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ハーレムだがノットイージーモードの文芸部!  作者: なしあじ
Chapter-03 恋路渦巻くフェスティバル
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P.037 姉との対話

『アンタは本当に今までの、部長の作品を読んだことがあるのか?』


 正直に言って、癪に障った。さほど関わりもない上に、年下の後輩にこのような口を利かれるのは。何のアポイントメントもなく、生徒会室にずけずけと踏み込んできてこれを読めと命令口調。誰が不快にならないだろうか。立場上、問題沙汰としないために不必要な対決は避けたが……もう少しであの男をどうにかしてしまうところだった。


 だが、彼の主張も一考の余地はある。何が彼を自分のもとへ突き動かしたのか。部の一員としてのプライドか、我が姉への下級生による信仰心か、あるいは……それは一義的に定まらない。それでも、憤りを滲ませて放った『読んだことがあるのか』という言葉に、立ち止まらずにはいられない。


「悠李、って暗いな。ちゃんと照明はつけないとよくないよ」


「…………なんだよ」


「お母さんが呼んでる。急がないと私にも理不尽にしわ寄せが来るから早くね」


 デスクライトだけが灯った自室で、事務作業を(こな)しながら夕方の一件について考えていると、姉はノックもなしに扉を開けて顔を覗かせる。


 姉は妙に落ち着き払っている。俺を呼びに行くという頼まれごとのほかに、室内を覗いたときの暗さにもすぐに気づいて指摘する。配慮がきめ細やかだ。そうでなくとも、姉は高校生にしてさまざまな能力値が高い。成績優秀でスポーツもやろうと思えば満遍なくこなせる。家族贔屓の視点を取り除いたとしても、姉は天才だ。


 だからこそ、天才でない俺は、姉を忌避している。


 人間として気遣いなどがどれだけできているか、だけではない。例えば天才でない人間は、苦しんでもがいて進む先の高みを目指す。俺も、高校2年でありながらほかの誰にも負けない努力をして、一つの高み、ゴールを目指そうとしているつもりだ。


 だがあの人は、あまりにも出来すぎる。進む先の選択肢をいくつも有している。迷えるくらいに。俺とは正反対だ。両親も、そんなつもりはないのだろうが、姉優位の比較を盛んにする。だから、心のどこかで姉を僻んでしまっている。それ故に、言葉を交わすのでさえ億劫だ。


 そして、さらに俺と姉を隔するのは……姉が特別(・・)秀でた才能を持たない分野に全力であるということだ。それこそが、文芸へのこだわりだ。


確実なものである、進む先の高みを目指した方がよいことくらいは、姉も頭では理解しているはずだ。姉ほどの実力ならば、新たな努力は必要ないのだから。それでも、わざわざ前途多難な道を選ぶ。


 どうしてだ?


 分からない。


 あの男の言うように真面目に姉の作品と向き合えば、分かることができるのだろうか……?


ならば、意識的に遠ざけてきた姉と、その姉が紡ぎ出す物語。ほんの少しだけ、真正面から向き合ってみようと思う。生の言語ではないが、忌避してきた対話を図ってみようと思う。あの男の思う壺となるのはやはり癪に障るが、堪えてみようと思う。


だいぶ短めですが、久しぶり&2022年最初の更新となります!大変長らくお待たせいたしました。ここからしばらくは一定間隔で投稿できそう……と思われる次第です。2022年もどうぞよろしくお願いします。


☆☆お読みいただきありがとうございます。ブックマーク・評価などもよろしくお願いします!☆☆

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