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異世界で学園生活!  作者: 環 時雨
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夢の中

目の前には長白髪に王冠を被ったいかにも王様という感じのおじさんと、その秘書のような人。黒髪のポニーテールで滅茶苦茶美人だ。

両脇にはフードを深めに被りまたしてもいかにもな杖を持った人物が一人ずつ。そして、すぐとなりには見慣れたあの先輩が何やら助けを求めるような目でこちらを見ている。少しいい気味だと思う。


辺りは城の中のような、豪華な飾り付けがされており、おまけに白くて広い。バカみたいに広い。どこの豪邸なのだろうか。というかここは何処なのだろ

うか。


つい先ほどまであの薄暗い図書室で読書を嗜んでいたはずだ、少し雑音もあったが。なのにどうして、何故、こんな訳の分からない場所に来たというのだ。

そう少し自分もパニックになりながら、私はひとつの結論に至った。


そう、これは夢だ。


よくわからない夢。

でもきっと自分の深層心理にあるのだから懐かしかったり見覚えがあったりするのだろう。

今のところは先輩以外知っている人も物もないが。


ああ、夢、ということは。この先輩も自分が求めて、自分の意思で作り出されているということか?それは何とも不服だな。どこかで先輩を求めているということか...。

うん、やっぱりいやだな。


まあそれはそうと。これは所謂明晰夢、というやつか。

初めて体験したが、こうもリアルだとは思わなかった。


まずにおいがする。何も汚れていない、クリーンな空気だ。

音も聞こえる。全く何を言っているのかわからない言語で王様らしき人とそのポニテ秘書さんが欣然と話している。目も見える。当たり前だ。見えてなかいなかったら目の前の人たちはどうやっているってわかったんだって話だ。

触覚か?残念ながら私はその人らに触りに行ってはいないし触ったって見た目はわからないだろう。なんでそんな至極当然な話をしなけりゃならないんだ。っと、話してはいなかったな。

とにかく、その触覚も、先輩が少し私の袖のすそに触れているのを感じていて、かなりリアルにあるとわかる。

味覚は何も食べていないのでまだわからない。

飴でもあればいいのだが、残念ながらそんな都合のいいことはないようで、周りにあるのはすべて無機質と人間だけである。


リアルだ。まるでこの世界を本当に生きているように。

本当にこの場にいるように、そう、錯覚してしまうほどに。


とはいえ私が本当にいるところは地球で日本で学校で図書室だ。いつからが夢かもわからないが、確か昼休み終了五分前だったはず。

早く眼を覚ましてカギを返しに行かねば遅れてしまう。



さてどう目を覚まそうか、といろいろ思案していた時、今までずっと私たちを放置していた王様らしき人、いいや、もう王様でいいとも思うのだが、そのひとが私たちに話しかけてきた。

しかも、さっきの訳のわからない言語で。い、いやいや、いくら自分の夢とてどぎまぎはするし、怖いものは怖い。そんな覇気のある見た目で何と言っているかわからない言語を話されたらいくら笑顔でも怖い。本当に。


というか、自分にそんな言語の引き出しがあったとは。今、驚きが極まりつつあるくらいだ。

先輩も困ったように首をかしげて何も言わない。おい、いつものコミュ力はどうした。こういう時こそ頼りになるってもんじゃないのか。


そういう私も無言だ。下手に何か言ったら何か変にとられたりするやもしれない。まあ夢なんで関係はないのだが。


と、そのまま何も言わないでいると今度はそちらのほうが困ったような顔をし、王様がポ二秘書さんに何やら指示を出す。


そうすれば彼女はこの広い部屋の一番奥の扉を開いてどこかへ向かった。

そして私は誰も言葉を放たない非常に居心地の悪い静寂のなか待ち続け、彼女は三分ほどたってからまた訳の分からない人間を連れて帰ってきた。


訳の分からい人間とは何かって?いやいや、本当に訳が分からない。

髪色は群青か青紫といったところで、髪の毛は右側は肩まで、ちょうど真ん中で分けられ左側は太ももまでかかるほどの長さで、まちまちである。


どうやって、どうやってその髪型になった。何故、なぜ分けられているんだ。どういう切り方したらそうなる。カリスマ美容師がおしゃれと称してそうしたのか?

それとも古き良き理髪店の店主が半分だけ切って面倒くさくなってやめたのか?

どちらにしろ、その髪型は独特すぎるのだが。


またそう頭の中で永遠と疑問符を打っていれば、そのまちまちさんはまた別の言語で話しかけてくる。


でもこれは何か聞いたことのあるような、もう少しで聞き取れるような、若干意味が分かるような、そんな...と思いに浸っていたところ、これまで一言も発さなかった先輩がはじめて声を上げた。


「それ!英語じゃん!やっとわかる言葉来たよ!怖かったよ!マジでわけわかんない言葉話し出すし!ほんともう無理だってだから!」


彼女は今まで話せずため込んできた恐怖を一気に吐露するように話す。

そういや先輩は帰国子女、というか、親が定期的に海外に行き、それについて行っていたんだっけか。よくもまあ分かったものだと思えば..そらそうか、といったところか。


で、でも英語がてんでだめで全く聞き取れなかった私の代わりに気づいたのは誉めなくもないんだけどねッ!


そんなバカな話はおいといて。

英語がここにあったということは私の英語の成績もまだ捨てたもんじゃないのか。

それだけ奥底の深いところに眠っているなら掘り返すのも骨がおれそうだが。


てかあれか、先輩がそう言ったのもそれに気付いたのも全部私の意識のせいってことか?

いやいやそれはないだろう。いくらなんでもそんな


…いやしかしここは夢以外あり得ないし…いやいやでも私が先輩のことをわざわざよぶか?夢にまで。

ああ、もう訳が分からない。

しかしまあとりあえず目を覚ませば全て解決する話だ。その方法を探すしかない。


そう心に誓ったとき、まちまちさんが今度は私たちが慣れ親しんだ言語で話しかけてきた。


「なんだ日本人か。それなら先にいってくれよ。ま、とにかく私が日本語を話せたことと、君らが日本人であった運に感謝するんだな」


そう、流暢な日本語で。

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