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ハーレムだがノットイージーモードの文芸部!  作者: なしあじ
Chapter-01 出会いとvs.生徒会長
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P.005 まりあに出会い、光に困惑

〈同期たちとの出会い〉


「いいか弥、最初から全てを正確に暗記しようなんてのは非効率の極みだ。」


「つまり......どういうことだってばよ!」


 せっかちな弥に答えを、潜影○手!


「たとえば、『をかし』って古文の単語があるだろ。その意味はなんだ?」


「えっと......趣深いとか滑稽とか、えぇ......」


「それで正解だ。しかし足りない。でもそれで十分だ。」


「おめぇ何言ってんだぁ?」


 絶妙に腹の立つイントネーションだが、弥の言わんとすることも理解できる。ひとまず先へ進もう。


「つまりだ。単語の暗記において重要なのは、まず手始めには出現頻度の高いもの、あるいはその語の大きな意味を優先することなんだよ。後者なら、『をかし』は英語でいうところのinterestingとかfunnyの意味がある。どっちも日本語で訳せば面白い、だろ。『をかし』を面白いで覚えておけば最低限の暗記で済むし、文の中に出てきたときにニュアンスがfunnyなのかinterestingは文脈判断をすればいいじゃないか。」


 覚えるべきは最低限。国語だけに限ったことじゃなく、それが学びを長続きさせるコツのようなものである。


「お、おぉ。確かに、それすごくいいな!助かるぞ!けど篤哉、なんかめっちゃ止めどなく喋るな?教えてもらってアレだけど。」


「あぁ......」


 弥の指摘はごもっとも。昨日眞名田会長に啖呵を切ってから丸一日。昨日決意した『可能性を拓くこと』で、まるで自分が自分でないような感覚を抱いている。その充足していながらも地に足がつかないような感覚は、俺を饒舌な男へと変貌させていた。


「まぁ何でもねぇわ。なんとなくテンション高めなだけだ。」


「あっ、そ......」


 そのことを弥にひた隠しにする必要も無かろうが、なんとなく話してしまうと心持ち穏やかでいられないよう思われた。親友を信頼していないのかと問われると、している、という答えにはなるのだが......奴に『ハーレム』じゃねぇかと突っ込まれる経験があるため、結局入部したんじゃねぇかとかハーレムの主じゃねぇかとか女子たちを救うためとかかっこいいぃフゥ〜などと囃し立てられることは容易に想像がつくからだ。


 そんなさなか、逃亡のチャンスがやってきた。


「あっ、バイトの時間だ。それじゃあ俺は行くぜ。」


「江頭かよ。というかうちはバイト禁止だぜ?篤哉さんよぉ?」


「ものの例えだよ。ちょっと用事があるんでな。」


 寒いギャグを放ったような気分であるが、用事があるというのは紛れもない事実だ。そう、あの文芸部へ。広げていた書籍類を手早く仕舞い、何も知らない弥を背後にして去る。


「ほな。」


 背後を向けつつ、腕を上げ手の甲を見せ、エセ関西弁話者よろしくつぶやく。昨日午前までの自分はどうしたのだろう。少しだけ顔の見えない弥に対して気恥ずかしくなった。


「うわぁ!?」


「おっとごめ、って、なんだ光か。」


 教室を足早に出ようとしたところ、廊下を進んでいた光と鉢合わせになった。さながら住宅街の遅刻曲がり角のようである。


「なんだとは何よ。」


「あぁ、他の女子じゃなくてよかったなと。光ならぶつかっても胸にはあたいだだだだだだだだだだだだ」


「アンタがいたという人々の記憶ごと潰すわよ。」


「絶妙に恐怖煽ってくんなぁ!?いやいてぇっての!」


 俺も一切光をおちょくらないわけではない。弥ほどの頻度ではないがたまに放つ。そうしたらこの様である。名前のごとく、彼女は光の速さで俺の左耳を信じられないような力で引っ張りつつ、俺を信じられないような言葉で恫喝する。危うく耳なし芳一、果てには尊厳を奪われた人間になるところだった。そして背後から愉快な笑い声も聞こえる。


「で、どこか行こうとしてたの?」


 これまた光の速さで元通りになるから内心で困惑してしまう。


「まぁ、ちょっと用事でな。光こそなんかあるのか?」


「そう、私も用事あるから帰ろうかなって。」


 おそらく光は学校を出てからのことを述べているのだろうが、俺は事情が少し違う。しかしながら弥同様に真実は濁しておく。


「でもその前にあそこでゲラゲラ笑ってるたわけを殲滅してから帰るわ。」


「承知しましたお嬢、わたくしはここで......」


 実行犯だけではなく、傍観者も同罪とはこのことかと強く実感する。極道の鉄砲玉のように光に媚び諂い、そこからの当事者であることを俺は回避。流れに身を任せ、改めてその場を去る.....



 思い返してもみれば、俺、早く来すぎてしまった。部活までフリータイムがあるということで、時間潰しのために教室で奴に古典特講を開催したり、光と一悶着付き合っていたのだが......潰しきれなかった。


 身の周りからも部室ーオフィス内からも物音らしい物音はしない。先輩たちはまだ授業中のはずであるから、自明にまだ誰も来ていないことになる。ただ......今さらながら入ってしまっていいものだろうかと思う。初出勤である自分には、単独オフィスに乗り込むことには心理的な壁の存在を意識してしまうからだった。そんなことを考える夕方、時刻は十六時をすぎた頃......次第にあれこれとケチをつけて考えるのが気怠くなっていた。「まぁいいか」と心中でささやき、若干の勢いを含んでオフィスの扉を開け放つ。


 照明がついておらず陽の光がわずかに差し込むこと、先輩たちがいないこと以外には昨日俺がいたオフィスと変わりない。そう見受けられると思ったのだが......


「あっ。」


「ど、どうも......」


 女子がひとり、ソファに腰掛けていた。何をするというわけでもなく。図らずも俺とその女子とで視線がかち合い、俺は腑抜けた感動詞を届け、一方の女子は顔を俺から逸らした。側から見ればマジで恋する何秒前などと茶化されそうな状況であるが、事実............



この子めっちゃかわいい。



衝撃が俺を襲ってやまなかった。学年カラーは俺と同じということで高校1年だとは判断がつくが、明らかに同年代女子よりも幼く見える身なりや動作に......庇護欲を覚えずにはいられない。


「あの......もしかして南原篤哉さんですか?」


「は、はい。そうですけど。」


 なんと素っ気ない返答よ。


「やっぱり......!わたし、石川まりあっていいます。1年5組で、先週入部しました。どうぞよろしくお願いします......!」


「あぁなるほど......」


 自己紹介を耳にしてここに彼女がいる理由には納得したが......気を抜くとそれが頭に入らなくなりそうなほど、石川さんから得られる視覚・聴覚情報に溺れていた。小柄な体型、長めのボブ、丸々とした眼、儚さを持つ細くもかわいらしい声......俺のタイプにどストライクである。俺はロリコンというわけではないが......これ以上の議論は石川さんに悪いな。


「石川さんはその、どうしてこの部に?」


 そして気になることがある。変人気質な部長をはじめとする魑魅魍魎もとい様子がおかしな先輩たちが牛耳るこの部になぜ石川さんともあろうお方が足を踏み入れようと言うのか。甚だ不思議であるうえ、より庇護欲に駆られる。やはり先輩たちに半ば無理やり入れられたのだろうか。


「わたし小説を読むのが大好きで、いつか自分でも書いてみたいなぁって思ってたら文芸部があるのを聞いてそれで。先輩方も優しくて丁寧にしてくださるので楽しいんですよ......!」


「は、はぁ。それはそれは。」


 なんだろう、石川さんの眼の中の輝きがとても眩いし、とても生き生きとしている。あまりにも純粋な目的を聞いて、謝罪の意すら芽生える。ただ同時に、『優しくて丁寧にしてくださる』というところに対して違和感も芽生える。とても自分にはそうとは思えない。不敬を承知で......先輩たち(あいつら)、どんな印象操作を石川さんに仕掛けたんだ?


 そんな考えを巡らせた直後、噂の人物たちが登場した。正直に言って、もう少し......いやもっと石川さんとの時間に浸っていたかった。欲望丸出しだ。


「おぉ南原君。石川くんも来ていたんだね。」


「彼女の方が先に来てましたよ。紹介もしていただきました。」


「まりあちゃんかわいいよね〜んぅ〜!でも篤哉くんも十分かわいいしかっこいいよ〜!」


「はいどうもどうも。」


「ほら南原ぁ!まりあと話してる暇があったら仕事しろ!」


「だから理不尽なんですって......痛い痛い痛い!」


 部長はひとまず落ち着いているから特に問題ない。しかしながら楠見・椛島各先輩は悪い意味で平常運転だから困る。楠見先輩のほうは塩対応をすればしょぼくれて諦めるのだが、椛島先輩は実力を行使して欲望を満たすのだ。これを見て石川さんは何を思うのか......


「石川さん、大丈夫?」


「え、どうしてですか......?」


「いやこの状況、俺なら逃げ出したいので。」


「う〜ん、よくわからないけど、わたしはこの部が楽しいですよ?」


 ダメだ石川さんあまりにも天使がすぎる......心からの俺の思いである。やはりなにかひどい印象操作を施されたのだろう。



「それで部長。ちょっといいですか。」


 これ以上先輩たちに変化や進展を望めないため、俺は割って今日の本題に移ろうと切り出す。


「待ってくれ南原君、さらに1年生で新入部員がいるんだ。まず紹介をさせてほしい。」


「あぁ......それはもちろんです。」


 どうやらすぐには始められないようだ。さらなる新入部員......石川さんはともかくとして、とんだ物好きがいたものだとある意味での称賛をその人に送っている。


「それじゃあ、入って。」


 部長がその人物を呼び込む。男女比率があまりにもおかしいから男子だったらいいなとか、クセの無い人がいいなとか、願いは全く尽きない。祈りを力の限り捧げていると......その人は扉から現れた。しかしーそれは俺のよく知る人物で。


「光!?」


 自分でも驚くほどに大きな声を上げてしまった。周りも驚いたようで、さすがに申し訳ない。いやそんなことはどうでもいい!


「な、なによ......」


「なによ、じゃねぇわ。どうしてだよ!?」


「南原君知り合いなのかい?いやね、さっき私たちが部室前まで来たら彼女がいて声をかけるやいなや『入らせてください』と言ってくれたから入部してもらったんだ。」


「部室前って、お前......つけてきたのか?」


「さぁ?」


 さすがにこの返答で殴りたいという衝動に駆られた。全身で抑えたため未遂で済んだが。先輩2人も『つけてきた』という一節に反応してなにか小声で会話している。本当にやめてほしい。


「まぁいいじゃないか南原君。とりあえず本荘くん、自己紹介を。」


 納得はできない。物申したいこともごまんとあるが、部長にその場を流されてしまったため、渋々流れに身を任せる。


「1年2組の本荘光です。文芸の制作は分からないことも多くあるので、困ったときには助けてもらえると嬉しいです。よろしくお願いします!」


「............」


 まるで定型文のような紹介文をまるで読み上げるように喋る光、率直に言って気味が悪い。


「おねがいします〜」


「よろしく。」


「1年生だ......よろしくね!」


 しかしながら他の部員たちは手放しで歓迎している。どうしてそこまで喜べるんだ......


「さて、私からは以上。南原君、よろしく頼む。」


「あっ......はい、分かりました。」


 すると俺の番が回ってきてしまった。もう俺の心理状態はグチャグチャとしているが、とりあえず、仕事に取り掛かろう。

久しぶりの投稿です。リアルがテストや文化祭でゲロ忙しかった(語彙力)。そしてその文化祭で文芸部を引退してきました。とても感慨深いものがありましたね...... こちらの執筆に本腰を入れたいところですが、受験勉強もあるので変わらず息抜き投稿になりますのでその辺はご勘弁......

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