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ハーレムだがノットイージーモードの文芸部!  作者: なしあじ
Chapter-02 文芸部員と過ごす夏の日々
20/39

P.019 同業者夫婦は仕事をしない

ここから缶詰め合宿編。


〈大所帯ですこと〉


 缶詰め合宿はじまりの朝、集合場所の学校正門前に、最後に俺と光が集まったときのこと。


「みんなおはよう!」


「夫共々よろしくね!」


「「「「お願いします。」」」」


「ちょっと待てぇ!」


「理路整然とした説明を求む!」


 顧問、俺と光以外4人の部員、謎の女性はなんとも清々しい雰囲気である。俺と光、を除いては。


「なんだ南原、集団の輪を乱すんじゃない。」


「そうなってるのは咲柚さんたちの説明不足のせいでしょうがッ!」


「あとなんでまりあは冷静なのよ!?」


「私は最初に来たからお話してたんだ。」


「真面目に早く来るのはよろしいけど私たちにも説明をね......」


 謎の女性について説明がなされないまま、合宿出発前のあいさつが行われ始めたのである。なんとなく切り出しづらくて質問しなかった俺や光にも問題はあるだろうが......先輩ズか寺矢先生には気づいて欲しいものである。


「そうだね、説明をしないといけなかった。こちらは寺矢 (あかね)さん。千種先生の奥様だ。」


 部長がすかさず女性について紹介する。顧問のお嫁さん、らしい。


 普段先生の下の名前など意識することはほとんどないから忘れがちになるが、夫婦であることを鑑みて部長は下の名前を使ったのだろう。しかし顧問、俺に関しては担任の奥さんになるが、その人にお目にかかるというのはなんだか違和感だ。


「他の高校で国語の先生なさってるんだよ〜」


「「ほう......」」


 同業者夫婦というわけか。話を聞いてさまざま合点がいくが......



 

 茜さん、女優の類なのではなかろうか?本当に公立高校の一介の教員なのだろうか?まだ国語担当という点は納得できるが、教員という職業、果てには千種先生の奥さんにはもったいないほどの美貌を持っている。塩顔で儚さを感じさせる顔立ちであり、身体のサイズ感も程よい。そんな女性がいる。


「えっと......2人ともどうしたのかしら?」


「ちょっと、近くで見過ぎよ篤哉。」


「お前だって食いつくように見てるじゃないか。珍しい。」


「当たり前でしょう?こんなにも綺麗な人がいて興味無いわけないじゃない。」


「同感。ウチの担任にはもったいないくらい綺麗な女性の方だ。」


「今すぐにでも教員と千種先生の嫁をやめて芸能人とか著名人嫁に転職すべきね。」


「南原、本荘。嫁を褒めてくれるのは夫として大変喜ばしいことなんだが、さりげなく俺を貶めるのをやめような?ん?」


 俺と光は自ずと茜さんの周りを旋回していた。やはり360度見回してみても綺麗が過ぎる。小学生の頃から合わせて10年ほど学校に通っている身として、こんな美しき先生に出会ったことがない。それだのに結婚相手は同業者かつ一部の人間にはイカれた側面を見せつける人物。光の言う通り、2つの就職先を変えることを勧めたい。

 

「はい、そこまでね。」


 そして先輩たちやまりあには不十分な落ち着き、包容力を見せつける。ここは、さすがガキを相手取る教員なだけある。パーソナルスペースまるっきり無視の2人を腕を広げて遠ざける。


「ということでだ。今日は俺と、茜先生で引率するから。遅く来た南原と本荘もよろしく頼むぞ?あと、他の学校の先生なのに引率してよいものかという疑問は受け付けなぁい。」


「そうすか......」


 不安しかない。男女比はともかくとして、引率者的に......某お料理する平野さんばりの適当さを含蓄した男に......


 参加者・星谷部長以下6名、引率者・千種先生以下2名。計8名の大所帯による缶詰め合宿。先行き不透明ながら、ハイエースに荷物を詰めてスタートである。




〈先行き闇不透明じゃない、闇だ〉


 各人の座席位置について説明しよう。運転席と助手席にはそれぞれ千種のほうの寺矢先生と俺、2列目には茜のほうの寺矢先生と同期たち、3列目は先輩ズといった具合である。


 俺を含め学生たちは皆学校のジャージ姿であるが、同期たちはかわいらしげに頭を寄せ合ってスヤスヤと寝ていたり、先輩ズは後ろにいてよく聞こえないが取り留めのない話をしているらしい。俺と茜先生は手持ち無沙汰になって、外の景色を眺めたり時たま運転の邪魔にならない程度に千種先生と会話したり。とにかく、三者三様の過ごし方が存在している。


 いや流してしまったが、光とまりあの寄り合って安らかに眠る姿、写真に収めて然るべきところにアップしたら軽くバズりそうである。やはり寝顔というものは人の純朴さを映すものなのだろうか。でも......2人の本性というか、心の奥底を考えてみると決して首を縦には振れないな。語弊を招く表現にはなるが、どうか光とまりあには永遠(とわ)に安らかな眠りを享受していてほしい。表情筋に力が入って不細工にもなってしまう。


「南原、こはいかに?」


「いえ、こっちのことなので気になさらず......」


「こ、は、いかに。『いかに』が副詞ってことを忘れて2つに分ける人いるから強調しないとね。」


「だな、今度のテストで出したろうか!」


「2人とも、職業病出てます。それと堂々と生徒いる前で出題の意思を固めるのはまずいでしょ。」


 同業者は同業者で大変楽しそうに過ごしている。ただ、2人の愛の巣でもこの調子で共通の国語教員ネタで盛り上がっているのだとしたら、側から見ると地獄のようにも思えてくる。まぁ、毎日が楽しいのならば他人の預かり知るところではないが。


 というか、目的地まですでに行程の半分を行き過ぎたわけだが、依然として釈然としないことはまだまだある。今更感、などと指摘されても致し方ないが、それらの消化試合といこう。ざわめきも小さく何かを尋ねるにはうってつけ。


「というか、運動部の顧問ってわけでもないのによくハイエース持ってますよね。」


「毎年よく言われるさ。まぁ大は小を兼ねるって言うくらいだからな。それに漢なら、車くらいはビッグでありたいものだ。南原なら分かってくれるだろ?な?」


「押しが強いですって。まぁそうなんじゃないんですかね、俺は知らないっすけど。」


 このようにお茶を濁してはみるものの、実際千種先生の主張が分からないということはなくもない。持ち物の1つだけでも立派に見せようという心理がはたらく男性は確かに多いだろう。ただ、俺はそれを耳にする度に思う。持ち物とかじゃなく、自分の地位や人間としての価値を立派にしろよと。部活をやり始めて少し変わったと信じているとはいえ、一応まだまだ冷めた人間という自覚はあるから、手厳しいことも往々にして思うことはある。


 ただし、明るい気分で運転している千種先生のためにも本音はひた隠しにしておく。現実を知ってミスをされても困るから。


「あと、今となっては目の保養になるから大歓迎ですけど、どうして茜先生も?」


「うちの嫁さんは見世もんちゃうぞー南原くんよでもありがとうな」


 目、というより耳にも止まらぬ速さで惚気られたような気もするが先に進もう。


「まぁ、正直なところ缶詰めを見守るんだったら千種先生だけでも十分なのでは?とか思ったんですが。」


「えっ、見守る?どういうこと?」


「はい?」


 右斜め後ろから茜先生の声が飛んできたのだが、心の底から不思議そうな様子である。それを聞いて、俺はより訳がわからなくなった。噛み合わない会話に千種先生がメスを入れる。


「あ、星谷とかから聞いてないけ。俺と茜先生は君らをコテージに送り届けたら観光に行く。」


「アンタ何言ってんだ?」


「アンタ呼びとは聞き捨てならんねぇ南原。まぁいいが。」


 千種先生は何食わぬ顔で引率責任放棄宣言をしている。別に意味で、この人は本当に教員なのだろうか?マジで。こうなると、嫌な予感が脳内を駆け巡る。


「もしかして、寝食も俺ら学生だけでやれってことは......」


「ご名答!さすがの察しの良さだな!」


「今すぐ180度引き返せぇぇぇぇぇぇぇ!」


 嫌な予感が的中して、もはや言葉遣いや振る舞いなど気にしていられなかった。全日引率責任を放棄するのだと言う。なぜ今になって判明するんだ......


「やめろやめろ危ない。」


「いやほんと......こんなこと許されないでしょ!?」


「ねぇねぇ南原くん、バレなきゃ犯罪じゃないのよ?」


「んんん敵は2人おるぅ......」


 夫がイカれているとそこに嫁ぐ女性もイカれているというのか......敵勢力強大であれば、もう足掻きようもない。先生たちが闇堕ちしたアダムとイブのようだ。


 そして神様、俺はさらにあることに気づいてしまったんだ。


「ということはですよ?缶詰めするコテージには男がただ俺1人だけってことですよね?」


「そうだな?」


「そうね?」


「なんで夫婦揃って不思議そうなんだよ!事件性あるだろうがッ!」


 男1対女5。この状況の異様さになんの違和感も抱いていないらしい。頭上に浮かんだクエスチョンマークがよくそれを表している。何度でも問おう、本当にこの夫婦は教員なのだろうか。個人的には、そうでないと思う、に決まっているだろう!


「こういう宿泊系の行事って、男女の分離を気にかけるもんでしょう?その、風紀のために。」


「では逆に問うが、南原は風紀を乱すつもりがあるのか?」


「そ、それは......無いですけど。」


 あれれ、気づけば攻守逆転している。


「だろうな、この部に集まる人間は皆奥手だから。」


「............何が言いたいんです?」


「星谷たち上回生は男子と一つ同じ屋根の下で缶詰めすることには反対していない。むしろ歓迎している。そうだろう?」


「はい!」


 最後部から部長のハリのある声が飛んできた。嫌じゃ、ないのかよ。


「本荘や石川も、まぁ歓迎することだろうよ。南原にも風紀を乱すつもりはない。だったら、大人たちは与せず部員たちだけがいる環境の中で生活した方がいい作品も出来上がるだろう。そう考えたわけだ。茜先生もそう思ってる。だろ?」


「そうね。もちろん、南原君も女の子たちもお互いのプライベートには気をつけなさいね?」


「はぁ......」


 千種先生の一連の言説、誠実な心持ちで聞いてみれば筋は通っているのかもしれないが...... 全て納得できるかと問われると、実に微妙だ。茜先生の補足があるとしてもな......その言説を甘んじて受け入れたら、負けな気がする。




「まぁ正直なところ茜先生と観光するついでにパパッと部員たちを宿泊地においやりたいだけだがな......」


「本音ダダ漏れだっつーの。」


 訂正。もともと怪しかったが、一切合切筋など通っていなかった。あくまで夫婦旅の口実らしい。車は今山中を走っている。ちょうどいい、このキチ○イ顧問に山の神の裁きを......


 こうして、霧がかかって見えずにいた先行きは、光を失って闇に堕ちたのである。計8名改め、計6名による缶詰め合宿。アーメン......

缶詰め合宿編に関してはフィクションマシマシでいきますよ。そもそも缶詰め合宿そのものがフィクションですし(目逸らし)


☆☆お読みいただきありがとうございます。ブックマーク・評価などよろしくお願いします!☆☆

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