暫く戻らなくても大丈夫だろ」

「確かにそうっスね」


 テルが納得すると直人は再び話し始めた。


「じゃ説明を続けるな。召喚された者のレベルは、召喚士のレベルに依存する。召喚された者が得た経験値は、召喚士が得る事なる。簡単に言うと、レベルの共有かな? 俺とテルで経験値稼ぐと、二人の経験値を俺が得て、俺のレベルが上がるとテルのレベルも依存して上がるんだろう」


 それを聞きテルは考える。それは一人分の経験値で二人がレベルアップと言う事で、大概チートなのではないかと。



「あと帰還方法は、俺が触れて帰還させるか、死亡で帰還の二つ。同時に呼べるのは二人。しかもこの召喚魔法(異)はなんと!  時給ももらえるんだぞ!!」

「マジっスか!  時給ッスか!  いくらっスか!」


 テルは目を円マークにして直人に距離を詰めよった。直人は腕を組み勝ち誇った表情で言い放つ


「聞いて驚くなよ……1500円だ!」

「ちょっ、俺のバイト時給より高いッス!  先輩一生付いていくッス!」


 そう言いテルは直人をキラキラした目で見つめている。


「あぁ、よろしくな。問題はあと一人誰を呼ぶかだな。誰がいいかな?」

「先輩がNINEに誰を登録してるか分かんないッスけど、昔のギルメンでって言うならカイ先輩一択じゃないッスか?」

「カイか~、クランを抜ける時に喧嘩してから微妙なんだよな」

「え! そうなんっスか! 先輩の葬式の時一番泣いてたのカイ先輩っスよ」

「えッそうなの?  あいつが泣くようには思えないんだが?」

「マジっスよ!  だからカイ先輩がよくないッスか?  頼りになるし」

「確かにな、ゲームみたいな世界で一番頼りになりそうなのはカイだよな」

「決まりッス!」


 直人はスマホを召喚し、NINEでカイの名前を探し招待を送る。しかし何も起きない。

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