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ハーレムだがノットイージーモードの文芸部!  作者: なしあじ
Chapter-01 出会いとvs.生徒会長
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P.001 イミフスカウト

〈南原くんは国語がお得意〉


-5ヶ月前-


「おめぇやってんなァ!?」


「なぜ俺が咎めを受ける。」


 手前味噌になるが、母語(旧式も含めて)の操作能力だけは絶対的な自信がある。小中までの国語は言うまでもなく、高1ギャップに頭を悩ますこともなく高校古典・現代文にて猛威を奮っている......つもりだ。


「だいたい、学校のテストは教科書問題集の文章そのままだろう?まさか高丘様とあろう人間が答えも暗記してるとは言わないよなぁ?」


「そらそうだ!でも取れねぇ!なぜなら古典は文法が多すぎる!なんで未然形接続だの終止形接続だの覚えにゃならんのだ!」


 そう高らかに語るは悪友ーそして俺や光の幼なじみー、高丘(たかおか) (ひさし)だ。熱意をはらんで語るのは構わないが、率直に言って五月蝿い。


「マジレスすると、そういう文法を覚えるのは読解できるかに関わってくるぜ。辛抱せぇ。」


 古典の暗記量は確かにえげつない、が、逆に暗記をこなせば恐いものはなくなる。


「ぐぬ......じゃあそれは百歩譲って受け入れるにして。」


「いや譲らず受け入れねばならないんだが。」


「うるせぇ!」


 五月蝿いのはどちらであるか......そうツッコミたくもなったが、状況の悪化を懸念してその場は流した。


「だとしたらだ!昔の言葉で書かれてない現代文はもう少しできたっていいじゃねぇか!でも全然取れねぇじゃねぇかチクショー!」


「それはまぁ......」


 この男、中学時代から文章読解が人並みにできるというわけではなかった。ただ、甚だ苦手というわけでもなかった。言うなれば、弥は少しだけ文章読解に苦手を抱えた中の下の人間なのであった。そしてその文章読解のステージが高校の現代文に移ったわけであるが、やることの本質が読み解くことである以上、弥が現代文にフラストレーションを溜めるのも無理はない。


「とりあえずあれだ、語彙力をつけぇの、論理展開のパターンを覚えぇの、スキャニング能力をつけぇの......それを練習すればある程度は現代文は読めるようになる。」


「はぁ〜ん、ま、定期考査国語主席のありがたいお言葉として受け取っておくわー。」


「棒読みなんだよ棒読み。」


 ハナから聞く気なんてない、というわけでもないのだろうが、国語トップの成績を取る奴の言うことは分からんなどと思っているのだろう。あからさまなヨイショと棒読みがそれを物語っている。


「あぁもう、やめだやめ!篤哉!部活行くぞ!」


「俺は部活加入してないんだが。」


「いやまだ入ってねぇのかよ!?」


 さながらコントのようなズッコケである。


「まだもなにも、俺は部活はやらんぞ。」


「いやそういう考えがあってもいいが何かしらの部に入ってもいいッ!」


 おそらく紫スーツに身を包んだ『時を戻そう』の人を意識しているのだと見て取れるが、わざわざツッコミを入れるも気力も起きず、スルーした。奴は実に悲しそうだ。


「まぁここは高校なんだ、入るも入らないも俺の自由だろ」


「そんなことはないぞ!部活動にも全力で打ち込むことで受験にもプラスにはた......」


「どうせお前んところの顧問の受け売りだろ?本当にそういう自称進学校みたいなセリフいいから......」


 嘲笑うかのように、俺のいる桜ヶ丘高校を『自称進学校』などと揶揄しているが、実際のところは自称などつけなくてよい、そこそこの進学校という評判が自他共に渦巻いている。そういうことで、自分の身の回りの能力値もかなり高い。俺は国語が抜きん出て得意な一方、それ以外は最良で平均程度の実力なのである。そして周りはすべてが平均以上には熟せるために、総合的な点数だけを見れば両者に差はそれほどない。学校の中だけでの競争だったら、それでも良いのかもしれない。しかしながら受験やその先のことを考えたときに、ひとつしか得意なものがないというのは可能性を狭めてしまうのではないか?そんな考えに至ると、これから始まる3年間は国語以外もそれなりに伸ばす期間であると捉えて、それ以外のことは程々に、ということを決めたのだった。部活動に加入しないのも、その程々の内に含まれる。


「あっそ......あ、じゃあ俺はこの辺で行くぜ。じゃあな!」


「あぁじゃなあ。」


 弥と手のひらを見せ合って教室から解散。急いでいるのか、音速と言わんばかりに飛び出ていった。

 正直、弥の後ろ姿を見て、自分の決断に躊躇いを抱いた南原もいる。高校の部活動というのはバラエティ豊かで、内容に惹かれるものもあった。活動の少ない部活動もあるのだから、そこに入って勉強主体で生活するという手も脳内を過った。ただやはり......自分でも確かに意識するくらい、俺は良くも悪くも頑ななのである。あるいは、変な意地を張ってしまうのだ。一度勉強に焦点を当てると、もはや『部活をやるのもいいかな』と考える自分は存在しなくなっていた。


「帰るか」


 部活動に所属していない者は帰宅するか自習室を利用するかである。俺は、現実逃避でもするように前者を選んだ。




〈邪気との邂逅〉


 放課後の学校の廊下は、実に騒がしい。そして廊下に屯する生徒もいて正直邪魔くさい。


「すみません」


 そう言って人の間をすり抜けていくのは、駅の帰宅ラッシュにも似ている。人々はとても悠長に構えているが。




 階下へ降りて、玄関にたどり着くと、そこには階上に比べればかなり穏やかな空間が広がっていた。しかし夕陽の光と共に安息を感じたのも束の間、殺気と形容してよい邪気のようなものを強く背後から感じた。おそらく、幼なじみ2人ではない見知らぬ誰かの。


「あの、なんですか」


「おっと、私の気配に気づいていたかい。君はすごいなぁ、今まで背後ににじり寄った人全員、私の気配になかなか気づかなかったのだよ。」


「だとしたらその人たちはとんだ平和ボケした阿呆(あほう)ですね。そんな禍々しい気でにじり寄って、危機を覚えないわけがない。」


「君は必殺仕事人の血筋の人間なのかい?」


 いや、代々一般企業勤めの一般人である。ただ俺だけが人一倍、気配に敏感なだけだ。まぁ、邪気を感じ取ったことは自分すらも思ってみなかったが。


「ところで、君は振り向かないのかい?」


「......ただいま。」


 背後の謎の人物、確かに邪気を纏ってはいるものの何かしらの危害を加えるようなことはない。そうと理解しているはずなのに、その人物の方に身体を向けないのは全くおかしな話であるとハッとさせられた。


 そういうわけで、後ろを振り向いてみれば......


「君が南原篤哉君だね。」


「は、はぁ」


 そこには、非常に小柄なようじ......ではなく、女子の先輩・緑の学年カラーの3年生が堂々として立っていた。


「話したいことがあるんだ。立ち話もなんだから、一緒に来てくれるかい?」


 どれだけ歳の割にちっぽけな体格とはいえ、邪気を持った先輩からそう問われて、断れる後輩というのもなかなかいないだろう。無論、俺も断ることはもはやしなかった。


「分かりました、行きましょう。」


「ありがとう。」


 淡々と言葉を交わしたのち、歩み出した名も知らぬ先輩の後ろを俺はついて行く。玄関付近は穏やかな雰囲気が流れているとはいえ、人が全くいないということでもない。その人々は、さっきのやりとりや今の付き従う姿を見て何を思うのだろうか。


 改めて先輩の姿を顧みてみれば、フレームの存在感が薄い眼鏡、まとまったポニーテール、とても3年生の先輩とは思えない小柄さ、しかしそれとは相反する堂々たる動作や自信ゆえの笑みなど、特徴は枚挙にいとまがない。その中でも、なぜそのような人が邪気を纏っているのか、見当もつかない。ただ、これから連れて行かれる先にその答えがあるだろうか。そんなことを思う。思ってはいるが、先輩とさらなる言葉を交わすこともなく移動時間は過ぎていく。


 そして、校舎の端の端、入学以来来たこともないような場所に俺は導かれた。


「文芸部......」


 表札の『文芸部』という3文字を目にしてみたものの、やはりさまざまな理由に関して合点がいかない。唯一抱いた納得の点ーというか偏見であるが、先輩の姿が文芸部らしい文学少女というところである。


「どうしたんだい南原君。早く入るといい。」


「は、はっ」


 眼前の光景を凝視しつつ、偏見を脳内で唱えていると、先輩はまるで心でも読んだかのように俺に呼びかけた。さすがに読心術までは持ち合わせていないだろうと......そう信じて先輩の手招く方に足を踏み入れる。


 さて、俺の踏み入れた校舎の果てにあった部屋。そこは予想に反して......机が整然と並び、その上にはパソコンが何台も鎮座し、空調も適度に効いているという、いわばオフィスのような状況であった。


「こんなところがあったんですね。」


「まぁ知らなかっただろうね、うちはひっそりまったりやらせてもらっているから。」


 まるで聞かれまくっている質問と言わんばかりの流れる答えようである。部屋を少し整える片手間だ。まぁ実際のところ、何度も聞かれたことで受け答えも定型化してしまったのだろう。


「さぁ、座ってくれ。」


 オフィスの一角のソファと卓の元に手招かれた。どうやらそこで本題を切り出すらしい。黒革のふっくらとしたソファに腰掛け、聞きの体勢を取る。


「まずは......まだ名乗っていなくて悪かったね。私は星谷(ほしたに) 梨子(りこ)、こんな身なりではあるけれどもこの文芸部で部長をさせてもらっている。以後お見知り置きを。」


「ご丁寧にどうもありがとうございます。」


 着席しても、後輩に対して懇切丁寧な自己紹介を行ってもなお、乱れることのない堂々とした態度と......どこか見え隠れする邪気。なぜ部活動の部長のひとりに過ぎない人がここまで特筆に値する特徴を持ち合わせているのか?俺には到底分かり得ないように思われた。もちろん、それ以上に分からないこと、気になることがある。それを訊こう。


「それで、俺に話したいことって?」


「そうだね......」


 そのように俺が問いかけると、星谷先輩はすでに整って、堂々としていた姿勢をさらに凛と直して、答えた。


「君に、我が文芸部に入部してもらいたいんだ!こちらからお願いしたい!」


 話を聞く限り............文芸部部長直々の入部のスカウトらしい。なぜ俺が?そう思うが、その一方で星谷先輩の見え隠れする邪気については、確信は持てないがどこか腑に落ちるような感覚がした............

僕のいた文芸部はオフィスみたいな部室ではありませんでしたよ(もはやいつもの)。まぁ星谷部長はいい感じ(?)に書けたので満足ですがね......


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