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ハーレムだがノットイージーモードの文芸部!  作者: なしあじ
Chapter-01 出会いとvs.生徒会長
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P.003 妹と幼なじみよ......

〈南原 荏舞という妹〉


「ただいマンモス」


「寒すぎてサムギョプサルになったわね。」


「はいはい一般女性一般女性。」


 クセが強めの3人の女子先輩たちから解放されようやく帰宅。文字通り実家のような安心感を身に染みて感じているのだが、よく考えてもみれば、ただ今ソファ上でゲームに没頭する我が妹も十分にクセが強めであった......まぁ『ただいマンモス』と言ってしまうあたり、家庭においてはキャラクターが変わってしまう俺がとやかく言えることでもないが。


「というか荏舞、さすがにもう少しなんか着ろよ。風邪引くぞ。」


「フン、いいんだもんねー。エマは絶対に死なないのだよ?」


「文字通りの中二病か?いてぇよ。」


 南原(なばら) 荏舞(えま)、俺の妹、花の中学2年生。そいつはキャラのクセ強さと共に、家族の目を憚らない身なりという点でも個人的に定評あり。水色の体操着のハーフパンツ、ワンポイントの白いTシャツ、フワリと2本に結った髪の毛。それ以外は肌色の部分であるから......いくら実の兄といえど、なんとなく気にしてしまう。これでも、れっきとした思春期の少年なのである。『やめてほしい』と言わんばかりに追加の着衣を指令したのだが、手元のゲームに面と向かっては俺の話にはおざなりな返答しかしないでいる。こうなると諦めるしかない、義務にこそばゆさを転嫁するしかない。


「今日は母さんも政哉さんも遅いから先に飯作って食っておけと。次のセーブポイントまで行ったら終わりにして手伝えよ。」


「今日はサムギョプサルですかー?」


 どうやら少し前の一般男性のモノマネでサムギョプサルを食べたくなって、所望のことらしい。いや平日にそんなもの作ってたまるか。


「んなもんやったら家中油塗れじゃ。普通にカレーだ。」


「エマはチキンカレーを望むー」


「わかったから早く手伝いたまえ。」


 どこか覚束ない兄妹で始めるクッキング、始まり......!



「にんじんはこんなもんでいい?」


「オーケーオーケー。」


 両親曰く、どうしようもなくクソ忙しい日(原文まま)が週に1回はあるんだとか。その日は兄と妹2人がかりで夕飯作りにあたるわけであるが、年間52週で少なくとも週1回調理をしているとなれば、並大抵の中高生よりも家庭料理に関しては手前味噌ながら自信がある。妹の野菜カットも先ほどまでのだらけようとは打って変わって手早く、かつおうちカレー用として良い塩梅に仕上がっている。


「はいじゃあアツ、煮込みよろしく〜」


「合点。」


 そして程よくカットされたじゃがいも、タマネギ、にんじん、鶏肉が出揃った。あとは俺がこれらの食材を、沸騰したお湯の中に......


「センジャ!」


「えぇー、ちゃんとしたヤツ言ってよー」


 妹よ、ガッカリしたところ申し訳ないがセンジャを略さず言うわけにはいかないのだ。万が一権利関係に引っかかっても困るから。何の権利関係とは言わないが!


 そんなアレと信じてやまない一般男性を信奉してやまない兄と妹。主観にはなるが普通以上に兄妹仲は良好なものと思われる。煮込みを見張る俺と洗い物をする荏舞との間でちょうど話のタネが切れたこともあり......一応は信頼のおける荏舞に例の文芸部の話を持ちかけてみた。


「荏舞さんよ。」


「なぁにー?」


「俺が部活入るって言ったらどう思うよ。」


「高校では入らないんじゃなかったけぇ?まぁ別にいいんじゃないー?」


「あぁそう......それで文芸部なんかはどうかなと思ったんだが。」


「えっ。」


 しばらく話し合っていると、荏舞は『文芸部』という後にあからさまに拒否反応を示した。洗い物の手を止めて、こちらにも顔を向け。


「いや、ダメなのかよ?」


「んー、ダメってことじゃないけど......文芸部ってなんとなく女の子が多そうじゃーん?ハーレム状態になると、アツがだらしなくなりそー。」


「完全に偏見だ。」


 まぁ今回の場合に限っては妹のイメージ通りではあるのだが......こうも偏り多い見識が多いと年長者としては咎めようという責任感に駆られる。それとだらしなくなりそうという指摘は全くの心外だった。


「それに女関係でだらしなくなるほど俺はクズじゃねぇ。」


「そう?だってこの間アツの部屋のベッド下から『ねとられ』って書いてあるタイトルの本が見つかったからてっきり」


「ちょっと待てアレ見つかってたのかよ!?」


 ベッドの下に所謂エロ本を隠すとはなんと古風な......そう自分自身でも突っ込みたくなるが、弥から半ば一方的に押し付けられて、どのようにしたものかと気が迷った結果のことである。俺は絶対に悪くねぇ。というより、それを荏舞が発見していたこと、果てはそのことを何の気負いもなく作業の片手間で述べたことに動揺を隠せない。


「いやアレは弥から......というか荏舞は『ねとられ』の意味を知ってるのか?そもそもアレ読んだのか?!」


「そうだなー......禁則事項です!」


「いやいや俺も世代じゃないけれどもいくつだお前。」


 某未来人仕込みのセリフによって俺の問いかけへの返答は曖昧に。あまりディープなフェチの世界に踏み込んではほしくないものであるが......苦悩していると、荏舞は行っていた洗い物が完了したようで。


「でもやっぱりいいんじゃなーい?文芸部。アツめちゃくちゃ国語得意だし、もっと得意が伸びるぅ。」


「まぁ、そうだな。先輩からもそう言われた。」


 妹から良い評価を受けるのは、悪い心地はしない。しかし、一通りの学習が満足なレベルの妹からそのように言われると、心穏やかでない自分が存在するのもまた事実だ。突出した得意と全てをまんべんなく熟せる得意はやはりわかり合えないかと、ちょっとした失望さえ抱いてしまう。全てをまんべんなく伸ばそうという意図で部活動加入を見送ったというのに、その突出した得意を積極的に活用して、かつ全てをまんべんなく伸ばすことが中途半端になっては本末転倒ではないか。そんなことを思うと、口にこそ出さないが......まんべんなく熟せる荏舞に対してわずかながらももどかしさを突きつけてしまう。


「あっ、そろそろルーを入れないとじゃん?」


「煮立ってきたか。だな、出してくれ。」


 しかしながらそのもどかしさも料理を前にしてはどうでもよくなってしまうのである。自分内部での議論は前進したかのように見られたが、やはり、俺の心持ちと決断は変わらない。とりあえず、テキパキと動く妹を手伝わねばな。




〈本荘 光という幼なじみ〉


「ハーレムじゃんかよ!」


「お前まで荏舞と同じこと言いやがる。」


 翌朝、弥と歩く通学路にて。此奴にも昨日の荏舞が言ったようなことを投げかけられた。こちらのほうがテンション高めであるから、対応の気怠さは荏舞よりも数倍多く感じる。


「おいコラそんなめんどくさそうな顔するんじゃあないよ。」


 俺はポーカーフェイスというものが得意ではない。加えて弥とはほぼ生まれたての頃からの付き合いであるから経験則によっても俺の感情はすぐ暴かれてしまう。これまためんどくさいったらありゃしない。ただ同時に、身から出た錆でもあるのだが。


「それで、どう思う?」


「まぁ真面目な話、高丘弥的には最初に決めたことをやり通すべきでは?と思うがね。部活より勉強を優先したいならそれでもいいんでは?」


「昨日の言い分とはえらく違うな。」


「それはぁ!どうしようか本気で迷ってるならともかく、お前の場合は文芸部どうだろうかとは言っても、俺に『やらなくていいだろう』っていう答えを求めてる感じがしてな......」


「あぁ......」


 確かに、まったくもって弥の言う通りであるかもしれない。俺は忌憚のない意見を求めているようで、深層心理では俺を踏み留まらせてと弥に願っているのだろう。......本当に、自分自身ですらも気づくことのない深層心理を見出す弥には、頭が上がらない思いだ。


「別になんだっていいけどな、股かけるようなことが無ければ!」


「またそれを......股だけに。」


「は?なんだこのオヤジ......ぷっ」


 俺のギャグによる不意打ちに弥は噴き出してしまったようである。こういうところが、十数年共にしていても嫌にならないところなのだろうか。なんだか、熟年夫婦を研究しているような評価で気色悪さを覚えるが。


 そんな最中(さなか)、背後から語りかける者が1人。


「篤哉、弥、おはよう。」


 俺と弥の幼なじみの女子、本荘光である。


「おぉ光か、おはよう」


「おっす光!今日も胸だけちっこいなうがぁ!?」


「お前は早急に学習したほうがいいぞ。」


 普通に朝の挨拶が交わされるはずだったが、弥の心無い......というよりただのセクハラ発言によって鉄拳制裁が下されたのであった。この男、光の胸部の発達が他の女子よりも乏しいと認めるようになると、おそらく2日に1回はセクハラ発言に及んでは光の拳という地獄を味わっている。実際俺も発達の乏しさは実感するが......そろそろ弥は自分の身を案じるべきである。


「こんなの放っておいて、行きましょ。」


「篤哉ぁ〜、お前だけは置いてくなよぉ〜。」


 何が姫ーもとい光の逆鱗に触れるか分からないため、やらかしたヤツはひとまず見捨てるとする......


 トボトボと歩む弥を尻目に、俺と光が横並びで歩いていると、不思議そうに光が尋ねてきた。


「ところでさっき、何話してたの?」


「あぁ、俺が文芸部なんかやってみたらどうだろう、的なことを話してたんだよ。」


「ちょっと文芸部って......何期待してんのよ。」


 例に漏れず、弥に続いて3人目のようだ。


「うちの文芸部って言ったら、今のところ女子しかいないらしいじゃない?そんなところに入って、篤哉どうするのよ?」


「それはまぁそうだが。」


 スカウトを受けた......自分のことを誇示するように思えて周りにはそのことを伝えていないが、自発的に創作活動をやりたいと思ったわけでもないから、もし俺が文芸部に入ろうとすれば理由と呼べることはそれくらいだろう。光の言う通り、『スカウトを受けた』以外にこれといった理由がないのに女子ばかり、いや女子だけの部活動に入ろうというのは......確かに下心を抱えているとしか捉えられないのも当然だろう。


 その光の言い分には同感である。しかしながら、なぜ俺の意向を聞くや否や焦りに駆られたように俺を問い詰めたのだろうか?


「なんでせかせかしてるんだ?」


「いや、それは......なっ、何でもいいでしょ!おバカ!」


「ったぁ?!」


 何の気なしにせかせかとしている理由を問うてみたのだが......立ち止まって身体の正面を俺と向かい合わせにしたかと思えば、鉄拳ではなかったが衝撃たっぷりに指で俺の額を弾いたのであった。率直にいってすごく痛い......


 そして遠慮なく額を弾いた張本人は、その場を後にして走り去ってしまった。光の理解しがたい行動はこれまでも幾度となくあったのだが、本当に何を考えてのことか分からない......


「まぁた負けヒロイン発揮したか光。んま、主人公が鈍感なのも問題だがな......」


「ん、なんか言ったか?弥?というか生きてたのか。」


 ようやく弥が俺に追いついたようで、なにか呟いたようだった。内容は分かり得ないが。


「いやその言い草はひでぇな?!......まぁいいさ、早いところ学校行こうぜ!」


「お、おう。」


 すると弥も理解不能な言動をし出した。懸命に理解に働こうともしたが......弥に急かされてしまったため、その場はお預けとした。この2人、だいぶ不思議な人間だ。




〈部室からの怒号〉


「ふぅ......」


 今、俺がいる廊下の突き当たりを左に曲がり直進して3つ目の部屋が、昨日俺の誘われた文芸部部室(オフィス)である。正直、トンズラこいてもよかった。一度顔を合わせただけなのだからふつと姿を消してしまっても良かったろうと、ちょっとした悪魔の自分が囁くこともあった。ただ......そうするには度胸というものが足りなかった。Yesと答えるのが既定路線になってしまっているとはいえハッキリ可否を伝えないと......自らの良心が病んでしまうように思われた。そういうことで、半ば無意識に校舎の果てまでやってきた。


 普段の自分はやらない、のそのそ歩きで移動しているとついに扉の前までたどり着いてしまった。もちろん脚を前へ前へ進めれば自ずと扉のもとにたどり着いてしまうものであるが。やはり、妙に気が重い。部屋の中から話している声が聞こえるあたり、部長の星谷先輩に加え、俺にとっては若干のトラウマである楠見先輩や椛島先輩もいるようだ。それが分かると......より一層胃が痛くなる思いだ。また昨日のようになったらどうしようと、フラッシュバックしてしまう。


 少し呼吸を整えて、ついに意を決して入る。だが。


『だから、最近2年間何かしらの実績を出していなければ廃部または吸収合併!さっきから何度もそう言ってるわ!』


 突然の怒号だった。ただしその怒号は文芸部の先輩3人のいずれかのものではない。しかしながらその声には聞き覚えがあった。ドア越しでもそれは認識できた。


『こちらからも再三申し上げているが、今年実績を出すことでおっしゃる条件を満たすはずなんだ。結果が出るあと2ヶ月ほど、待ってもらえないだろうか?』


 これは星谷先輩の声。なんだか、とても弱々しい。


『フンッ、だったらどうして去年は実績が上がってないのかしら?去年実績を上げることができなかった部に、1年で何かできるとも思わないわ。ね、去年実績を上げられなかった無能部長さん。』



............は?



 星谷先輩との関わりは、まだ昨日の小一時間程度だ。先輩の文芸部における経歴も、全く知らない。だけれど、無能だって?


『おい!口を慎め!』


『口を慎むのはどちらかしら?あなたたちに話を通さずとも、私の署名捺印で即刻潰すことも可能よ。』


『くっ......』


 椛島先輩も食い下がっているようだが、こんなの......もはやこれを脅しと言わずして何が脅しなのだろうか。


『そんな急に部活潰すなんて〜、さすがに困るな〜』


『あらそう。でも私の広報資料にはしっかりそのことを載せていた。あなたの目は節穴?まぁ、そんなのろさも胸も牛みたいじゃあ、そんな見逃してしまうわよね。』


『むぅ......』


『とにかく、これはもう決定事項!あなたたちのような金食い虫を全ては支えきれないの!廃部か合併か、どちらにするかの決断の権利をあげるから、自分たちにとってマシな方を選択することね。』


 ただの、暴言だろうが。俺が聞き覚えのあるその声は、間違ってもそんなことを言うための声ではなかった。俺はそう信じていた。いや、その声に対して御託を並べるのはもういい。ただただ、文芸部の先輩たちを罵り、脅し、貶し、そして圧力で押し通す。到底許せないのだ。例え先輩たちの第一印象が最悪だったとしてもだ!人として、許せないのだ。


 俺は十分に煮え滾っていた。その煮え滾った身体は、固まっていた精神を前進させるには十分だった。そして、俺は扉を勢いよく開いた......

 お料理上手な一般男性の動画、ほんとおもしろいですよねアレ。ということで(?)、はい、エ○テン。


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